35 / 336
第35話 大魔王
しおりを挟む
隣の部屋では、窯がごうごう音を立てて燃えている。そしてものすごく暑い。ここは窯の部屋に入る前の準備室と呼ばれている部屋だ。
準備室は、窯に入れるものや燃料などを準備する部屋である。準備が終わったものを隣の窯の部屋に運び、そこで燃やしたり加工したりするのである。
準備しているときにまで、加熱炉の猛烈な熱にさられるのを防ぐためである。
しかし刀工は、鉄を真っ赤になるまで焼いて叩きまくるので、ほとんどこの部屋にはいない。加熱炉の前で汗だくになってガンガン鉄を叩いているのである。
その準備室でオウミに加速劣化試験をやらせていたところへ、ややこしいふたり組がちん入したのである。
例によって、並んで正座である。
こんこんこんこん! こんこん!
懇々と説教をしている、という意味の擬音である。
「だから何度も言っているように、俺はSではあっても腐ではない。ミヨシのおっぱいを揉むことはあっても、アチラとナニすることはないのだ」
「私の胸は、まだ1度も揉んだことないくせに」
「あの、今回の僕はとんだとばっちりですよね?」
うん、ふたりとも反省の色がまったく見られないね。どうしてくれようか。
(もともと、我がこやつらに見えないことが問題だったのではないノか?)
(まあ、そうだけどな)
(では仕方ない。不本意ではあるが姿を現すとするか。長い付き合いになるノだし、ずっと隠しておくってわけにもいくまい)
(それはいいけど、そんなことができるのか?)
(むしろ隠しておくほうが大変なノだ。それでは)
俺にだけしか見えないのだと思っていた。オウミの意志で隠していたのか。
「じゃあ、ふたりに紹介しよう。これが俺の眷属・オウミだ」
「よっ! よろしくなノだ」
「「…………」」
何だよ、お前ら。紹介したんだから挨拶ぐらいせんかい。不意に俺の肩あたりから現れたのだから驚くなとは言わないが。
「なんか言え」
正座を1時間ぐらい追加したろか。
「あ、あの。眷属って?」
「ああ、この間アチラに教えてもらった召喚魔法な。どうやら成功していたみたいだぞ」
「そ、それ、それで。このお方が現れたっていうの?」
「その通りだ。だがミヨシ? このお方って、なんで丁寧語になってんだ。こんなのただのちっこい女神だぞ?」
「ただのって。違いますよユウさん! この虹色の輝きは魔物の中でも最上級の魔王クラスにしか出せない色ですよ」
なぬ?
「あっ、てめぇ。ここぞとばかりにそんな色を放ちやがって。格好つけかよ!」
「し、失礼な。これが素なノだ。我は最上級だからな」
最上級がなんで魔法師でもない俺の眷属になってんだよ。我が知るか、お主が呼んだからであろうが! 呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃんとかしてんじゃねぇよ! お主はときどきわけのわからんこと言うがそれこそ止めろ、読者が当惑するノだ。眷属が読者に気を使ってんじゃねぇよ!
と和やかなお話し合いをしているうちに、ふたりの顔色はみるみる青ざめていった。
「ね、ねぇアチラ。私の勘違いでなければ」
「はい、僕もそう思います。このお方は間違いなく」
「そうよね? あのお方以外にはそんな名前を名乗るはずないわよね」
「はい、その通りです。僕は学校で習いました」
アチラの習った歴史書は伝えている。
オウミとは、このニホンを分割統治する7大勢力のうちのひとり、ニオノウミというニホン最大の湖を支配下に置く魔王・オウミのことであると。
そしてそれは、この地(ミノ)を治めるミノウの義理の妹でもあることを。
まさかそんなことがあるわけない、という疑問がふたりの脳裏を駆け巡る。しかし本人がオウミと名乗っているのだ。一概に否定するわけにもいかない。
「ユ、ユウさん、ユウさん。そんな乱暴な言葉使いをしちゃダメですよ」
「あぁ? そんなことアチラに言われることじゃないぞ」
「そ、そうよ、ユウ。もっと、ちゃんと敬語で話して。そんなぞんざいな言葉使いはダメよ」
「ミヨシまで、いったいどうしたんだよ。俺に敬語なんか使えるわけがないだろ」
「ドレミ伯には使っていたじゃないの! ユウはやればできる子なんだから」
そういえばそんなこともあったような。しかし、自分の眷属になんで敬語が必要だよ。アホか。
「ふっふっふ。どうやらこの者たちは気づいておるようなノだ」
「気づくって何をだ?」
「我の本当の姿をだ」
「手のひらサイズのちっちゃいエロねーちゃんだろ?」
だから小さいは余計だ! エロには問題ないのかよっ。そんなことより我を少しは敬え! 敬ってほしけりゃもっと立派なところを見せてみろ。時間を進めてやっているではないか! それは助かってるよ!! それなら良いのだ……あれ?
「まるで、仲の良い兄妹げんかを見ているみたい……」
「は、はい、なんかふたりともこの世のものとは思えないような」
「本当にあのオウミ様なのよね」
「初級の召喚魔法でも、たまに魔人クラスを呼び出しちゃうことはあるそうです。だけどそういう場合はたいがい、呼び出し者は生きていないそうです。ましてや魔王なんかを呼び出した日には……」
「ユウはピンピンしてるわね」
「それどころか、最上級の魔王様を相手にすごく幼稚な口げんかしてますよ?」
「「幼稚で悪かったな!!!」」
こぼれ話:この世界には、魔物<魔人<魔王 なんて(大まかな)ランクがあるらしい。
準備室は、窯に入れるものや燃料などを準備する部屋である。準備が終わったものを隣の窯の部屋に運び、そこで燃やしたり加工したりするのである。
準備しているときにまで、加熱炉の猛烈な熱にさられるのを防ぐためである。
しかし刀工は、鉄を真っ赤になるまで焼いて叩きまくるので、ほとんどこの部屋にはいない。加熱炉の前で汗だくになってガンガン鉄を叩いているのである。
その準備室でオウミに加速劣化試験をやらせていたところへ、ややこしいふたり組がちん入したのである。
例によって、並んで正座である。
こんこんこんこん! こんこん!
懇々と説教をしている、という意味の擬音である。
「だから何度も言っているように、俺はSではあっても腐ではない。ミヨシのおっぱいを揉むことはあっても、アチラとナニすることはないのだ」
「私の胸は、まだ1度も揉んだことないくせに」
「あの、今回の僕はとんだとばっちりですよね?」
うん、ふたりとも反省の色がまったく見られないね。どうしてくれようか。
(もともと、我がこやつらに見えないことが問題だったのではないノか?)
(まあ、そうだけどな)
(では仕方ない。不本意ではあるが姿を現すとするか。長い付き合いになるノだし、ずっと隠しておくってわけにもいくまい)
(それはいいけど、そんなことができるのか?)
(むしろ隠しておくほうが大変なノだ。それでは)
俺にだけしか見えないのだと思っていた。オウミの意志で隠していたのか。
「じゃあ、ふたりに紹介しよう。これが俺の眷属・オウミだ」
「よっ! よろしくなノだ」
「「…………」」
何だよ、お前ら。紹介したんだから挨拶ぐらいせんかい。不意に俺の肩あたりから現れたのだから驚くなとは言わないが。
「なんか言え」
正座を1時間ぐらい追加したろか。
「あ、あの。眷属って?」
「ああ、この間アチラに教えてもらった召喚魔法な。どうやら成功していたみたいだぞ」
「そ、それ、それで。このお方が現れたっていうの?」
「その通りだ。だがミヨシ? このお方って、なんで丁寧語になってんだ。こんなのただのちっこい女神だぞ?」
「ただのって。違いますよユウさん! この虹色の輝きは魔物の中でも最上級の魔王クラスにしか出せない色ですよ」
なぬ?
「あっ、てめぇ。ここぞとばかりにそんな色を放ちやがって。格好つけかよ!」
「し、失礼な。これが素なノだ。我は最上級だからな」
最上級がなんで魔法師でもない俺の眷属になってんだよ。我が知るか、お主が呼んだからであろうが! 呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃんとかしてんじゃねぇよ! お主はときどきわけのわからんこと言うがそれこそ止めろ、読者が当惑するノだ。眷属が読者に気を使ってんじゃねぇよ!
と和やかなお話し合いをしているうちに、ふたりの顔色はみるみる青ざめていった。
「ね、ねぇアチラ。私の勘違いでなければ」
「はい、僕もそう思います。このお方は間違いなく」
「そうよね? あのお方以外にはそんな名前を名乗るはずないわよね」
「はい、その通りです。僕は学校で習いました」
アチラの習った歴史書は伝えている。
オウミとは、このニホンを分割統治する7大勢力のうちのひとり、ニオノウミというニホン最大の湖を支配下に置く魔王・オウミのことであると。
そしてそれは、この地(ミノ)を治めるミノウの義理の妹でもあることを。
まさかそんなことがあるわけない、という疑問がふたりの脳裏を駆け巡る。しかし本人がオウミと名乗っているのだ。一概に否定するわけにもいかない。
「ユ、ユウさん、ユウさん。そんな乱暴な言葉使いをしちゃダメですよ」
「あぁ? そんなことアチラに言われることじゃないぞ」
「そ、そうよ、ユウ。もっと、ちゃんと敬語で話して。そんなぞんざいな言葉使いはダメよ」
「ミヨシまで、いったいどうしたんだよ。俺に敬語なんか使えるわけがないだろ」
「ドレミ伯には使っていたじゃないの! ユウはやればできる子なんだから」
そういえばそんなこともあったような。しかし、自分の眷属になんで敬語が必要だよ。アホか。
「ふっふっふ。どうやらこの者たちは気づいておるようなノだ」
「気づくって何をだ?」
「我の本当の姿をだ」
「手のひらサイズのちっちゃいエロねーちゃんだろ?」
だから小さいは余計だ! エロには問題ないのかよっ。そんなことより我を少しは敬え! 敬ってほしけりゃもっと立派なところを見せてみろ。時間を進めてやっているではないか! それは助かってるよ!! それなら良いのだ……あれ?
「まるで、仲の良い兄妹げんかを見ているみたい……」
「は、はい、なんかふたりともこの世のものとは思えないような」
「本当にあのオウミ様なのよね」
「初級の召喚魔法でも、たまに魔人クラスを呼び出しちゃうことはあるそうです。だけどそういう場合はたいがい、呼び出し者は生きていないそうです。ましてや魔王なんかを呼び出した日には……」
「ユウはピンピンしてるわね」
「それどころか、最上級の魔王様を相手にすごく幼稚な口げんかしてますよ?」
「「幼稚で悪かったな!!!」」
こぼれ話:この世界には、魔物<魔人<魔王 なんて(大まかな)ランクがあるらしい。
10
あなたにおすすめの小説
武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!
Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。
裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、
剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。
与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。
兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。
「ならば、この世界そのものを買い叩く」
漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。
冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力――
すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。
弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。
交渉は戦争、戦争は経営。
数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。
やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、
世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。
これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。
奪うのではない。支配するのでもない。
価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける――
救済か、支配か。正義か、合理か。
その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。
異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。
「この世界には、村があり、町があり、国家がある。
――全部まとめて、俺が買い叩く」
毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。
馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。
元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。
バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。
だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。
アイドル時代のファンかも知れない。
突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。
主人公の時田香澄は殺されてしまう。
気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。
自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。
ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。
魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。
鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~
今田勝手
ファンタジー
平安時代の日本で魑魅魍魎を束ねた最強の鬼「酒呑童子」。
大江山で討伐されたその鬼は、死の間際「人に生まれ変わりたい」と願った。
目が覚めた彼が見たのは、平安京とは全く異なる世界で……。
これは、鬼が人間を目指す更生の物語である、のかもしれない。
※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ネオページ」でも同時連載中です。
異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる