異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第118話 運搬部長

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「こっちのジャガイモは芽を取って皮を剥いて、そうそう。それでなるべく薄くペラペラに切ってくれ」

「はーい。じゃあ、さくっさくっ、ささささささ。できたよ」
「早いなおい! それと薄っ。めっさ薄っ。向こうが透けて見えるじゃないか。まるでスライサーで削ったみたいだ。ミヨシも腕を上げたな」

「えへへ。こっちのはどうするの?」
「こっちは棒状になるように切ってくれ。5mm□ぐらいがいいかな」
「ザクザクザクザク、はい、できたよ」
「早いなおい! ってもう驚かないぞ。それじゃこれを水に浸ける」

「え? 水に浸けるの? これから油で揚げるのに?」
「ジャガイモにはデンプンが多量に含まれている。それが残っていると揚げたときにべたっとしたチップになっちゃうんだよ。だからチップは2分ぐらい、スティックは10分くらいは浸けておく」
「はーい。ばしゃばしゃばしゃっとね」

「そうだ。取り出したら水気を取らないといけないのだが、キッチンペーパー……なんかあるわけないな。ケント、ここには和紙はあるか?」
「はい、あります。ご用意いたしましょう。どのくらい必要ですか?」
「そうだな。とりあえずは20枚くらい用意しておいてもらおうか」

「え? そんなにですか」
「ダメか?」
「ダメではありませんが、和紙は貴重品なもので、なにに使われますか?」

「……ポテトの水を吸わせるのに……」
「そ、そんな、もったいことを!!」

 ですよね。

「仕方ない、ミノ国から取り寄せよう。魔回線を使うぞ。ほにゃらかほい(起動するための呪文)。モナカ、大至急和紙が必要だ。持てるだけ持ってこっちに来てくれ。赤紙は別途用意させる。失敗作でも切れ端でもなんでもいいから多めに頼む。きょにゅうもえ」

 毎度のことながらハズカシス(´・ω・`)

「クラーク。悪いがまた赤紙を出して欲しい。今度はモナカを呼び寄せたい」
「モナカという子が和紙を持ってきてくれるのか。それ、少しもらっても良いか?」
「それは持ってきた量を見てからにしよう。あちらでは和紙なんかそれほど高いものじゃなかったが、すぐに用意できるかどうかは分からんからな」

「そうか。半端でもいいので、余るようなら検討してくれ」
「分かった。こちらでは和紙は作れないのか?」
「ああ、原料のコウゾはこちらの気候では育たないからな」
「和紙の原料ってコウゾだけじゃないだろ?」

「繊維があればなんでもできないことはないが、油っぽかったり色が黒かったり、ざらざら過ぎたりで紙に適したものがないのだよ」
「それで買うしかないのか。ここまで運ぶと、運送費だけでも高くついちゃうわけだな」

「手のひらサイズのメモぐらいなら作れるのだけどな。ミノの和紙のように大きくてキレイなものは無理だ。その上、品質が違い過ぎる」
「クラークは本好きと言っていたが、自分でなにか書いたりするのか?」
「ああ、研究結果をまとめたり、ちょっとしたアイデアをメモしたり。俺には紙と鉛筆は必需品だ」

「そんなに和紙を必要としている人がいるなんてね。ミノなんてたくさん作るけど、使う人はほとんどどいないよ? なんとかしてあげたいものね、ユウ」

「とは言ってもな、和紙の原料はコウゾ、ミツマタ、ガンピのほぼ3つだ。それはどれも本州より南にしか生えていない。かといってパルプなんかは工程が複雑過ぎるし薬品もいる。とても手作業では無理だ。やはり、買ってもらうしかないな」
「ユウでも無理なのね」

「ああ、ってか、ミノの人はもっと紙を使うべきだと思うのだが。なあ、ミヨシ、お前もちょっとは勉強を」
「あ、そろそろ水から出さないと、せっせ、せっせ」
「せっせ、じゃねぇよ! 誤魔化しやがって」

「ユ、ユウだって筋トレすらできないじゃないの。適材適所でいいじゃいの」
「お前は適材適所の意味を辞書で引け。辞書なんかないけど! ところで俺は筋トレを毎日やっているぞ?」
「へぇ。どのくらいやってるの?」
「そ、それ、それはだな」

「腹筋1回と腕立て伏せ1回なのだヨ」
「それは筋トレじゃない。ただのストレッチよ!」
「や、やかましいわ」

「それより、水気を取ったらどうするの?」
「よーく水気を取ったら加熱した油に投入してくれ。油の温度が下がっちゃうから少しずつな」
「はーい。ほいっ、ほいっ、ほいっ」

「お待たせしました、所長、モナカです。ご注文の和紙をお持ちし……ま……した?」
「良く来たな。モナカとやら。おおすごい量の和紙を持ってきたではないか。ユウ、これだけあれば俺にも……あれ?」

「ああ、そいつは気にしないでくれ。魔王を見ると、一度は卒倒しないといけない性分なんだよ」
「しょ、性分なのか。それは俺にも直せそうにないな」

「草津の湯でも無理だろう。それより、揚げ終わったら並べるからその和紙をこちらにくれ」
「はい、私がお持ちします。すごい量ですね。全部縦に積んだら、魔王様の身長よりも高くなりそうです」
「頑張って運んでくれたな。目が覚めたら労ってあげよう」

「倒れる前に労るべきだと思うのだヨ」

「じゅぅぅぅ。ユウ。薄く切ったほうはそろそろ焦げ始めてるわよ。そろそろじゃない?」
「ある程度色がついたら出して、紙の上に並べてくれ。そしたら次のを入れて」
「はーい。ほいっとほいっとな」

「揚げ終わったら、塩を振りかけてとぱらりんこ。クラーク。できたぞ、試食してみろよ」
「ほぉ。なんだか食欲をそそる色だな。これがジャガイモとは信じられん。ぱりっ」

「どうだ?」
「ぱりっ、さくっ」
「いけるだろ?」
「ぱりっ、さくっ、ぱりっ、さくっ、ぱりっ、さくっ。ぱりぱりぱりぱりぱりざくざくざくざく」

「無我夢中かよ! 返事くらいしろよ」
「うまい!! これはうまい。おい、ケントもジョウも食べてみろパリパリ」
「では失礼して。ぱりっ。おお!」
「では私も。パリパリパリ。おおーすごいこれはおいしい!」

「だろ? これは売れるだろ……ってお前ら全部食うんじゃないぞ。俺たちの分も残しておけよ」

「いやパリパリ、そう言われてもだなボリボリ」
「ザクザクこんなおいしいものいままで食べたことありませパリ」
「パリパリ分かってはいるのですがポリポリ」
「パリパリパリ ヨ」

 ミノウも一緒になって食ってんじゃねぇ!!

「私とユウ用に2枚だけ残してあるから大丈夫よ」
「おおっ、そうか。さすがミヨシだ。自分で味見できないと不安だったんだよパリパリ。うん、まずますだな」
「パリ。わぁぁこれ、すごくおいしい。食べ始めたら止まらないわね。ポテトの甘みと油の旨みにこの塩味がすごくマッチしているわ。これは絶対に売れるわね。私ももっと食べたかったなぁ」

「じゃあ、そっちのスティックのほうも同じ要領で揚げてくれ。時間はもう少し長くなるだろう」
「はーい。どちゃっとほれほれ」

「ユウ」
「どした? クラーク」
「お代わり」

「あるかぁ!! お前らずっと見ていただろうが。あれだけのジャガイモを全部食いやがって。それにしても早過ぎないか?!」
「じゃあ、次のやつをはよ」

「はよって言えた義理か! 食い意地はってんのか。どんだけ気に入ったんだよ」
「うむ。ジャガイモだからまずいわけはないとは思っていたが、予想以上だった。これなら間違いなく俺は食べる」
「そうだろ? ……じゃねぇ! お前が食ってどうするよ、これは売るんだよ!!
「パリパリパリ ヨ」

「だからお前もひたすら食ってんじゃねぇぇ!」

 隠し持ってやがった。魔王の秘密の倉庫でもあるのかよ。

 ん? 待て待て。魔王の倉庫?

「ちょっと。ミノウ、ここへ来い」
「なんなのだパリパリ。我はまだお食事中きゅぅぅぅ」
「どうもなくなるのが早いと思ったら、お前、がめやがったな?」
「な、なんのことなのだヨパリ」
「それだよ、それ!! それ、どこに隠した?」

「我専用のアイテムボックスの中にきまっておるヨパリ」
「それはすごいな。それってどのくらい入るものなんだ?」
「うむ。ポテチの22枚分だヨ」

「少ないなおい!」
「あ、違うのだ。それはいま入っている分だったのだ。全部使えばもっと入ると思うのだヨ」
「22枚も隠し持っていやがった。それ全部使ったことあるのか?」

「それはないヨ。全部使う必要なんかなかったからな」
「そういうものなのか、さすが魔王ってのは桁外れの能力があるんだなぁ。ちょっと見直したぞ」

 ここでクラークをチラと見る。え? という顔をしたが、すぐに気がついたようだ。そしてそれはジョウにもケントにも広がって行く。

「俺にはそんなことできない。さすがは古の大魔王・ミノウであるな」
「それってものすごいレア能力ですよね。我が主にもない能力をお持ちだなんて、ミノウ様、素晴らしです」
「私はミノウ様にお会いできただけでも光栄です」

「そ、そうなのだ。それでいいのだ。それが本来の姿なのだヨ。見たか、ユウ。お主もこうあるべきなのだヨわははは」
「分かった分かった。そのアイテムボックスもお前もすごいよ。そんなすごいアイテムボックスにどのくらいの容量があるのか、試したことはないのか?」

「そうだなぁ。その昔大雨が続いてイルカイケの堤防が崩壊したことがあったヨ。それで大洪水になりかけたときに、池の水を全部ここに放り込んだヨ。おそらくそれが最大だヨ」

 池の水を全部抜いたのか。それがあったらテレ東も苦労しなかっただろうにな。魔王のアイテムボックス、パネェッす。クラーク、ジョウ、ケント。ご協力に感謝する。おかげでミノウボックスの容量が分かった。

「そんなすごい能力があるミノウを、いままでのように平社員扱いでは申し訳ないな。お前に役職をやろう」
「なんだ、役職ってポロポリ」
「ポテチの残りカスまで食べないように。そうだな、運搬部長という名称にしよう。部長職ってのは俺の次ぐらいに偉い役職だぞ」
「そう、そうか。それならまあ受けてやっても良いのだヨ」

「うむ、エースには俺から話しをしておくが、オウミには当面は内緒だぞ」
「分かったのだ。まかせるのだ。オウミなんかに負けないのだヨ」

 ちょろくて助かるよ魔王さん。流通に関しては悩み所だったのだ。ともかくホッカイ国は遠い。ジャガイモやトウモロコシは加工してから運ぶからまだいいとしても、小麦や甜菜は重いし嵩張るし。どうしたものかと思っていた。
 これで、ただで使える運搬人足の確保である。

「ん? ユウ? またなんか悪巧みな顔になっているのだヨ?」
「いや、そんな、ことはないだろあはははは」
「???」

「さて。もうなくなってしまったが、このポテチはこのぐらいうまいものだ。それに原料にも加工にもたいしたコストがかからないのが一番のメリットだろう」
「たしかに。これは食べ始めたらもう止められないな」

「こうすれば水分がほとんどないから腐る心配がない。湿気らないように運ぶだけだ。これを人口の多い地方で売れば、紙なんかいくらでも買えるくらい儲かるぞ」

「そ、そうか。それはありがたい。だけど、これをなにに詰める? ここには紙はないぞ?」
「それはビニール袋……あ、あるわけないか。袋といったら紙か。げっ。紙も量産が必要なのか?!」

「やはりそうだよな。ヘタすると、中身より袋のほうが高くなりそうだ」

 運搬はミノウにやらせるとしても、袋詰めでつまづくことになるとは。

 さぁ。どうすべぇか。

「まあ、それはともかくとして、こちらも揚がりましたよ。どうぞ、召し上がれ」

「「「おおっ、いただきますっ」」」

 みんなで一斉につまみ上げた。それは懐かしいフライドポテトの味であった。

 紙の量産か。できるだろうか。和紙って大量生産には向いてないんだよなぁ。でも人件費は安いからなんとかなるかな。しかし通気性が良すぎて湿気を防いではくれないような気がする。長期保存には向かないな。

 ぱくぱくぱく、うん、うまい。どないしよ。
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