60 / 336
第60話 剣士の一分
しおりを挟む
「ざくざくざく、まったくお前ってやつはもうなノださくさくさっくさく」
「なんか文句でもあるんかヨわしわしわしわし、しかしうまいなこれわしわし」
オウミとミノウが、並んでかまくらを掘る小学生になっとる。こうして見ている分には、ほのぼのとして愉快な光景である。このふたりの仲が悪いというのは本当だろうか?
ふたり目の魔王の襲来? にしばし固まったタケウチ工房の人たちであったが、1時間もするとすっかり打ち解けていつもの食事風景になっている。
順応性の高さなら、おそらくこちらの世界でも有数であろう。
ただ、ひとりだけ違うのが。
「ミノウ様。お顔を拭きましょう。ふきふきふき」
「むほほほむほ。よろしい。お前は使えるやつだな、これからも精進するのだヨ」
なんの精進だよ。
「はい、ありがとうございます!」
お前もお礼とか言ってんじゃねぇよ。
自分の食事などそっちのけで、ミノウにつきまとってなにかと世話を焼いているのは、ゼンシンである。
以前、どこかで会っているらしく、そのときに見たミノウの美しさに惚れ込んでしまったのだそうだ。
惚れ込む? これに? ふーん。まあ、本人が良いならかまわないけど。
しかし俺の眷属って、結局誰かに盗られるのね。
「なんだゼンシン。明日はお前の刀のデビューになるわけか、わしわしわし」
「はい、そうです。ハルミさんが振ってくれるんですよ。ミノウ様にも一度見ていただきたいものです」
「わしわしわし、そうか。これを食べたら見てやろう」
「は、はい、よろしくお願いします!」
ゼンシン嬉しそう。待てよ? 当然、ミノウは当分ここにいることになるのだから、ゼンシンもここを離れようとはしなくなるよな。ってことは?
ゼンシンをどうやって引き留めるのか、もう考えなくもいいじゃないか。
ミノウ、GJ!である! あ、それともうひとつある。
「なあ、ミノウ。お前は魔法付与ってことできるか?」
「むほむほ。もちろんできるのだヨ。そんなこと簡単だ。だけど、お主にはしても無駄だヨ」
「俺にじゃねぇよ。刀だ。ニホン刀にだ」
ぴくっと反応したのはハルミだった。
「なにを言っているのだヨ。そんな物体に魔法を付与したところでなんになる」
「ミヨシ、例の包丁を持ってきてくれないか?」
「はい、ここにありますよ」
どうしてそんなすぐ出てくるんですかね?
「おおっと驚いた。まさかミヨシ、持ち歩いているのか?!」
「うん。ヤッサンにね、収納する専用の鞘を作ってもらったの。おかげで寝るときも一緒よ?」
その包丁にどんだけ惚れ込んでんだよ。寝ぼけて鞘を抜いたりしたら、死人がでるんじゃないのか。
「ほほう。これがその包丁……おいおい! こんなことが、こんなことができるものなのか?! 我は初めてみたぞ! これは魔剣……ではないな、魔包丁とでも言うのか、ではないか」
「そうなノだ。それは我が作ったノだぞ」
間違ってはいないが、それはヤッサンに失礼だぞ、オウミ。それより秘密じゃなかったのかよ。
「ぐっ、なんだと?! どうしてこんなものを、お前なんかが」
「わははははは。悔しいノだな。どうだ、我にはかなうまいわははは」
「それが魔法付与の結果なんだよ。包丁ができる寸前に間違って魔法付与をしたら、刃に魔力が宿ってしまったという偶然の産物なんだ」
「ば、ばらすでないのだユウ! それは我だけの」
「なんだ偶然にできたのか、けっ」
「ユウのバカぁぁぁぁ」
いや、涙ながらにバカって言われましても。可愛いじゃねぇか。
「だから、それを今度はハルミの剣にやってもらえないかなと思ってな。どうだ、ミノウ。オウミに負けたままじゃ悔しくね?」
「もちろん、魔法付与ぐらいのこと我なら簡単なのだ。まかせてくれヨ」
「我が、我がする予定だったノに……」
「すまん、オウミ。ここは譲ってやってくれ。今度の刀に一番縁が深いのはゼンシンだ。そのゼンシンが慕っているミノウの魔力を付与することが適正というものだろう。ミヨシはお前を慕っていた。だからこそあんなにすごい魔力が宿ったんじゃないか」
「ぶつぶつぶつぶつ。分かったノだ。我慢してやるノだ。その代わり」
「ん?」
「我のニホン刀はなにより優先で作るのだぞ」
「ああ、それは最初の約束だからな。もう構想はまとまっている。剣技大会が終わったらヤッサンに作ってもらうよ」
「それとナイフとフォークも忘れてはいけないノだ」
「それも覚えているよ、大丈夫」
「それから、箸と冬服とカサと魔法の杖あいたっ」 こつん。
「欲張るんじゃないの」
「きゅぅん」
思わず作ってやると言いそうになる可愛さだが、ここは負けてはいけない。なんだよ、魔法の杖って。
「あ、冬服なら私が縫います。オウミ様はどんなのがお好みですか?」
「おおっ、さすがはミヨシなのだ。いけずなユウとは違うノだ」
悪かったないけずで。俺は京男子のホームズか。
「色の黒い水着にしてくれ」
ずるっ。俺だけがコケた。色が変わるだけかよ!! 冬服の意味あんのかそれ。
「分かりました。あとはフリルとかつけましょうか。少しだけ現代風になりますよ」
「うむ? そうなのか。ミヨシにまかせるノだ」
俺の知らないところで話がついたようだ。
「ユ、ユウ。それはもしかしたらもしかしなくても、それは私の刀のことだよな。あのミノウ様が協力してくるのか? ほんとにそんなことが、ほんとに、そんなうるるるるるる」
不意にハルミがでてきた。お前まで泣くなっての!! いちいちうっとおしいやっちゃなもう。まだできてもいないのに気が早いって。
「こんなに心待ちにしている人がいるので、ミノウ、お祭りが終わったらさっそく頼むよ。ヤッサンには最高のやつを作ってもらうので、最高の魔法付与をしてくれ」
「分かった、任せるのだヨ。でも、聞くところによると、剣技大会は明日だそうじゃないか。そこに間に合わなくていいのか?」
「ああ、大会には普通の……普通じゃないけどな、刀で出場してもらう。そこでは特殊なものを使うわけにはいかないんだ」
「そうか。まあいい。そのときにまた言ってくれ。ところでハルミは剣技大会の準備はもうできているのかヨ?」
「は、はい。練習も積んでます。明日は完璧に斬ってみませますよ。鉄を」
「て、て、鉄を斬るだと? 普通の剣でか?!」
「はい。ニホン刀という片刃の剣です。ユウができるって」
「本当なのか、ユウ。我はそんなこと聞いたことがないぞヨ」
「そういえば、我も知らないノだ。本当に大丈夫なノか?」
「俺も知らない」
だぁぁぁぁぁぁぁ、と部屋中の人が崩れ落ちた。そういうことは本番前に試技をして確認しておくべきだろ!! と、めっちゃ怒られた。
「まったくあんだけ自信満々に言うものだから、前の世界で経験しているのかと思ってたぞ。経験がないなら試しておくべきだろ」
ソウの言う通り心配は確かにある。しかし、売り物に傷つけたくなかったのだ。本番で使う1本は仕方ないが、残りの7本は無傷のままで売りたい。
練習で鉄なんか斬って、試技用の1本に見えないクラックが入るのが怖かったのだ。それが原因になって、本番で折れたりしたら計画が水の泡だからな。
それなら別の刀で本番、ということにするとその刀まで中古品となってしまう。
それでも新品がまだ6本ある計算だが、それでは借金の金額ぎりぎりの売り上げにしかならない。
もちろんそれだって予定に過ぎない。1本100万という数字だって、俺が勝手に設定したものだ。確証なんかない。大切なのはその場のノリだ。
ハルミが鉄を斬る。おおっという歓声が上がる。で、ここに同じものがあるんですけど? じゃあ俺が買う、いや俺こそ。いや、拙者にこそふさわしい。いやいやそれなら俺が……なんてことになってもらいたいのだ。
万が一合計売り上げが600万に達しなかった場合、この工房はなくなることになる。それが一番心配なのだ。
そういう意味で、7本の新品は確保しておきたい。いざとなったらハルミの使った1本だって中古として売ってやるつもりでいる。
「お前らは知らないだろうけど、ニホン刀にとって鉄を斬るぐらい、普通にできることなんだぞ?」
「「「ええええええ!?」」」
炭素鋼が軟鉄を斬るぐらいのこと、実は簡単なのだ。前の世界でもよく知られていたことである。しかし、それによって斬ったほうの炭素鋼にヒビが入ることはある。
だから、もったいないから誰もやろうとしないだけだ。
そのとき、ニホン刀の制作者であるゼンシンとヤッサンが言った。
「僕もそれが心配でした。ユウさんが自信満々だったので黙っていましたが、試技ができるならしたほうがいいです」
「そうだな。制作者としては確認しておきたいところだ。食事が終わったら試し切りをしよう、ユウ。刀は現在8本。材料はあと1本分くらいはなんとかなる。万が一折れるようなことがあったら、明日の朝までに俺たちでまた作ればいいだろ」
あれだけの刀を作っておいて、そこまで言ってくれますか。
「実は私も不安だったのだ。腕は磨いていたつもりだが、それでも鉄を斬るなんてことやったことないしな。できるのであれば、ぜひ試し斬りをさせて欲しいぞ、ユウ」
「分かった分かった。皆がそこまでいうならやろう。ただし、使うのは一番最初の刀だ。あれが品質的には一番劣ると思われるからな」
「ありがとうユウ。それからミノウ様、私の剣技になにか問題がないかも見ていただけませんか」
ん? ミノウってそういうのが得意なのか?
「分かった、見てやるヨ。この土地では、ずっと前から優秀な刀工を輩出しておる。剣の達人もたくさんいたからな。さすがに鉄を斬るなんて発想は誰にもなかったが、それができたらすごいことだ。斬鉄のハルミ。その名前はこの土地に永遠に残ることだろうヨ」
こらミノウ。そこまで言うな。そんなことを言ったら、
「え……永遠に残る、……私の名が……永遠に、斬鉄のハルミ、なんてステキな、鉄を斬った最初の美少女女剣士として…名前が残る、のか。そんなことが、本当に」
ほらみろ、またおかしなスイッチが入ってしまったじゃないか。
「なにげに美少女という一文を忘れずに入れているようだヨ」
「ある意味、剣士の一分なノだ」
だれがうまいこと言えと。
「なんか文句でもあるんかヨわしわしわしわし、しかしうまいなこれわしわし」
オウミとミノウが、並んでかまくらを掘る小学生になっとる。こうして見ている分には、ほのぼのとして愉快な光景である。このふたりの仲が悪いというのは本当だろうか?
ふたり目の魔王の襲来? にしばし固まったタケウチ工房の人たちであったが、1時間もするとすっかり打ち解けていつもの食事風景になっている。
順応性の高さなら、おそらくこちらの世界でも有数であろう。
ただ、ひとりだけ違うのが。
「ミノウ様。お顔を拭きましょう。ふきふきふき」
「むほほほむほ。よろしい。お前は使えるやつだな、これからも精進するのだヨ」
なんの精進だよ。
「はい、ありがとうございます!」
お前もお礼とか言ってんじゃねぇよ。
自分の食事などそっちのけで、ミノウにつきまとってなにかと世話を焼いているのは、ゼンシンである。
以前、どこかで会っているらしく、そのときに見たミノウの美しさに惚れ込んでしまったのだそうだ。
惚れ込む? これに? ふーん。まあ、本人が良いならかまわないけど。
しかし俺の眷属って、結局誰かに盗られるのね。
「なんだゼンシン。明日はお前の刀のデビューになるわけか、わしわしわし」
「はい、そうです。ハルミさんが振ってくれるんですよ。ミノウ様にも一度見ていただきたいものです」
「わしわしわし、そうか。これを食べたら見てやろう」
「は、はい、よろしくお願いします!」
ゼンシン嬉しそう。待てよ? 当然、ミノウは当分ここにいることになるのだから、ゼンシンもここを離れようとはしなくなるよな。ってことは?
ゼンシンをどうやって引き留めるのか、もう考えなくもいいじゃないか。
ミノウ、GJ!である! あ、それともうひとつある。
「なあ、ミノウ。お前は魔法付与ってことできるか?」
「むほむほ。もちろんできるのだヨ。そんなこと簡単だ。だけど、お主にはしても無駄だヨ」
「俺にじゃねぇよ。刀だ。ニホン刀にだ」
ぴくっと反応したのはハルミだった。
「なにを言っているのだヨ。そんな物体に魔法を付与したところでなんになる」
「ミヨシ、例の包丁を持ってきてくれないか?」
「はい、ここにありますよ」
どうしてそんなすぐ出てくるんですかね?
「おおっと驚いた。まさかミヨシ、持ち歩いているのか?!」
「うん。ヤッサンにね、収納する専用の鞘を作ってもらったの。おかげで寝るときも一緒よ?」
その包丁にどんだけ惚れ込んでんだよ。寝ぼけて鞘を抜いたりしたら、死人がでるんじゃないのか。
「ほほう。これがその包丁……おいおい! こんなことが、こんなことができるものなのか?! 我は初めてみたぞ! これは魔剣……ではないな、魔包丁とでも言うのか、ではないか」
「そうなノだ。それは我が作ったノだぞ」
間違ってはいないが、それはヤッサンに失礼だぞ、オウミ。それより秘密じゃなかったのかよ。
「ぐっ、なんだと?! どうしてこんなものを、お前なんかが」
「わははははは。悔しいノだな。どうだ、我にはかなうまいわははは」
「それが魔法付与の結果なんだよ。包丁ができる寸前に間違って魔法付与をしたら、刃に魔力が宿ってしまったという偶然の産物なんだ」
「ば、ばらすでないのだユウ! それは我だけの」
「なんだ偶然にできたのか、けっ」
「ユウのバカぁぁぁぁ」
いや、涙ながらにバカって言われましても。可愛いじゃねぇか。
「だから、それを今度はハルミの剣にやってもらえないかなと思ってな。どうだ、ミノウ。オウミに負けたままじゃ悔しくね?」
「もちろん、魔法付与ぐらいのこと我なら簡単なのだ。まかせてくれヨ」
「我が、我がする予定だったノに……」
「すまん、オウミ。ここは譲ってやってくれ。今度の刀に一番縁が深いのはゼンシンだ。そのゼンシンが慕っているミノウの魔力を付与することが適正というものだろう。ミヨシはお前を慕っていた。だからこそあんなにすごい魔力が宿ったんじゃないか」
「ぶつぶつぶつぶつ。分かったノだ。我慢してやるノだ。その代わり」
「ん?」
「我のニホン刀はなにより優先で作るのだぞ」
「ああ、それは最初の約束だからな。もう構想はまとまっている。剣技大会が終わったらヤッサンに作ってもらうよ」
「それとナイフとフォークも忘れてはいけないノだ」
「それも覚えているよ、大丈夫」
「それから、箸と冬服とカサと魔法の杖あいたっ」 こつん。
「欲張るんじゃないの」
「きゅぅん」
思わず作ってやると言いそうになる可愛さだが、ここは負けてはいけない。なんだよ、魔法の杖って。
「あ、冬服なら私が縫います。オウミ様はどんなのがお好みですか?」
「おおっ、さすがはミヨシなのだ。いけずなユウとは違うノだ」
悪かったないけずで。俺は京男子のホームズか。
「色の黒い水着にしてくれ」
ずるっ。俺だけがコケた。色が変わるだけかよ!! 冬服の意味あんのかそれ。
「分かりました。あとはフリルとかつけましょうか。少しだけ現代風になりますよ」
「うむ? そうなのか。ミヨシにまかせるノだ」
俺の知らないところで話がついたようだ。
「ユ、ユウ。それはもしかしたらもしかしなくても、それは私の刀のことだよな。あのミノウ様が協力してくるのか? ほんとにそんなことが、ほんとに、そんなうるるるるるる」
不意にハルミがでてきた。お前まで泣くなっての!! いちいちうっとおしいやっちゃなもう。まだできてもいないのに気が早いって。
「こんなに心待ちにしている人がいるので、ミノウ、お祭りが終わったらさっそく頼むよ。ヤッサンには最高のやつを作ってもらうので、最高の魔法付与をしてくれ」
「分かった、任せるのだヨ。でも、聞くところによると、剣技大会は明日だそうじゃないか。そこに間に合わなくていいのか?」
「ああ、大会には普通の……普通じゃないけどな、刀で出場してもらう。そこでは特殊なものを使うわけにはいかないんだ」
「そうか。まあいい。そのときにまた言ってくれ。ところでハルミは剣技大会の準備はもうできているのかヨ?」
「は、はい。練習も積んでます。明日は完璧に斬ってみませますよ。鉄を」
「て、て、鉄を斬るだと? 普通の剣でか?!」
「はい。ニホン刀という片刃の剣です。ユウができるって」
「本当なのか、ユウ。我はそんなこと聞いたことがないぞヨ」
「そういえば、我も知らないノだ。本当に大丈夫なノか?」
「俺も知らない」
だぁぁぁぁぁぁぁ、と部屋中の人が崩れ落ちた。そういうことは本番前に試技をして確認しておくべきだろ!! と、めっちゃ怒られた。
「まったくあんだけ自信満々に言うものだから、前の世界で経験しているのかと思ってたぞ。経験がないなら試しておくべきだろ」
ソウの言う通り心配は確かにある。しかし、売り物に傷つけたくなかったのだ。本番で使う1本は仕方ないが、残りの7本は無傷のままで売りたい。
練習で鉄なんか斬って、試技用の1本に見えないクラックが入るのが怖かったのだ。それが原因になって、本番で折れたりしたら計画が水の泡だからな。
それなら別の刀で本番、ということにするとその刀まで中古品となってしまう。
それでも新品がまだ6本ある計算だが、それでは借金の金額ぎりぎりの売り上げにしかならない。
もちろんそれだって予定に過ぎない。1本100万という数字だって、俺が勝手に設定したものだ。確証なんかない。大切なのはその場のノリだ。
ハルミが鉄を斬る。おおっという歓声が上がる。で、ここに同じものがあるんですけど? じゃあ俺が買う、いや俺こそ。いや、拙者にこそふさわしい。いやいやそれなら俺が……なんてことになってもらいたいのだ。
万が一合計売り上げが600万に達しなかった場合、この工房はなくなることになる。それが一番心配なのだ。
そういう意味で、7本の新品は確保しておきたい。いざとなったらハルミの使った1本だって中古として売ってやるつもりでいる。
「お前らは知らないだろうけど、ニホン刀にとって鉄を斬るぐらい、普通にできることなんだぞ?」
「「「ええええええ!?」」」
炭素鋼が軟鉄を斬るぐらいのこと、実は簡単なのだ。前の世界でもよく知られていたことである。しかし、それによって斬ったほうの炭素鋼にヒビが入ることはある。
だから、もったいないから誰もやろうとしないだけだ。
そのとき、ニホン刀の制作者であるゼンシンとヤッサンが言った。
「僕もそれが心配でした。ユウさんが自信満々だったので黙っていましたが、試技ができるならしたほうがいいです」
「そうだな。制作者としては確認しておきたいところだ。食事が終わったら試し切りをしよう、ユウ。刀は現在8本。材料はあと1本分くらいはなんとかなる。万が一折れるようなことがあったら、明日の朝までに俺たちでまた作ればいいだろ」
あれだけの刀を作っておいて、そこまで言ってくれますか。
「実は私も不安だったのだ。腕は磨いていたつもりだが、それでも鉄を斬るなんてことやったことないしな。できるのであれば、ぜひ試し斬りをさせて欲しいぞ、ユウ」
「分かった分かった。皆がそこまでいうならやろう。ただし、使うのは一番最初の刀だ。あれが品質的には一番劣ると思われるからな」
「ありがとうユウ。それからミノウ様、私の剣技になにか問題がないかも見ていただけませんか」
ん? ミノウってそういうのが得意なのか?
「分かった、見てやるヨ。この土地では、ずっと前から優秀な刀工を輩出しておる。剣の達人もたくさんいたからな。さすがに鉄を斬るなんて発想は誰にもなかったが、それができたらすごいことだ。斬鉄のハルミ。その名前はこの土地に永遠に残ることだろうヨ」
こらミノウ。そこまで言うな。そんなことを言ったら、
「え……永遠に残る、……私の名が……永遠に、斬鉄のハルミ、なんてステキな、鉄を斬った最初の美少女女剣士として…名前が残る、のか。そんなことが、本当に」
ほらみろ、またおかしなスイッチが入ってしまったじゃないか。
「なにげに美少女という一文を忘れずに入れているようだヨ」
「ある意味、剣士の一分なノだ」
だれがうまいこと言えと。
11
あなたにおすすめの小説
武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!
Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。
裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、
剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。
与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。
兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。
「ならば、この世界そのものを買い叩く」
漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。
冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力――
すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。
弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。
交渉は戦争、戦争は経営。
数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。
やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、
世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。
これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。
奪うのではない。支配するのでもない。
価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける――
救済か、支配か。正義か、合理か。
その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。
異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。
「この世界には、村があり、町があり、国家がある。
――全部まとめて、俺が買い叩く」
毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。
馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。
元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。
バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。
だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。
アイドル時代のファンかも知れない。
突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。
主人公の時田香澄は殺されてしまう。
気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。
自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。
ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。
魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。
鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~
今田勝手
ファンタジー
平安時代の日本で魑魅魍魎を束ねた最強の鬼「酒呑童子」。
大江山で討伐されたその鬼は、死の間際「人に生まれ変わりたい」と願った。
目が覚めた彼が見たのは、平安京とは全く異なる世界で……。
これは、鬼が人間を目指す更生の物語である、のかもしれない。
※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ネオページ」でも同時連載中です。
異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる