異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第160話 首長・オオクニ

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「着いたようだな」 俺
「着いたノだ」 オウミ
「着いたの……ね?」 ユウコ
「着きましたよね?」 レクサス

「ほんとに、ここが首都、なのか?」
「ほんとに、ここが首都、なノだ」
「ウソでしょ?」
「事実です」

 そこは例えて言うのであれば。

「三畳一間の小さな下宿?」
「神田川のもの悲しいイントロが流れて来そうなノだ」
「なんですか、それ?」
「なにこの傷だらけのちゃぶだいと、貧乏くさいふすまに裸電球」

 転送先のあまりの貧相さに、俺たちは言葉を失った。その後ろでがたがたびしっという音がした。そこから出て声をかけたものがいた。

「あぁ、狭かった。良くいらっしゃいました、シキミ卿。私は案内役を務めさせていただきますタケノウチスクネと申します。どうぞ、よしなに」

 まさかそんなところに!! と思っていたそんなところ――押し入れ――のふすまを開けてその人は出てきた。

 エロっぽいねーちゃんである。うほうほうっほっほ。はいいとして、なんでそんなところから出てこないといけないのだ?

 身につけているのは、頭の宝冠の他にはシースルーの布だけである。それを全身にまとわせているだけの、街で見かけたらほとんど痴女の衣装だ。ぜかましでももうちょっと布があるぞ。

 過激なコスプレでもここまでするのはAVぐらいだろ、ってぐらいの過激さである。

 もちろん下着など着けているようには見えない。見ないふりをするのが男の嗜みだ、とか以前ミヨシが言っていたが、ここまでされると目のやり場に困ってしまう。

「って心で思いながらガン見するのは止めてください! あなたも貴族の一員なのですよ?」

 と言われても。なんで俺の心の中が分かったんだ?

 しかしその格好で押し入れにずっと入っていたのか。俺たちを出迎えるために? その姿を想像するとアホの子としか思えん。

 あ、ユウコ、そんな耳垢を見るような目を俺に向けるのやめて。これは人間の隠しきれない本性というもので。

「言い訳はいいからまずは自己紹介をするノだ」
「あっ、はぁ、は。どうも。えっと、たけちのつくねさん? ですか。俺はユウ、ですはい、シキミ卿って誰のことでどもです」
「ユウったら、なにをとっちらかっているのよ」
「こいつは初対面の人にはいつもそうなノだよ」

「あの、私は串に刺した肉団子ではありませんよ。言いにくいようでしたら、短縮してスクネとお呼びください」
「スクネさんですか。それだとスクナと紛らわしいから、タケチャンマンで」

「それ、全然短縮されていませんが!? むしろ長くなってますよね?!」
「こやつにはふさわしい名前なノだわはははは」

「あら、そちらの方はオウミ様ですね。良くお越しくださいました。あとでぶっ飛ばしますね」
「ああ、楽しみにしているノだ。返りにぼこぼこの討ちにしてやるノだ」

「返り討ちにしてやるだろ。あれ? お前ら知り合いなの? なんでそんな物騒な会話なの?」
「こやつは一応は神々に名を連ねるものなノだ」
「なるほど。それがどうした?」
「我は魔物の主なノだ。仲が良いわけがないであろう」

 人は土地に暮らし、魔物は魔を支配し、神々はそれを上から眺める三つ巴。それらがこの国の歯車ををぐるぐる回して痛っ。

「ユウさん、そのぐらいにしておかないと、あとで酷い目に会うかもよ?」
「分かった。ちょっと有頂天になってた」
「だからそれが危ないっての!!」

 平和そうに思えるこのニホンでも、細かい争いはあるものだ。俺は人間同士の戦争を一度止めたことがあるが、今度は魔王と神との戦争だったりして?

「お主の中では、止めたうちに入っているノか?」
「そういうことにしとこうよ」
「どちらにしても、この話では誰も死なないノだろ?」
「人は死なないが、魔王や神は死なないとは言ってないが」

「「ええええっ!!!??」」

「それはひどいノだ。我が死んだら大変なことになるノだ。絶対に止めるのだ。主人公は死んではいけなきゅぅぅぅ」
「誰が主人公だ、誰が」
「きゅぅ。すまぬ、少し盛ったノだ」

「なんだかものすごく危険な人を貴族にしてしまった気がするんですが、大丈夫なのかしら」
「さっきから気になっているんだが、誰が貴族だって?」
「シキミ卿。あなたですよ?」

「いつの間に?!」
「申請を出したのでしょ?」
「そんな覚え……あっ? レゴランド?」
「誰がデンマークのおもちゃパークですか!」

「いや、怒れた義理か! 俺は断ったよな?!」
「キャンセルが間に合わなかったのですよ。仕方ないでしょ!」
「なんで逆ギレ?!」

「と、とも、ともかく。シキミ卿はどうぞこちらに。お連れの方はその場で少しお待ちください。オウミ様はその辺でくたばっていてください」
「ぐぬぬぬぬノだ」

「ロゴスキー。お前も一緒に来い。ってかお前が中心になってこの話を聞け。どうやらお前の責任のようだぞ」
「レクサスです! もうなごりが欠片もありませんね。分かりましたよ、人嫌いのシキミ卿。私も行きますよ」
「人嫌いはほっとけよ!」

「では、おふたりをご案内いたします」

 タケチャンマンに続いて部屋を出ると、そこは見事な宮殿廊下であった。

「なんだ、普通に宮殿じゃないか。どうしてあの部屋だけわざわざあんなふうなんだ?」
「あそこは、国賓室となっております。調度品にもこだわり、貴族の人をお迎えするのにふさわしいたたずまいを醸し出して」

「出してない出してない。むしろ貧乏くささを醸し出していた」
「感じ方というものは人それぞれですので」

 それぞれ、ってレベルじゃないと思うのだがなぁ。調度品って、古道具屋でわざわざちゃぶ台を買ったのか? ありえーへんだろ。

 それにしても天井が高いな。5mはあるんじゃないか。壁には細かい細工がしてあって、これを作った人の財力がうかがえる。さすがは首都である。さすがは首長の住む宮殿である。

 そこの国賓を迎える部屋が三畳一間にちゃぶ台とはこれいかに???

「こちらです。お入りください」

 がらっ……がっがっがっ。

「しばしのお待ちを、ちょっと建て付けが悪くなってまして」

 宮殿で、建て付け?! 悪いだと?!

 がたぴしっ。ごとごと。ごごごごごごごご。

 なんだろう、この力任せに引き戸を開けた感。

「はぁはぁ。開きました。この先にオオクニ様がいらっしゃいます。どうか失礼のないように」

「おっ、すっげー。レンチョン。あれって龍の彫り物じゃないのか?」
「もう誰もいいです。天井絵ですか、確かに素晴らしいですな。彩色も美しいし造形も見事です」

「コホン! あー、あれはですね。天才画家・可能白菜の手によるもので、この宮殿の守り神なのですよ」
「えっと、なんでそこだけ漢字?」
「漢字じゃないと、シャレが分からないでしょ?」

 いや、そういう内輪ネタを聞いているわけじゃないのだが。

「あの龍の素晴らしいところは、我々がこの部屋のどこにいても、必ず我々のほうを向いていて」
「あー。はいはい。そういうのはもういいから。オオクニさんはどこ?」
「八方睨みの龍と呼ばれどんな悪も見逃さない……聞く気なしですか?!」

「カラクリを知ってると、別に不思議でもなんでもないからな。そういうことはもっと素朴な人にやってくれ」

「え? え? え? 不思議なんですけど!? どこに行ってもあの龍は私を睨んでいるんですけど!? 怖いんですけど!?」

 素朴なやつがここに……、なんでユウコは付いて来た?!

「おかしいノだ。あんなものいつのまに作ったノだ。我を睨んでいるノだ。かつてか絶滅させてやった怨みでもあるノか。ちょっと殴って来るきゅぅぅぅ」

「お前も来たのか。って龍を絶滅させたったってすごいことを言ったな、今」
「その昔、我のニオノウミで暴れまくってやがったので、滅ぼしてやったノだ。あれは痛快だったノだ」
「お前がすごいのは分かったが、たかが絵画に目くじら立てるな。あと、美術品に傷をつけたら俺が許さん」

「絵画? あれがか? だけどどこに行っても我を睨んでいるノだぞ? どして?」
「あとで説明してやるから、とりあえず大人しくしてろ。お前らは呼ばれざる客だぞ」

「良く来てくれた。シキミ卿。それにレクサス。大儀であった」
「おふたりとも、オオクニ様の御前です。頭を下げて」

(私たちは数に入ってないみたいですね、オウミ様)
(あのやろう、わざと無視しているノだ)

レクサス「ははぁぁ」 平伏。
俺   「つーん」

「あの、シキミ卿。ここには礼儀というものがあるのですよ。それができなければ野蛮人というレッテルを」
「知らねぇよ、そんなもん。貼りたければ貼れ。勝手に呼び出したのはそっちだ。礼を尽くせというなら、まずはそこから説明しろ。話はそれからだ」

「なんということを! 礼儀知らずにもほどがあります。オオクニ様、もう私がここで成敗してしまいしょう!」

「オウミ、やれ!」
「ノだ?」
「いやすまん、場の勢いで言ってしまった。そいつをやっつけろ、と命令したんだ」

「そうか。分かった。こい、タケチャンマン、我が相手だ!」
「誰がタケチャンマンだ! たかがサンマ……魔王の分際で、このこのこのこのこの」
「誰がサンマだ。やんのかやんのかぼかすかぼかすかぼか」
「ちょ、ちょっと、だから私を挟まないでぇ痛い痛い痛いってば」

 なんだろう、どこかで見たような図がここでも再現されている。

「ああ、そいつらはいつものことだ。気にせずにこちらに来てくれ、シキミ卿」
「ユウでいい。あんたが首長のオオクニさんか」

 こいつも背が高い。人型のときのカンキチと良い勝負だろう。たっぷりとした布をまとい、長い黒髪は後ろで縛っている。腰に差したロング・ソードに肩当ては、今すぐにでも戦に行けそうな出で立ちだ。

「そうだ。突然の呼び出に応じてくれてありがとう。頼みたいことあったのだ」

「ほほぉ。なにか困っていて助けて欲しいと?」
「そうなのだ。我があそこに出向くわけにはいかなくてな、それでこちらに来てもらったのだ。ご足労かけてすまなかった」

 なかなか感じの良い首長さんである。これなら話を聞いてやろうという気にもなる。

「ミノ国にはどうして来られないんだ?」
「ミノ国というよりは、魔王の支配地にはちょっと、な。ほら、そこのようになるから」

「やんのかやんのかこらぼかすかぽんぽん」
「やかましいわばしばしこのこのこの」
「あぁぁぁぁん、髪のが毛抜けちゃうぅぅぅ」

「なんで女の子が間に入って叩かれているのかは良く分からんのだが」
「あれはエルフの心意気とかなんとか」
「なんだそれは? まあいい、ともかく一度会ってみたかったのだ。数々の奇跡を起こしたというシキミ卿にな」

「別に奇跡を起こしたことはないが。それなら手紙でも良かったのに」
「そのときちょうど良いタイミングでこの申請書が出されたものだから、これをネタに呼び出そうと」

「つまり、トヨタ家の申請取り消しのほうの書類は、オオクニ様が握りつぶしたと、そういうわけですな」

 自分に落ち度はない、ということをことさらに強調して言いやがった。さすがレンチョンだ。

「まあ、そういうことだ。レンチョン殿」
「あなたまでそんな言い方を?!」

「それで俺に用事というのは?」
「その前に、まずはお主を正式に男爵にするところから始めようか」
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