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23 故郷の味(アスカ視点)
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さっきから心臓の高鳴りが治まらない。身体を巡る血液のスピードは明らかに異常だ。
まさかこんなところで同じ転生者に会えるなんて、夢にも思わなかった。しかも料理人で、向こうの料理を作ってくれるという。
これで舞い上がるなというのは無理だ。どんなに引き締めようとしても口元が緩んでしまう。それを何とかして堪えようとするものだから、相当微妙な顔になってしまっているのは自覚してる。
部下が怖そうにこっちをチラチラ見てるけど、違うよ、別に怒ってないよ?
こんなことなら、厳しい上官の顔なんてしなきゃよかった。そうすれば期待を素直に表情に出せたのに。
目の前でゲンタさんが振るフライパンからは、何とも食欲をそそる匂いが立ち上っている。
ああ…この醤油の焦げる香ばしい香りをもう一度嗅ぐことができるなんて……
実を言えば、こっちの世界で一番不満なのが食事だった。
食材は悪くないと思うんだけど、調理法と調味料が未発達なせいで、単調な料理にしかならないのだ。決して不味くはないけど飽きてしまう。それがこっちの食事情だった。
何度要望を出そうとしたかわからない。でもそれが無い物ねだりなのはわかっていたし、わたしの他に不満を抱いている人がいない中で声を上げるのはいかにもわがままに思えたので自重していたんだけどーー
ぼーくの我慢がぁーいつぅか 実をむぅすびぃー美味しいにぃくがぁちゃんとたぁべれますぅよにぃ
大好きな一青窈さんのハナミズキの一節が……なんか自分でもかなりヤバいと思えてきた……
「おまたせいたしました。オークの生姜焼きです」
とっても可愛らしい店員さんが配膳してくれた。
Oh!
まずヴィジュアルのインパクト。
メインの生姜焼きーー豪快に盛られた肉は美しい艶の衣を纏い、絶対的な存在感を醸し出している。この肉に間違いなどあろうはずがない。
付け合わせのせんキャベツーー凛々しい。シャキッと音が聞こえてきそうな凛々しさ。これも間違いない。
もうひとつの付け合わせ、ポテトサラダーーこれ、何気に嬉しい。向こうにいたときはあってあたりまえだったマヨネーズの希少価値を痛感していたから、これ、ご馳走。
ほんのちょっとでいいからナポリタンがついていたらわたし的には完璧だったけど、そこまで贅沢は言うまい。
そして、暴力的なまでに強烈な香り。醤油に生姜がブラスされ、鼻をガツンと刺激してくる。この香りに抗えるはずがない。全面降伏だ。
ああ、これ、絶対美味しいよ……
何だかもったいなくて、手をつけられない。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ…本当に生姜焼きだぁって思ったら……」
「何だったらおかわりも作るから、いっぱい食べてよ」
「はい。いただきます」
合掌してからフォークでお肉を一口食べる。
「!?」
きた。
ガツンときた。
肉汁に醤油と生姜が絡み、絶妙な味を作り出している。あっちにいたときによく食べた生姜焼きだ。
これだ……この味だ……
ドバッと涙が溢れた。
泣きながら、魂の叫びが迸った。
「おいしいーーーっ!!」
ブレーキが壊れた。
もう行く。行くとこまで行く。
誰に何を言われようと気にしない。食べたいように食べる。
肉、肉、肉、肉、キャベツ、肉、肉、肉、ポテサラ、肉、肉、肉、肉ーー
「おかわり!」
「はいよ」
もう準備してくれてたみたいで、すぐに出てきた。そしてーー
「これ、ついてた方がよさそうだよね」
今度のお皿には鮮やかなオレンジ色のナポリタンも乗っていた。
ああ、ここに神様がいます。どうして彼はわたしの欲しいものがわかるのでしょうか。
もちろん喜んでいただいた。これまた記憶を刺激する味だ。
ひとつひとつがドストライクで、手が止まらない。
食事でこんなに幸せな気分になるのって、どれくらいぶりだろう。
この生姜焼きは幸せの味だ。
まさかこんなところで同じ転生者に会えるなんて、夢にも思わなかった。しかも料理人で、向こうの料理を作ってくれるという。
これで舞い上がるなというのは無理だ。どんなに引き締めようとしても口元が緩んでしまう。それを何とかして堪えようとするものだから、相当微妙な顔になってしまっているのは自覚してる。
部下が怖そうにこっちをチラチラ見てるけど、違うよ、別に怒ってないよ?
こんなことなら、厳しい上官の顔なんてしなきゃよかった。そうすれば期待を素直に表情に出せたのに。
目の前でゲンタさんが振るフライパンからは、何とも食欲をそそる匂いが立ち上っている。
ああ…この醤油の焦げる香ばしい香りをもう一度嗅ぐことができるなんて……
実を言えば、こっちの世界で一番不満なのが食事だった。
食材は悪くないと思うんだけど、調理法と調味料が未発達なせいで、単調な料理にしかならないのだ。決して不味くはないけど飽きてしまう。それがこっちの食事情だった。
何度要望を出そうとしたかわからない。でもそれが無い物ねだりなのはわかっていたし、わたしの他に不満を抱いている人がいない中で声を上げるのはいかにもわがままに思えたので自重していたんだけどーー
ぼーくの我慢がぁーいつぅか 実をむぅすびぃー美味しいにぃくがぁちゃんとたぁべれますぅよにぃ
大好きな一青窈さんのハナミズキの一節が……なんか自分でもかなりヤバいと思えてきた……
「おまたせいたしました。オークの生姜焼きです」
とっても可愛らしい店員さんが配膳してくれた。
Oh!
まずヴィジュアルのインパクト。
メインの生姜焼きーー豪快に盛られた肉は美しい艶の衣を纏い、絶対的な存在感を醸し出している。この肉に間違いなどあろうはずがない。
付け合わせのせんキャベツーー凛々しい。シャキッと音が聞こえてきそうな凛々しさ。これも間違いない。
もうひとつの付け合わせ、ポテトサラダーーこれ、何気に嬉しい。向こうにいたときはあってあたりまえだったマヨネーズの希少価値を痛感していたから、これ、ご馳走。
ほんのちょっとでいいからナポリタンがついていたらわたし的には完璧だったけど、そこまで贅沢は言うまい。
そして、暴力的なまでに強烈な香り。醤油に生姜がブラスされ、鼻をガツンと刺激してくる。この香りに抗えるはずがない。全面降伏だ。
ああ、これ、絶対美味しいよ……
何だかもったいなくて、手をつけられない。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ…本当に生姜焼きだぁって思ったら……」
「何だったらおかわりも作るから、いっぱい食べてよ」
「はい。いただきます」
合掌してからフォークでお肉を一口食べる。
「!?」
きた。
ガツンときた。
肉汁に醤油と生姜が絡み、絶妙な味を作り出している。あっちにいたときによく食べた生姜焼きだ。
これだ……この味だ……
ドバッと涙が溢れた。
泣きながら、魂の叫びが迸った。
「おいしいーーーっ!!」
ブレーキが壊れた。
もう行く。行くとこまで行く。
誰に何を言われようと気にしない。食べたいように食べる。
肉、肉、肉、肉、キャベツ、肉、肉、肉、ポテサラ、肉、肉、肉、肉ーー
「おかわり!」
「はいよ」
もう準備してくれてたみたいで、すぐに出てきた。そしてーー
「これ、ついてた方がよさそうだよね」
今度のお皿には鮮やかなオレンジ色のナポリタンも乗っていた。
ああ、ここに神様がいます。どうして彼はわたしの欲しいものがわかるのでしょうか。
もちろん喜んでいただいた。これまた記憶を刺激する味だ。
ひとつひとつがドストライクで、手が止まらない。
食事でこんなに幸せな気分になるのって、どれくらいぶりだろう。
この生姜焼きは幸せの味だ。
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