She is So Cute! ~彼女は送球人~

オフィス景

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7 思い出したくない試合 ~追想~ 1

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「ホントにここまで来たんだな」

 キャプテンの橋上が興奮を隠せない口調で言った。

「マジで夢みてえだ」

「まだ終わったわけじゃねえぞ」

 厳しい口調で言ったのは健介である。

「ここで満足して気ぃ緩めたら、ボコボコにやられるぞ」

 決勝の相手は紫明学院。中学ハンドボール界の絶対王者にして今大会も優勝候補の筆頭だと目されていた。決勝まで全ての試合をダブルスコア以上の圧勝で勝ち上がって来ていた。

 対するは今大会の台風の目、地方の公立校でありながら堅守速攻を武器に破竹の勢いで駆け上がって来た朝生中学である。

 下馬評では当然のように紫明学院有利であり、朝生中学の関係者でも諦めムードが漂う始末であった。

「まさかここまで来れただけで満足なんて思ってるヤツはいねえだろうな」

 朝生中学決勝進出の立役者である健介は、周りが「少し落ち着け」と言いたくなるくらい入れ込んでいた。

 力みすぎると大体ロクな結果にはならないのだが、今大会出色の出来を見せているGK健介の力なくして紫明学院と渡り合うことは考えられなかったので、変に健介のやる気を削がないよう、誰も何もいうことはなかった。

 そして、試合開始。

 大方の予想通り紫明学院の猛攻が朝生中学を襲う。サイド、ポスト、ロング、様々なシュートが打ち込まれる。ディフェンスはほとんど機能せず、いいようにシュートを打たれまくった。

 一方的な展開になってもおかしくないところだったが、そこに文字通り立ちはだかったのが健介だった。ゴール前に仁王立ちした健介は、驚異的なパフォーマンスで紫明学院のシュートの雨を弾き返し続けた。

 結果、前半が終わった段階でのスコアは4ー3と均衡したものになっていた。とてもハンドボールの試合とは思えないロースコアゲームである。

「いけるいける。ちゃんと勝負になってるって」

 朝生中学のロッカールーム。手を叩きながらメンバーを鼓舞しているのは健介である。試合前から高かったテンションは自らの絶好調なプレーにより更に高まり、あとひとつふたつビッグセーブをすれば天元突破しそうな勢いであった。

「このまま食らいついてけば絶対ワンチャンあるって」

「そうだな。相手は強えぇけど、こっちには健介がいるんだからな」

「だよな。いくら紫明でも健介からは簡単には点取れねえだろ」

 思わぬ善戦に盛り上がる選手たち。実際に通用しているのは健介だけなのだが、そんなことは関係ない。大事なのは、自分たちがあの最強紫明学院といい勝負をしているという事実。

 朝生中学の選手たちは、割りといい精神状態で後半戦を迎えた。

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