【完結】神子召喚に巻き込まれ、騎士団長に溺愛された可憐な(?)オッサンです。

猫野 暇

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5、新しい就職先は

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「ふえぇ……」

 王都に入り、車窓から見えた景色でヨーロッパ風だとは想像はしていたが。遠くからでも見える王城は、本当に城だった。

「私とカーティスは、報告に登城しなければならない。そこで、フーマは私が戻るまで、アーダルベルト伯爵邸に居てほしい」
「えっと。もしかして、エグベアートって伯爵様?」
「まあ、伯爵といっても私の代だけで、領地も無いから大したことはない。実家は兄が継いでいるしな」

 実家はさらに上ってことか……。
 庶民の俺は、平民として慎ましやかに生活できる仕事が見つかれば十分だ。仕事先さえ紹介してもらえればいい。

「あの、俺は適当に降ろしてもらえたら、時間潰して待ってますよ? それに、住むところも探さないとですし」
「……駄目だ」
「へ?」
「王都といえど、危ない。ずっと観測地にいたフーマには慣れぬ場所だ。先ずは、私が案内するからそれまでは我慢してくれないか?」
「王都って、治安良くないのですか?」
「いや、まあ……そうだ」
「なら、お言葉に甘えます」


 
 ※※※
 


 ――そんな訳で。

 俺は今、アーダルベルト伯爵邸でお客様扱いをしてもらっている。

 メイド長のアメリーは、エグベアートの乳母だったらしく、執事はその息子さんバルウィン。つまり、エグベアートの乳兄弟だ。
 年齢を聞けば、エグベアートの3つ上で28歳。

「やっぱり、俺は完全にオッサンだな」
「どう見てもオッサンには見えませんよ」

 お茶を淹れながら、話し相手になってくれるバルウィン。使用人には敬語を使わないようにと強めに言われ、図々しくもタメ口にさせてもらっている。

「でも、34だけど俺」
「…………え?」
「だから、34歳」
「……随分と、お若く見えますね」

 視線を彷徨わせるバルウィンの反応が、ちょっと面白い。
 エグベアートにはまだ言ってないし、知らないのは当然か。

「可憐なオッサンらしい」
「っぶ。何ですかそれ?」
「カーティス副団長に可憐て言われたから。エグベアートなんて、最初、俺を未成年だと思ったらしい」

 ちなみにカーティスの呼び捨ては駄目らしい。

「左様でしたか」

 ツボったのか、バルウィンの肩はまだ震えている。
 この国の成人も18歳らしいが、俺が初っ端に子供扱いされたことから、それより下……かなり若く見えるようだ。平坦な顔だから仕方ないが。向こうの世界でも、海外で日本人は若く見られるしな。

「だから、一人で街歩きしようと思ったんだけど。そんなに王都って物騒なのかな?」
「いえ、王都は治安もよく安全ですよ」
「は?」
「安全とはいえ、貴族のご令嬢はお一人では危ないです。誘拐とかの危険性はゼロではありませんから」
「じゃあ、やっぱり平民のオッサンは問題ないんじゃ?」
「ですが、フーマ様は可憐なオッサンでいらっしゃいますから。我が主人は、フーマ様とデートがしたいのでしょう」
「でえと⁉︎ ただの職紹介だけど。それに男同士だし」
「この国では、同性の伴侶を選ぶのは普通のことです。歳の差なんて、可憐さが帳消しにしてくれますよ」
「俺的には、可憐より格好いいと言われたいんだけど」

「おやおや」と、バルウィンは笑みを浮かべた。

 俺がお茶を飲み終えたタイミングで、バルウィンは他の使用人を紹介してもいいかと訊く。
 たかが一泊するだけの客人に、使用人の紹介だなんて、貴族社会とはよく分からない。まあ、郷に入っては郷に従えか。

 紹介された使用人は多くなく、みんな結構な年齢だった。若者はバルウィンのみで、他は実家の侯爵家で、エグベアートが幼い頃から仕えていた人ばかり。
 バルウィン曰く、若い新参者は男女問わず、魅力的なエグベアートに変な欲を持ってしまうのだとか。あれだけの美形が間近にいたら、さもありなんだ。

「主人を性的な目で見るなんて、以ての外ですからね」

 言い方は穏やかだが、バルウィンの目は冷え冷えとしていた。

「大丈夫、俺は見てないよ!」

 宿屋のアレは不可抗力だ。

「フーマ様は例外なのでお気になさらず。寧ろ、そういった目で見ていただいた方が良いかと」
「な、なんで⁉︎」
「ふふっ、冗談です。それでは、お泊まりいただく部屋にご案内いたしますね」

 揶揄われたのか……。
 冗談だとわかっているのに、なんだか胸がソワソワした。

「こちらになります」
「は、え? ここ⁉︎」
「はい。お荷物もそちらに。お隣が、エグベアート様の寝室になりますので、何かご用のさいはお呼びください」

 こんな豪華な部屋で、俺は眠れるだろうか……。



 ※※※


 
 夕食時になると、呼びに来たバルウィンに連れられ、食堂に向かう。
 だだっ広い食堂には、エグベアートが待っていた。

「おかえりなさい」
「ただいま、フーマ」

 席に着くと、次々と料理が運ばれてくる。

「この邸はどうかな?」
「凄く大きくてビックリしました。でも、みんな良い人ばかりで過ごしやすかったです」
「それはよかった。仕事の件だが、フーマには魔素の耐性があるから、私の仕事を手伝ってくれないだろうか?」
「え⁉︎」
「私というより、第五騎士団の調査隊だ。観測者と似たようなものだが、私がフーマの所に行ったように観測地に向かう時に同行してほしい。毎日ではないし、給与は国から出る」

 国からってことは、公務員みたいなものか。
 だけど、俺は王城には行きたくない。

「派遣のようなものだから、フーマが登城する事は一切ない。一緒に行動するのは、私と第五の数名だけだ。観測地の奥まで入れる者は、私以外いないからな……どうだろうか?」

 そういえば、カーティスはエグベアートに同行できないのを悔しがっていたな。一人だけで向かうエグベアートを心配していた。
 浄化しろってことじゃないし、俺はあのヘドロに浸かっても問題はない。だったら、仲良くなれたエグベアートの手伝いで稼げるなら、いい話じゃないか。

「本当に、王城へは行かなくてもいいですか?」
「もちろんだ。フーマは平民だから、入りたくても無理なんだ」

 よっしゃ!

「だったらやります。あ、じゃあ明日は、住む場所だけ探すってことになりますね」
「いや、フーマはここに住んでほしい」
「はい?」
「重要な任務だし、一人では体調管理が心配だ。家賃を気にしているなら、仕事のない日はバルウィンを手伝ってくれればいい」
 
 伯爵邸の使用人は、ほとんど高齢。若者がバルウィンだけのせいか、色々と雑用が大変らしい。

「えっと、そういう事でしたら。お世話になります」
 
 こうして俺は、異世界召喚されて3日で職と住まいを手に入れてしまった。順調すぎて怖いくらいだ。
 
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