異世界肉人 ～モンスターの肉、UMEEEE～

15 ご褒美のハンバーグ

「いただきます」

　期待にワクワクドキドキした表情で、カレンさんはハンバーグにナイフを入れた。

　途端に溢れ出す肉汁。

「わあ、何か溢れてきた」

「それ、肉の旨味だからね」

「え、そんな、もったいないじゃないですか」

「大丈夫。ちょっと行儀は悪いかもしれないけど、最後にパンで拭えばいいから」

「なるほど。それなら安心です」

　そう言って、カレンさんは一口大に切ったハンバーグを口に運んだ。

「んんっ!?」

　目を見開いて硬直する。

　カレンさんが美味しいものを食べた時の反応だ。

　ということはーー

　両耳を塞ぐ。



「おいしーーっ!!」



　…塞いでなかったら、鼓膜が破れてたかもしれん…とりあえず脳は揺れた。

「何ですか、これっ!?   美味し過ぎるっ!!」

　一心不乱。

　切。食。切。食。切。食。切。食。切。食。

　あっという間に最後の一切れ、というところでカレンさんは我に返った。

　フォークに刺さった一片を悲しそうに見て、次にその切ない瞳を俺に向けてきた。

　…わかったよ……

　まだ手つかずだった自分の皿をカレンさんの前に押しやると、にこぉっと満面の笑みを見せた。

　今日はよく頑張ったもんな。いいよいいよ、心ゆくまで食べてくれ。

　追加のハンバーグを焼き始める。

　今度は少し遊んでみよう。一枚のパティの中にチーズを仕込む。ナイフを入れた時に、肉汁と共にトロトロにとろけたチーズが溢れ出してくるという寸法だ。



「にゃあああああぁーーっ!?」



　なぜか、猫になった……

　そして、チーズをたっぷり絡めたハンバーグを一口食べたらーー壊れた。

「んぐっ!?」

　変な声を出したと思ったら、目が焦点を失った。

　吐く息が荒くなる。

「だ、ダメよ、ゲンさん。こんなの、すごすぎる…わたし、ダメになっちゃう……」

　…何か、妙にエロいんですけど……

　上気した顔で身をくねらせるもんだから、余計にそう見える。

「ダメになっちゃうならやめとくか？」

「ダメェ…やめないでぇ……」

　だから、エロいっての……

　何だかいけないことをしているような気分になってしまう。

「あー、もう、幸せ過ぎる」

　三枚目をきっちり平らげて、カレンさんは大満足のご様子だ。

「お腹いっぱい」

「そうか。じゃあこれは俺が食うか」

「何それ？」

「和風おろしハンバーグ、って言ってもわかんねえよな。大根おろしとポン酢でさっぱり食べられるハンバーグだ」

「いただきます」

「お腹に隙間はできたのか？」

「バッチリ」

　嬉しそうにサムズアップする。

　で、一口食べたら、今度は泣き出した。

「何事だ!?」

「いくらでも入るぅーっ」

「泣くな！」

　…疲れる……

　結局、おろしハンバーグをもう一枚食べたので、都合五枚、約一キロを食べたことになる。

　よく入るもんだ。

「これで明日も頑張れる」

　ニコ面で力こぶを作るカレンさん。

　頼りにしてるぜ、ホント。