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第97話 ウエモンは魔法使い
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ああ、なんだか息苦しい。身体が重い。あぁぁぁぁぁあ、俺はどうなったんだ。あぁぁ。あ?
目が覚めたとき、俺は魔物にのしかかられていた。息苦しいわけである。その魔物は言った。
「ユウ、どこまで見たのか言え!」
「ふぁぁ?」
起き抜けの俺にそういうことを聞くアホはハルミしかいない。
ぱしぱしぱし。
「痛ふぁい痛ふぁい痛ふぁい。ふぁにをするんだ! 俺は繊細にできてぐぇぇ」
首を絞められた。げほげほげほ。
「そんなことはいいから起きろ! まだ夕方だ。寝る時間じゃないだろ」
そんなこと言われましても。あれ、俺ってなんでこんなとこで寝てるんですかね?
「ふぁぁ?」
「ああ、もう。寝起きの悪いやつだな。鍛え方が足らんのだ。明日から毎日筋トレを5時間はやれ」
「お前と一緒にすんな!!」
あ、目が覚めた。筋トレがどんだけ嫌いだよ、俺。
「やっと起きたか。さあ言えユウ。どこまで見た? どこまで覚えている? 返答によっては」
「いででででで。耳を引っ張るな。お前はやりたい放題か。それより、ここはどこだ?」
「ここは大部屋だ。ユウが風呂場でぶっ倒れたのでここに運んだのだ」
「そうだったのか。まだ頭痛がするずきずき。そもそもいったいなにがあったんだ?」
「そんなことはいい。ユウ、お前が倒れるときになにがあったのか覚えているか?」
「そりゃ、もちろん覚えているさ。ほんのりと」
「ほんのり、なのか。その程度なのか? そ、その程度なら、まあいいのかな」
「ほんのりと生えた毛をくっきり見てぎっちり覚えていぎゅぅぅぅぅぅぅしむしむ」
「忘れろ!! 今すぐ忘れろ!! 忘れるまで首を絞めてやる!」
「ぐぇぇぇぇ、ご、ごろずぎが」
「ああ、殺す気だ。お前を殺して私も死……」
そのとき、ご~~んという除夜の鐘が鳴った。ああ、もう年末か。
んなわけあるかい! ミヨシが魔物を沈黙させた音だった。なにその10tと書かれたハンマーは。サエバリョウさん用?
げほごほげほげほ。あぁ、ほんとに死ぬかと思った。やっと魔物の手から開放された。ミヨシさん、助けてくれてありがたいけどなんか表情が硬いっすよ?
「ハルミ姉さんはどうしていつも後先考えないで突っ走るのよ、もう。そんなの恥の上塗りじゃないの」
げほげほっほげほ。ミヨシが倒した魔物は意識を失ってそこに寝そべっている。まるでマグロである。3枚におろしたろか。
「ミ、ミヨシか、ありがとう、助かったよごほごほ」
「それで?」
「はい?」
いや、近いっす、ミヨシさん近いっす。硬い表情でそんなに近づかれるとすっげぇ怖いっす。
「それで? 本当にどこまで覚えているの?」
「ああ、その話か。そ、そりゃもう、一部始終をガン見してたからな。ハルミのあそこもミヨシのアレもなにかもを鮮明に覚えてぐぇぇぇぇぇ」
お前も魔物かよ!!
「もう私の手でこの世から抹殺することにするわ」
「よ、よせぇぇ。だ、だからしむぐぇぇぇぇぇ……」
くてっ。
俺は再び気を失った。おっぱいはミヨシのほうがちょっと大きいなって褒めようとしたのに、その暇もなかった。
俗にいうところの「落ちた」というやつだった。首ではなく頸動脈を絞められたために、脳への血流が落ちて意識を失ったのである
ミヨシはどこでそんな技術を学んだのだろうか。しかしこれでハルミと俺がともに静かになり、彼女たちの恥を広めるような事態はとりあえず避けられたのであった。
でもあれ、男湯にいた連中はみんなガン見してたよなぁ。一部始終を見てたよなぁ。それなのに俺だけの口を塞いでなんの意味があるのだろうか。それよりもだ。なんで俺だけこんな目に遭うのか納得がいかない。
でもって次の日。
「しかしこれは、大変なことになりましたね」
「こ、困りますよ。トヨタの旦那。これではもうお客さんを入れられません。修理にどれだけの時間とお金がかかることか……」
崩壊した風呂場での、エースと旅館の経営者との会話である。
「レクサス、これを修理したらどのくらいかかると思う?」
「そうですね。構造自体は単純ですが、配管がやっかいですね。廃材の撤去も含めますと、総費用で2,000万ぐらいはかかると思われます」
「そんなにかかるのか?」
「はい、壁だけなら数百万で済みますが、配管までとなるとそのぐらいはかかると思います。工期は2週間というところでしょうか」
「そ、そんなの困ります。これから行楽シーズンで稼ぎどきなのに、2週間も休んだのでは大赤字になります。それから、2,000万なんて費用は出せません。うちはいまでもカツカツなんですから」
「それはもちろん、こんなふうにした人たちが責任をとるべきでしょうね」
「それは正論ではあるがレクサス。あの人たちはうちが招待したお客さんだぞ」
「侯爵様。それとこれとは別問題です。トヨタ家の人間が壁を壊したわけではありません。うちが費用を出す理由がありません」
「うぅむ」
「という話になっているようなノだ」
「やはりそうか。これはタケウチ工房が弁償するしかなさそうだなぁ」
「しかしソウ。ここで2,000万の出費は正直痛いな」
「社長。痛いどころじゃありませんって。そんなお金をどうやって工面しますか。やっと借金がなくなりそうだったのに」
「そうだったな。誰だよ、社員旅行に行こうなんて言ったやつは」
お前だーーーと全員で突っ込んだ。
風呂場でエースたちが話していた内容を、オウミが聞いてきて報告している。
場所は100人は入れると思われる大部屋である。ここはいつもは宴会場として使われる部屋だそうだ。
その一部を借りて、ハルミとミヨシを除くタケウチ工房の全員が集まって、あの嬉し恥ずかし大事件の善後策を話し合っているのである。
ハルミとミヨシはとても人前に出せる顔がないといって、ふたりで部屋の押し入れに籠もっている。そのままキノコとかになるつもりであろう。サルマタケかな?
ちなみに、ウエモンはへっちゃらのようでそこにいる。さすがはつるぺた幼児である。
「うちの人間が壁を切ったのは確かだからなぁ」
「まさか、ウエモンがあれを使えるなんてな」
「俺が使ってもキャベツが凹むだけなのに、ウエモンって意外とすごいのか」
「ウエモンも相当に才能ある魔法使いでしたからねぇ」
「でもあの魔包丁や魔刀は人を選ぶという話だったが」
「社長。いまのところあれを使えるのは、ミヨシとハルミ。それに今回のウエモンと、女の子ばかりですね」
一同がオウミとミノウを見る。じと。
「なんだ、なんなのだ、なんでそんな目で我を見るなノだ」
「そう、そうなのだ。我らは別にそんなふうにした覚えはないヨ」
(なんだ? あれはお主らが作ったのか?!)
なんでイズナまでいるんだ。早く帰って小麦を植えさせろよ。でもどうせいるのなら、面倒だから姿を現せ。みんなに紹介しておこう。これからのこともあるしな。
「あー、話の途中だけどちょっとだけ聞いてくれ。ここにまたひとり魔王ってのがいてだな」
「我の敵と書いてライバルと読むやつなのだヨ」
どこの少年ジャンプだよ。
「というわけで、エチ国の魔王・イズナだ。ハルミはもう会っているけど、みんなは初めてだったよな。よろしくしてあげて」
「イズナなのだゾヨ。よろしくなのだ」
……そろそろ来るぞ。レイのアレが。
「「「あらぁ、可愛い!」」」
あれれ? お前ら、いつもとちがくね?
「だって、もう慣れちゃってさ」
とソウが言った。これで魔王と会うのも3人目か。ごもっともなことで。ただひとり、慣れていないやつがいたのは誤算であった。イズナ的に。
「お近くの魔物さん、魔物さん。どうか私とお友達になってくださいな。アビラウンケンソワカ」
ウエモンはイズナを見るなり、いきなり召喚魔法をぶっ放したのだ!
そして見事にそれはヒットし、イズナはミノウの隣から離れてウエモンの目の前に現れた。
まあ、5mほど移動したに過ぎないけど。歩いてもたいして時間は変わらないような距離だ。しかし、この世界的にはそれは大きな違いがある。
召喚したものとされたものである。そこには、お友達になるかならないかぐらいの差がある。
……たいした違いじゃないか。
「おぉっとびっくりしたゾヨ。お主、いきなりだな。その召喚魔法って、人間の場合は生涯に使える回数が決まっているとか聞いた……ちょっとちょっと待て。シッポを握るでないゾヨ。身体に触るでないゾヨ。頬ずりもするでないゾヨ。もふもふもするな!!!」
気に入ったようでなによりである。あ、そうだ。ものは試しに、ウエモンにあの呪文を教えてやろう。
「ちょっとウエモン、耳をかせ。ぼそぼそぼそぼそぼそ、って言ってみろ。ものは試しだ」
「え? そんなことして大丈夫なの?」
「俺のときは大丈夫だったぞ。うまくいくかどうかまでは分からんが、回数制限があるわけじゃなし、損をすることはないだろ。やってみな」
「そうか、そうだね。分かった。やってみる」
そしてウエモンはイズナに向かって言った。
「今日からお前は俺の手下な」
これは俺がすでに2度成功させている、魔王の眷属化呪文である。というのかどうかは知らんけど。
俺は魔法使いでもないのに呪文と言うのはおかしいかも知れない。それを魔法使いであるウエモンが使ったら?
さて、どうなる? いつもの音がすれば成功だが。
……。
……。
だめぽ?
「いま、なんかやったのかゾヨ?」
「うん。やったよ」
「いま、ユウがなにかを口移しにしたようだったノだ」
「口移しなんかしねぇよ。耳打ちしたんだよ!! よく分からない言葉を無理して使うなっていつも言ってるだろ」
「いったいなにをやったのだゾヨ、小娘よ?」
「今日からお前を私の手下にする、っていう呪……あれ?」
ち~ん。
キタ━━━(゜∀゜)━━━!!!!
キタ━━━(゜∀゜)━━━!!!!
眷属キタ━━━(゜∀゜)━━━!!!!
やったぞ、ウエモン!! これでそいつはお前のものだ。俺ももうイズナを調略するとか考えなくて済むし、もしかしたらなにかに使えるかも知れないし。やっほっほー。
「いや、いつも言ってるが、ものではないと思うノだ」
「わははは、イズナよおめでとう。これでもう寂しくあるまいヨ」
「まさか、いまのは。神の声なのか。我に、こやつの眷属になれと?」
「う、うん。たぶん、そうなのだ。分かったか」
「神よ! 炎よ! 光よ! 我にこの娘の眷属になれと申すか!?」
来るぞー、来るぞー。いつものが来るぞー。こんちくがなんとかって来るぞー。
「そうか、よろしく頼むゾヨ。これからはお主のために働いてやろう」
ち~ん。
俺のときと言葉も態度も順番も違うじゃねぇかよ!!! こんちくしお!。
「こんちくなんとかはちゃんと来たではないかヨ」
「うむ、斜め上の予定調和だったノだ」
目が覚めたとき、俺は魔物にのしかかられていた。息苦しいわけである。その魔物は言った。
「ユウ、どこまで見たのか言え!」
「ふぁぁ?」
起き抜けの俺にそういうことを聞くアホはハルミしかいない。
ぱしぱしぱし。
「痛ふぁい痛ふぁい痛ふぁい。ふぁにをするんだ! 俺は繊細にできてぐぇぇ」
首を絞められた。げほげほげほ。
「そんなことはいいから起きろ! まだ夕方だ。寝る時間じゃないだろ」
そんなこと言われましても。あれ、俺ってなんでこんなとこで寝てるんですかね?
「ふぁぁ?」
「ああ、もう。寝起きの悪いやつだな。鍛え方が足らんのだ。明日から毎日筋トレを5時間はやれ」
「お前と一緒にすんな!!」
あ、目が覚めた。筋トレがどんだけ嫌いだよ、俺。
「やっと起きたか。さあ言えユウ。どこまで見た? どこまで覚えている? 返答によっては」
「いででででで。耳を引っ張るな。お前はやりたい放題か。それより、ここはどこだ?」
「ここは大部屋だ。ユウが風呂場でぶっ倒れたのでここに運んだのだ」
「そうだったのか。まだ頭痛がするずきずき。そもそもいったいなにがあったんだ?」
「そんなことはいい。ユウ、お前が倒れるときになにがあったのか覚えているか?」
「そりゃ、もちろん覚えているさ。ほんのりと」
「ほんのり、なのか。その程度なのか? そ、その程度なら、まあいいのかな」
「ほんのりと生えた毛をくっきり見てぎっちり覚えていぎゅぅぅぅぅぅぅしむしむ」
「忘れろ!! 今すぐ忘れろ!! 忘れるまで首を絞めてやる!」
「ぐぇぇぇぇ、ご、ごろずぎが」
「ああ、殺す気だ。お前を殺して私も死……」
そのとき、ご~~んという除夜の鐘が鳴った。ああ、もう年末か。
んなわけあるかい! ミヨシが魔物を沈黙させた音だった。なにその10tと書かれたハンマーは。サエバリョウさん用?
げほごほげほげほ。あぁ、ほんとに死ぬかと思った。やっと魔物の手から開放された。ミヨシさん、助けてくれてありがたいけどなんか表情が硬いっすよ?
「ハルミ姉さんはどうしていつも後先考えないで突っ走るのよ、もう。そんなの恥の上塗りじゃないの」
げほげほっほげほ。ミヨシが倒した魔物は意識を失ってそこに寝そべっている。まるでマグロである。3枚におろしたろか。
「ミ、ミヨシか、ありがとう、助かったよごほごほ」
「それで?」
「はい?」
いや、近いっす、ミヨシさん近いっす。硬い表情でそんなに近づかれるとすっげぇ怖いっす。
「それで? 本当にどこまで覚えているの?」
「ああ、その話か。そ、そりゃもう、一部始終をガン見してたからな。ハルミのあそこもミヨシのアレもなにかもを鮮明に覚えてぐぇぇぇぇぇ」
お前も魔物かよ!!
「もう私の手でこの世から抹殺することにするわ」
「よ、よせぇぇ。だ、だからしむぐぇぇぇぇぇ……」
くてっ。
俺は再び気を失った。おっぱいはミヨシのほうがちょっと大きいなって褒めようとしたのに、その暇もなかった。
俗にいうところの「落ちた」というやつだった。首ではなく頸動脈を絞められたために、脳への血流が落ちて意識を失ったのである
ミヨシはどこでそんな技術を学んだのだろうか。しかしこれでハルミと俺がともに静かになり、彼女たちの恥を広めるような事態はとりあえず避けられたのであった。
でもあれ、男湯にいた連中はみんなガン見してたよなぁ。一部始終を見てたよなぁ。それなのに俺だけの口を塞いでなんの意味があるのだろうか。それよりもだ。なんで俺だけこんな目に遭うのか納得がいかない。
でもって次の日。
「しかしこれは、大変なことになりましたね」
「こ、困りますよ。トヨタの旦那。これではもうお客さんを入れられません。修理にどれだけの時間とお金がかかることか……」
崩壊した風呂場での、エースと旅館の経営者との会話である。
「レクサス、これを修理したらどのくらいかかると思う?」
「そうですね。構造自体は単純ですが、配管がやっかいですね。廃材の撤去も含めますと、総費用で2,000万ぐらいはかかると思われます」
「そんなにかかるのか?」
「はい、壁だけなら数百万で済みますが、配管までとなるとそのぐらいはかかると思います。工期は2週間というところでしょうか」
「そ、そんなの困ります。これから行楽シーズンで稼ぎどきなのに、2週間も休んだのでは大赤字になります。それから、2,000万なんて費用は出せません。うちはいまでもカツカツなんですから」
「それはもちろん、こんなふうにした人たちが責任をとるべきでしょうね」
「それは正論ではあるがレクサス。あの人たちはうちが招待したお客さんだぞ」
「侯爵様。それとこれとは別問題です。トヨタ家の人間が壁を壊したわけではありません。うちが費用を出す理由がありません」
「うぅむ」
「という話になっているようなノだ」
「やはりそうか。これはタケウチ工房が弁償するしかなさそうだなぁ」
「しかしソウ。ここで2,000万の出費は正直痛いな」
「社長。痛いどころじゃありませんって。そんなお金をどうやって工面しますか。やっと借金がなくなりそうだったのに」
「そうだったな。誰だよ、社員旅行に行こうなんて言ったやつは」
お前だーーーと全員で突っ込んだ。
風呂場でエースたちが話していた内容を、オウミが聞いてきて報告している。
場所は100人は入れると思われる大部屋である。ここはいつもは宴会場として使われる部屋だそうだ。
その一部を借りて、ハルミとミヨシを除くタケウチ工房の全員が集まって、あの嬉し恥ずかし大事件の善後策を話し合っているのである。
ハルミとミヨシはとても人前に出せる顔がないといって、ふたりで部屋の押し入れに籠もっている。そのままキノコとかになるつもりであろう。サルマタケかな?
ちなみに、ウエモンはへっちゃらのようでそこにいる。さすがはつるぺた幼児である。
「うちの人間が壁を切ったのは確かだからなぁ」
「まさか、ウエモンがあれを使えるなんてな」
「俺が使ってもキャベツが凹むだけなのに、ウエモンって意外とすごいのか」
「ウエモンも相当に才能ある魔法使いでしたからねぇ」
「でもあの魔包丁や魔刀は人を選ぶという話だったが」
「社長。いまのところあれを使えるのは、ミヨシとハルミ。それに今回のウエモンと、女の子ばかりですね」
一同がオウミとミノウを見る。じと。
「なんだ、なんなのだ、なんでそんな目で我を見るなノだ」
「そう、そうなのだ。我らは別にそんなふうにした覚えはないヨ」
(なんだ? あれはお主らが作ったのか?!)
なんでイズナまでいるんだ。早く帰って小麦を植えさせろよ。でもどうせいるのなら、面倒だから姿を現せ。みんなに紹介しておこう。これからのこともあるしな。
「あー、話の途中だけどちょっとだけ聞いてくれ。ここにまたひとり魔王ってのがいてだな」
「我の敵と書いてライバルと読むやつなのだヨ」
どこの少年ジャンプだよ。
「というわけで、エチ国の魔王・イズナだ。ハルミはもう会っているけど、みんなは初めてだったよな。よろしくしてあげて」
「イズナなのだゾヨ。よろしくなのだ」
……そろそろ来るぞ。レイのアレが。
「「「あらぁ、可愛い!」」」
あれれ? お前ら、いつもとちがくね?
「だって、もう慣れちゃってさ」
とソウが言った。これで魔王と会うのも3人目か。ごもっともなことで。ただひとり、慣れていないやつがいたのは誤算であった。イズナ的に。
「お近くの魔物さん、魔物さん。どうか私とお友達になってくださいな。アビラウンケンソワカ」
ウエモンはイズナを見るなり、いきなり召喚魔法をぶっ放したのだ!
そして見事にそれはヒットし、イズナはミノウの隣から離れてウエモンの目の前に現れた。
まあ、5mほど移動したに過ぎないけど。歩いてもたいして時間は変わらないような距離だ。しかし、この世界的にはそれは大きな違いがある。
召喚したものとされたものである。そこには、お友達になるかならないかぐらいの差がある。
……たいした違いじゃないか。
「おぉっとびっくりしたゾヨ。お主、いきなりだな。その召喚魔法って、人間の場合は生涯に使える回数が決まっているとか聞いた……ちょっとちょっと待て。シッポを握るでないゾヨ。身体に触るでないゾヨ。頬ずりもするでないゾヨ。もふもふもするな!!!」
気に入ったようでなによりである。あ、そうだ。ものは試しに、ウエモンにあの呪文を教えてやろう。
「ちょっとウエモン、耳をかせ。ぼそぼそぼそぼそぼそ、って言ってみろ。ものは試しだ」
「え? そんなことして大丈夫なの?」
「俺のときは大丈夫だったぞ。うまくいくかどうかまでは分からんが、回数制限があるわけじゃなし、損をすることはないだろ。やってみな」
「そうか、そうだね。分かった。やってみる」
そしてウエモンはイズナに向かって言った。
「今日からお前は俺の手下な」
これは俺がすでに2度成功させている、魔王の眷属化呪文である。というのかどうかは知らんけど。
俺は魔法使いでもないのに呪文と言うのはおかしいかも知れない。それを魔法使いであるウエモンが使ったら?
さて、どうなる? いつもの音がすれば成功だが。
……。
……。
だめぽ?
「いま、なんかやったのかゾヨ?」
「うん。やったよ」
「いま、ユウがなにかを口移しにしたようだったノだ」
「口移しなんかしねぇよ。耳打ちしたんだよ!! よく分からない言葉を無理して使うなっていつも言ってるだろ」
「いったいなにをやったのだゾヨ、小娘よ?」
「今日からお前を私の手下にする、っていう呪……あれ?」
ち~ん。
キタ━━━(゜∀゜)━━━!!!!
キタ━━━(゜∀゜)━━━!!!!
眷属キタ━━━(゜∀゜)━━━!!!!
やったぞ、ウエモン!! これでそいつはお前のものだ。俺ももうイズナを調略するとか考えなくて済むし、もしかしたらなにかに使えるかも知れないし。やっほっほー。
「いや、いつも言ってるが、ものではないと思うノだ」
「わははは、イズナよおめでとう。これでもう寂しくあるまいヨ」
「まさか、いまのは。神の声なのか。我に、こやつの眷属になれと?」
「う、うん。たぶん、そうなのだ。分かったか」
「神よ! 炎よ! 光よ! 我にこの娘の眷属になれと申すか!?」
来るぞー、来るぞー。いつものが来るぞー。こんちくがなんとかって来るぞー。
「そうか、よろしく頼むゾヨ。これからはお主のために働いてやろう」
ち~ん。
俺のときと言葉も態度も順番も違うじゃねぇかよ!!! こんちくしお!。
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