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9 思い出したくない試合後
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決勝戦こそ惨敗してしまったものの、普通に考えれば、全国大会で準優勝という結果は十分に誇れるものである。
夏休み明けの全校集会では表彰され、ちやほやされた。決勝戦でへし折られたプライドを癒すには十分で、部員たちは調子に乗りつつあった。
「考えてみりゃ全国二位ってすげえことだよな」
「ホントだよ。ハンド始めた時は全国なんて考えもしなかったのにな」
「まぁ、ほとんど八木の手柄だけどな」
この場にはいない健介が話題に上る。
「そうかもしれんけど、俺たちだって捨てたもんじゃねえと思うぞ。八木がいくら頑張ったって究極のところ点を取らなきゃ勝てねえんだから」
「おう、そうだよな。周りは八木ばっかり持ち上げるけど、俺たちがいなけりゃあそこまでいけてなかったよな」
「そうだそうだ」
この時、メンバーの頭の中からは、決勝戦における醜態は見事なまでに忘れ去られていた。
「なあ、高校行ってもハンド続けるよな?」
「ああ」
「…八木とさ、別のところに行かないか?」
「あいつなら都会の強いところからスカウト来てるんじゃなかったか?」
「それがな、断る気らしいんだよ」
「何で!?」
「普通の学校で強いところを倒したいとか言ってるらしいぞ」
「バカか!?」
「要らんこと言ってねえで、紫明にいきゃあいいじゃねえか」
部員たちは総じて健介の選択に対して否定的だった。
「俺もうあいつと一緒にやるの嫌だぜ」
「俺もだ。あいつがいると、俺たちがどれだけ頑張っても全部あいつの手柄になっちまうからな」
話が嫌な方向に向かい始める。だが、それを自覚し、修正しようとする者がいないせいで話はエスカレートしていってしまう。
「だいたい、俺は前からあいつが気にくわなかったんだ」
「そうそう。自分がちっと上手いからって上から物言いやがってよ」
「あいつなんてハンド取ったら何も残んねえくせに偉そうにしやがってよ」
ここまで来ると、愚痴ですらない。単なる陰口だ。
更に陰口大会が盛り上がろうとした時、教室の扉が勢いよく開かれた。
「「「!?」」」
部員たちは焦った視線を向けたが、そこにいたのはクラス委員の成瀬琴美だった。
「何だ、委員長かよ」
「焦らせんなよな」
「何か聞かれて困るような話をしてたのかしら?」
「っ!?」
痛いところを衝かれた部員たちが顔をしかめる。
「う、うるせえな。委員長には関係ねえだろ」
「その台詞、悪役のテンプレね」
「誰が悪役だ!」
「自覚のないところも悪役そのものね」
琴美は憐れみの目で部員たちを見た。
「功労者の悪口をその目の前で言うって行為が第三者の目にどう映るか、少し考えればわかるんじゃないかしら」
「なーー」
部員たちの肩がギクリと震える。
「滅茶苦茶カッコ悪いわよ。今のあなたたち」
「ま、待てよ。俺たちゃ目の前で悪口なんてーー」
「八木くん、みんな聞いてたわよ」
「え!?」
部員たちの顔から血の気が退く。
「ショックだったと思うわよ。信じてた仲間に裏切られたようなものだもんね。決勝戦で負けた時よりへこんでたように見えたかな」
「嘘だろ……」
自分たちが聞かれたらまずい話をしていた自覚はある。この次どんな顔をして健会えばいいのか。
だが、その心配は必要なかった。
翌日、退部届を出した健介は部員たちと交わろうとはしなかったのだ。
夏休み明けの全校集会では表彰され、ちやほやされた。決勝戦でへし折られたプライドを癒すには十分で、部員たちは調子に乗りつつあった。
「考えてみりゃ全国二位ってすげえことだよな」
「ホントだよ。ハンド始めた時は全国なんて考えもしなかったのにな」
「まぁ、ほとんど八木の手柄だけどな」
この場にはいない健介が話題に上る。
「そうかもしれんけど、俺たちだって捨てたもんじゃねえと思うぞ。八木がいくら頑張ったって究極のところ点を取らなきゃ勝てねえんだから」
「おう、そうだよな。周りは八木ばっかり持ち上げるけど、俺たちがいなけりゃあそこまでいけてなかったよな」
「そうだそうだ」
この時、メンバーの頭の中からは、決勝戦における醜態は見事なまでに忘れ去られていた。
「なあ、高校行ってもハンド続けるよな?」
「ああ」
「…八木とさ、別のところに行かないか?」
「あいつなら都会の強いところからスカウト来てるんじゃなかったか?」
「それがな、断る気らしいんだよ」
「何で!?」
「普通の学校で強いところを倒したいとか言ってるらしいぞ」
「バカか!?」
「要らんこと言ってねえで、紫明にいきゃあいいじゃねえか」
部員たちは総じて健介の選択に対して否定的だった。
「俺もうあいつと一緒にやるの嫌だぜ」
「俺もだ。あいつがいると、俺たちがどれだけ頑張っても全部あいつの手柄になっちまうからな」
話が嫌な方向に向かい始める。だが、それを自覚し、修正しようとする者がいないせいで話はエスカレートしていってしまう。
「だいたい、俺は前からあいつが気にくわなかったんだ」
「そうそう。自分がちっと上手いからって上から物言いやがってよ」
「あいつなんてハンド取ったら何も残んねえくせに偉そうにしやがってよ」
ここまで来ると、愚痴ですらない。単なる陰口だ。
更に陰口大会が盛り上がろうとした時、教室の扉が勢いよく開かれた。
「「「!?」」」
部員たちは焦った視線を向けたが、そこにいたのはクラス委員の成瀬琴美だった。
「何だ、委員長かよ」
「焦らせんなよな」
「何か聞かれて困るような話をしてたのかしら?」
「っ!?」
痛いところを衝かれた部員たちが顔をしかめる。
「う、うるせえな。委員長には関係ねえだろ」
「その台詞、悪役のテンプレね」
「誰が悪役だ!」
「自覚のないところも悪役そのものね」
琴美は憐れみの目で部員たちを見た。
「功労者の悪口をその目の前で言うって行為が第三者の目にどう映るか、少し考えればわかるんじゃないかしら」
「なーー」
部員たちの肩がギクリと震える。
「滅茶苦茶カッコ悪いわよ。今のあなたたち」
「ま、待てよ。俺たちゃ目の前で悪口なんてーー」
「八木くん、みんな聞いてたわよ」
「え!?」
部員たちの顔から血の気が退く。
「ショックだったと思うわよ。信じてた仲間に裏切られたようなものだもんね。決勝戦で負けた時よりへこんでたように見えたかな」
「嘘だろ……」
自分たちが聞かれたらまずい話をしていた自覚はある。この次どんな顔をして健会えばいいのか。
だが、その心配は必要なかった。
翌日、退部届を出した健介は部員たちと交わろうとはしなかったのだ。
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