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第54話 一発勝負
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「これからは、俺の指示通りに動いてもらう、いいな?」
とか言っているのは、12才の少年なのだが。
「「「「おう!!!」」」
それに、ちゃんと乗ってくれるおまいらがすこ。
いいのだ、俺の中の人は働き盛りの40才なのだから。鏡さえ見なきゃ、俺はいつも中の人だ。
「あっちではリタイアしてたのではなかったノか」
リタイアはしてねぇよ。集団活動に向いていなかったから、会社勤めを辞めただけだよっと、こちょこちょこちょ。
「あひゃひゃひゃは、よ、よすのだ。そこ、我は弱いひゃひゃひゃひゃ」
「意外と楽しいんだよな、これ。こちょこちょこちょ。
「あひゃひゃひゃひゃ」
「好素とかいっぱ出そう。こちょこちょ」
「我が出しても仕方ないノだぁぁぁぁっひゃひゃひゃ」
ま、そんなことはひれはれとして。格好つけてああは言ったものの、ひと月で600万とかどうやって作ればいいのか、それはこれから考えるのである。
考えるのはこれからかよ! ってツッコミは、もう慣れてしまったオウミからは来ないと思うが、読者からも来ないとなるとちょっと寂しい。そんな俺である。さて考えるか。
剣の受注なんか止めちゃって、ダマク・ラカスとステンレス包丁に専念するというのが現実的な方法だ。しかし、包丁だけでひと月600万を売り上げるのは難しい。
まだそこまで市場が育っていないし、こちらの生産体制もできていない。大量に作って在庫ばかりが増えたら目も当てられない。
それに、一番忘れてはいけないのは、必要なのは600万の現金だ、ということだ。売り上げではない。
原価率が30%と仮定して、必要な売り上げは900万ぐらいはないといけないことになる。それをひと月でやれとか無理ゲーである。
俺が(雑に)予言したこの工房の月辺り売り上げは1,000万だ。しかし、それは充分な宣伝効果と生産体制があってのこと。そうなるまでに1年ぐらいはかかるだろう。
では、現金のためにクロム鉱山を売るか? 無害化したあとなら売れるだろう。
しかし、この世界はクロムの使い方をまだ知らない。あれでステンレスができるなんてことが広まってしまったら、ステンレス包丁の売り上げが壊滅する。そしてクロム鉱の値段は跳ね上がる。
今の段階で手放すのは悪手だ。
タダでもらったものをすぐ売るというのも、いろいろまずいだろうしな。ソウの飲み会的に。
かと言って、金めっきの需要はない。あっても入金が3ヶ月後では論外だ。
となると。まあ、最初から分かってはいたことだ。これしかないと。しかしこれをやると、本当に一発勝負になる。だからぐだぐだと考えていたのだが、どうもこれしか思い浮かばない。
この話が、そこいら中にあふれているドラマなら、いろいろなアイテムを積み重ねてだんだん目標に近づく。あと少しで届くってところで邪魔が入ったりする。そして間際になって、ほんのちょっとだけ足りないわぁ、あぁぁどうしよう、やっぱりダメか、ここまま時間切れかぁぁもうダメだ……ってときに救世主が現れる。ほらこれで間に合ったでしょ。そうか、そんな手があったのか、助かったぁぁぁぁ。
ってなことになるのだが。
「またひとり言を言っているノか」
「だから、俺はひとり言で打線が組めるとあれほど」
「不気味だからよすノだ」
魔王に不気味呼ばわりされた。
「と、ともかくだ。一発勝負なんだよ、オウミ」
「お、おうそうか。頑張るノだ」
「ということはだ」
「ん?」
「オウミは、これから休む暇もなく働いてもらうことになる」
「はぁ?」
「それと、ゼンシンもだ」
「はぁ?」
通じてないのかな? こちょこちょ。
「きゃははきゃはひゃひゃ、なんなノだ。お前の行動と発言がぜんぜん繋がらひゃひゃひゃひゃ」
「これが終わったら有給をやるから、それまで頑張ってくれ」
「ひーひー。なんなノだ、頑張るのはお主なノだろ?」
「俺も頑張るけどな。ちょっとこっち来い。おーいゼンシンいるかー?」
と、灼熱の部屋に入る。あじじじ。
「はーい、こちらです。もうすぐ一段落するので、少し待ってください」
「ゼンシン、昨日の今日ですぐ結果がでるわけはないが、ニホン刀の調子はどうだ」
「えっと。どうしても焼き入れで割れちゃうんです。泥を塗っても割れるときは割れるんですね」
「泥塗りは確率がまだ低いのか」
「ええ。低いというか、本当にあれが有効だったのか、それともたまたまだったのか、よく分からなくなってきました」
「それで、どんな工夫をした?」
「とにかく温度差を少なくしようと思って、水じゃなくて熱湯にしてみたり、泥水の中に突っ込んでみたりしましたが、いまのところうまくいってるものはありません」
「そうか。その泥だが、なにを混ぜたんだっけ?」
「えっと。粘土と焼却灰、それにその粉末です」
「粉末って、ああこれ、クロム鋼の粉末じゃないか。そんなものを混ぜたのか」
「ええ? そうだったんですか。粘度調整にちょうどいい感じの粉末だったもので。まずいですかね?」
「どうだろ? 鉄の表面にクロムが入るのかもしれないが、ほんのちょっとだろう。特に悪さするとは思えないがな。そういえば、これってクロム以外の成分が分かってないんだ。へんなものが入っているかもしれない。ステンレスを作るには問題なかったようだが」
「使うの止めた方がいいですかね」
「他に適当なものがなければ、使ってもいいだろ。あ、そういえば焼き入れだけどな」
「はい?」
「急激に冷やすから鉄が強くなるんだから、その温度差が少なくなっては、意味がないと思うんだ」
「ええ、それはそうですけど。割れるほどの差はいらないかなって」
「でも、刀の全部がバリバリに割れたわけじゃないだろ?」
「それはまあ、そうですが」
「厚みの違いじゃないのかなって思うんだが、どうだろ?」
「厚みの違いですか?」
「刀ってのは、刃の部分は細く、峰に近づくにつれて厚くなってゆくよな」
「あっ、そうか。刃先と峰では冷えて行く時間が大きく異なることになりますね」
「当然、厚みのある方が熱容量は大きい。これを急冷すると、表面だけがまず冷やされるので、まだ熱い中と冷えた外とで大きな温度差が生まれることになる。だから割れるんじゃね?」
「とすると、冷えて行く時間を合わせればいいということになりますか。それなら、泥を塗るときに、峰側を厚く、刃先は薄く塗ったらどうでしょう」
「うんそうだな。そうすれば峰の部分はゆっくり冷えてゆくか。いいな、それ。それなら割れにくくなるはずだ。もしかしたら、刃先の部分は泥なしてもいいかもしれない。その方向でやってみてくれ。どのみち、峰の部分まで焼きが入る必要はないしな」
「分かりました。それでやってみます」
「結果がでたら教えてくれ。それで、手は足りているか?」
「銑鉄作りのほうでも、いろいろと条件を変えてやっていますので、正直手はいくらあっても足りないぐらいです」
「原料の銑鉄を作って叩いて鍛えて、それで刀を打って研いで焼き入れして、をひとりだもんな」
「はい、それは仕方ないことですが」
「よしゼンシン。お前は今日から錬鉄作りと焼き入れだけを担当しろ」
「え、いいのですか? そうさせてもらえると助かりますが」
「助かると言ってもらって俺も助かる。本来なら刀を打つ仕事をするために呼んだのにな。不動明王さんに怒られそうだ」
「いえいえ、刀打ちの修行はどこでもできます。だけど、こんな新しい材料と製法の開発を、まだ見習いの僕なんかにまかせてもらえるなんて、よそではできません、というよりあり得ません」
修行がどこでもできるとは思わないが、そう言ってもらえるのはありがたい。開発担当を11才の見習いにするのはよそではあり得ないってのは、その通りだろうな。
「そうか、それはよかった。じゃあ、ゼンシンは銑鉄をどんどん作ってくれ。オウミにも手伝わせる。オウミはこれから10日ほどはお前に預ける。どんなことにでもいいから使ってくれ」
「待て待て! 待つのだ、ユウ。我はお主と契約した眷属であってだな」
「眷属に命令だ。ゼンシンを手伝え」
「きゅぅぅぅ」
「ということだ、ゼンシン、よろしく頼む」
「あの、はい。それでよろしいのですか? オウミ様」
「プンプン。もう分かったノだプンプン。手伝えばいいノだろ、手伝えば。まったく魔王をいったいなんだと思っていきゃははははは」
こちょこちょこちょ。まあ、そう言わず手伝ってくれ。この工房のためだ。
「ミヨシもつけるからさ」
「よし。それならいいノだ」
ちょろい魔王さんは好きですよ。
「ということはユウさん。刀はだれが打つのですか?」
「ここにはひとりしかおるまい。この鉄を使って、刀を打ちたがっていた人がいただろ?」
あぁ、あの人ね。とだれもが納得する人材である。国指定の1級刀工技術者・ヤッサンである。
「しかし、それでは剣の注文に応えらんぞ、ユウ」
「かまわないよヤッサン。その調整はソウにやらせる。なんなら全部キャンセルしたってかまわない」
「そ、そんなことをしたら、もう二度と注文がもらえなくなるぞ」
「来月までに600万を作れなければ、注文なんかあっても同じことだろ?」
「そ、それはそうだが」
「そういうことは経営者の仕事だ。まかせておけばいい」
「そ、そうか。それならやらせてもらおう。俺にとっても願ってもないことだからな」
「ああ、そうだったな。念願が叶ってよかったじゃないか」
「ありがとう、ユウ。俺は年甲斐もなく涙がでそうだ」
おいおいおい。それほどのことじゃない。俺は自分の都合で言っているだけだ……。
あ、もうダメ。あづいあづい。逃げよう。
「相変わらず、根性のないやつなノだ」
「あ、そうそう。オウミ。ひとつだけ言っておくことがある」
「なんなノだ?」
「これから作るニホン刀に、魔力をかけるのは厳禁だからな」
「あぁぇぇ?」
不服そうなお返事だこと。やっぱりするつもりだったんかい。もう魔鉄はお腹いっぱいだよ。
とか言っているのは、12才の少年なのだが。
「「「「おう!!!」」」
それに、ちゃんと乗ってくれるおまいらがすこ。
いいのだ、俺の中の人は働き盛りの40才なのだから。鏡さえ見なきゃ、俺はいつも中の人だ。
「あっちではリタイアしてたのではなかったノか」
リタイアはしてねぇよ。集団活動に向いていなかったから、会社勤めを辞めただけだよっと、こちょこちょこちょ。
「あひゃひゃひゃは、よ、よすのだ。そこ、我は弱いひゃひゃひゃひゃ」
「意外と楽しいんだよな、これ。こちょこちょこちょ。
「あひゃひゃひゃひゃ」
「好素とかいっぱ出そう。こちょこちょ」
「我が出しても仕方ないノだぁぁぁぁっひゃひゃひゃ」
ま、そんなことはひれはれとして。格好つけてああは言ったものの、ひと月で600万とかどうやって作ればいいのか、それはこれから考えるのである。
考えるのはこれからかよ! ってツッコミは、もう慣れてしまったオウミからは来ないと思うが、読者からも来ないとなるとちょっと寂しい。そんな俺である。さて考えるか。
剣の受注なんか止めちゃって、ダマク・ラカスとステンレス包丁に専念するというのが現実的な方法だ。しかし、包丁だけでひと月600万を売り上げるのは難しい。
まだそこまで市場が育っていないし、こちらの生産体制もできていない。大量に作って在庫ばかりが増えたら目も当てられない。
それに、一番忘れてはいけないのは、必要なのは600万の現金だ、ということだ。売り上げではない。
原価率が30%と仮定して、必要な売り上げは900万ぐらいはないといけないことになる。それをひと月でやれとか無理ゲーである。
俺が(雑に)予言したこの工房の月辺り売り上げは1,000万だ。しかし、それは充分な宣伝効果と生産体制があってのこと。そうなるまでに1年ぐらいはかかるだろう。
では、現金のためにクロム鉱山を売るか? 無害化したあとなら売れるだろう。
しかし、この世界はクロムの使い方をまだ知らない。あれでステンレスができるなんてことが広まってしまったら、ステンレス包丁の売り上げが壊滅する。そしてクロム鉱の値段は跳ね上がる。
今の段階で手放すのは悪手だ。
タダでもらったものをすぐ売るというのも、いろいろまずいだろうしな。ソウの飲み会的に。
かと言って、金めっきの需要はない。あっても入金が3ヶ月後では論外だ。
となると。まあ、最初から分かってはいたことだ。これしかないと。しかしこれをやると、本当に一発勝負になる。だからぐだぐだと考えていたのだが、どうもこれしか思い浮かばない。
この話が、そこいら中にあふれているドラマなら、いろいろなアイテムを積み重ねてだんだん目標に近づく。あと少しで届くってところで邪魔が入ったりする。そして間際になって、ほんのちょっとだけ足りないわぁ、あぁぁどうしよう、やっぱりダメか、ここまま時間切れかぁぁもうダメだ……ってときに救世主が現れる。ほらこれで間に合ったでしょ。そうか、そんな手があったのか、助かったぁぁぁぁ。
ってなことになるのだが。
「またひとり言を言っているノか」
「だから、俺はひとり言で打線が組めるとあれほど」
「不気味だからよすノだ」
魔王に不気味呼ばわりされた。
「と、ともかくだ。一発勝負なんだよ、オウミ」
「お、おうそうか。頑張るノだ」
「ということはだ」
「ん?」
「オウミは、これから休む暇もなく働いてもらうことになる」
「はぁ?」
「それと、ゼンシンもだ」
「はぁ?」
通じてないのかな? こちょこちょ。
「きゃははきゃはひゃひゃ、なんなノだ。お前の行動と発言がぜんぜん繋がらひゃひゃひゃひゃ」
「これが終わったら有給をやるから、それまで頑張ってくれ」
「ひーひー。なんなノだ、頑張るのはお主なノだろ?」
「俺も頑張るけどな。ちょっとこっち来い。おーいゼンシンいるかー?」
と、灼熱の部屋に入る。あじじじ。
「はーい、こちらです。もうすぐ一段落するので、少し待ってください」
「ゼンシン、昨日の今日ですぐ結果がでるわけはないが、ニホン刀の調子はどうだ」
「えっと。どうしても焼き入れで割れちゃうんです。泥を塗っても割れるときは割れるんですね」
「泥塗りは確率がまだ低いのか」
「ええ。低いというか、本当にあれが有効だったのか、それともたまたまだったのか、よく分からなくなってきました」
「それで、どんな工夫をした?」
「とにかく温度差を少なくしようと思って、水じゃなくて熱湯にしてみたり、泥水の中に突っ込んでみたりしましたが、いまのところうまくいってるものはありません」
「そうか。その泥だが、なにを混ぜたんだっけ?」
「えっと。粘土と焼却灰、それにその粉末です」
「粉末って、ああこれ、クロム鋼の粉末じゃないか。そんなものを混ぜたのか」
「ええ? そうだったんですか。粘度調整にちょうどいい感じの粉末だったもので。まずいですかね?」
「どうだろ? 鉄の表面にクロムが入るのかもしれないが、ほんのちょっとだろう。特に悪さするとは思えないがな。そういえば、これってクロム以外の成分が分かってないんだ。へんなものが入っているかもしれない。ステンレスを作るには問題なかったようだが」
「使うの止めた方がいいですかね」
「他に適当なものがなければ、使ってもいいだろ。あ、そういえば焼き入れだけどな」
「はい?」
「急激に冷やすから鉄が強くなるんだから、その温度差が少なくなっては、意味がないと思うんだ」
「ええ、それはそうですけど。割れるほどの差はいらないかなって」
「でも、刀の全部がバリバリに割れたわけじゃないだろ?」
「それはまあ、そうですが」
「厚みの違いじゃないのかなって思うんだが、どうだろ?」
「厚みの違いですか?」
「刀ってのは、刃の部分は細く、峰に近づくにつれて厚くなってゆくよな」
「あっ、そうか。刃先と峰では冷えて行く時間が大きく異なることになりますね」
「当然、厚みのある方が熱容量は大きい。これを急冷すると、表面だけがまず冷やされるので、まだ熱い中と冷えた外とで大きな温度差が生まれることになる。だから割れるんじゃね?」
「とすると、冷えて行く時間を合わせればいいということになりますか。それなら、泥を塗るときに、峰側を厚く、刃先は薄く塗ったらどうでしょう」
「うんそうだな。そうすれば峰の部分はゆっくり冷えてゆくか。いいな、それ。それなら割れにくくなるはずだ。もしかしたら、刃先の部分は泥なしてもいいかもしれない。その方向でやってみてくれ。どのみち、峰の部分まで焼きが入る必要はないしな」
「分かりました。それでやってみます」
「結果がでたら教えてくれ。それで、手は足りているか?」
「銑鉄作りのほうでも、いろいろと条件を変えてやっていますので、正直手はいくらあっても足りないぐらいです」
「原料の銑鉄を作って叩いて鍛えて、それで刀を打って研いで焼き入れして、をひとりだもんな」
「はい、それは仕方ないことですが」
「よしゼンシン。お前は今日から錬鉄作りと焼き入れだけを担当しろ」
「え、いいのですか? そうさせてもらえると助かりますが」
「助かると言ってもらって俺も助かる。本来なら刀を打つ仕事をするために呼んだのにな。不動明王さんに怒られそうだ」
「いえいえ、刀打ちの修行はどこでもできます。だけど、こんな新しい材料と製法の開発を、まだ見習いの僕なんかにまかせてもらえるなんて、よそではできません、というよりあり得ません」
修行がどこでもできるとは思わないが、そう言ってもらえるのはありがたい。開発担当を11才の見習いにするのはよそではあり得ないってのは、その通りだろうな。
「そうか、それはよかった。じゃあ、ゼンシンは銑鉄をどんどん作ってくれ。オウミにも手伝わせる。オウミはこれから10日ほどはお前に預ける。どんなことにでもいいから使ってくれ」
「待て待て! 待つのだ、ユウ。我はお主と契約した眷属であってだな」
「眷属に命令だ。ゼンシンを手伝え」
「きゅぅぅぅ」
「ということだ、ゼンシン、よろしく頼む」
「あの、はい。それでよろしいのですか? オウミ様」
「プンプン。もう分かったノだプンプン。手伝えばいいノだろ、手伝えば。まったく魔王をいったいなんだと思っていきゃははははは」
こちょこちょこちょ。まあ、そう言わず手伝ってくれ。この工房のためだ。
「ミヨシもつけるからさ」
「よし。それならいいノだ」
ちょろい魔王さんは好きですよ。
「ということはユウさん。刀はだれが打つのですか?」
「ここにはひとりしかおるまい。この鉄を使って、刀を打ちたがっていた人がいただろ?」
あぁ、あの人ね。とだれもが納得する人材である。国指定の1級刀工技術者・ヤッサンである。
「しかし、それでは剣の注文に応えらんぞ、ユウ」
「かまわないよヤッサン。その調整はソウにやらせる。なんなら全部キャンセルしたってかまわない」
「そ、そんなことをしたら、もう二度と注文がもらえなくなるぞ」
「来月までに600万を作れなければ、注文なんかあっても同じことだろ?」
「そ、それはそうだが」
「そういうことは経営者の仕事だ。まかせておけばいい」
「そ、そうか。それならやらせてもらおう。俺にとっても願ってもないことだからな」
「ああ、そうだったな。念願が叶ってよかったじゃないか」
「ありがとう、ユウ。俺は年甲斐もなく涙がでそうだ」
おいおいおい。それほどのことじゃない。俺は自分の都合で言っているだけだ……。
あ、もうダメ。あづいあづい。逃げよう。
「相変わらず、根性のないやつなノだ」
「あ、そうそう。オウミ。ひとつだけ言っておくことがある」
「なんなノだ?」
「これから作るニホン刀に、魔力をかけるのは厳禁だからな」
「あぁぇぇ?」
不服そうなお返事だこと。やっぱりするつもりだったんかい。もう魔鉄はお腹いっぱいだよ。
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