婚約破棄? 上等じゃない! 王妃教育が完璧だから恐れるものは何もないわ!

オフィス景

文字の大きさ
4 / 8

4 無邪気な発言は時に残酷

しおりを挟む
 旅程は順調だった。

 王都から乗り合い馬車に乗り、とりあえず国境の街を目指す。見ず知らずの人たちが同乗する馬車に乗るのは初めてだったので、色々新鮮で楽しい。

 中でも十歳くらいのマイアちゃんという女の子とは馬車が出発してから一時間もかからないうちに仲良くなった。

「どうやったらお姉ちゃんみたいに綺麗になれるの?」

 そんな嬉しいことを聞いてくれたのをきっかけに話をするようになり、すぐに仲良くなった。

 で、仲良くなったのは良かったんだけど……

「あたしね、絶対に綺麗になりたいの」

「何で?   今でも十分に可愛いと思うけど」

 あたしの目から見ても、マイアちゃんは将来が楽しみな美少女だ。

「あたしね、婚約破棄されたくないの」

「…………………え……………………?」

「この前、王子様の婚約者さんが婚約破棄されたって聞いたの」

「あー、うん……」

 まさかここでその話題が出るとは思ってもいなかったので、びっくりしてしまった。反応も鈍いものになってしまう。

「婚約者さんの顔は知らないんだけと、お姉ちゃんくらい綺麗な人だったら、そんなことにはならなかったと思うの」

 いやー、そんなことはないと思うよ。何せ婚約破棄されたのってあたしだから。

 もちろんマイアちゃんに悪気はないんだろうけど、結構刺さってきた。

 ここであたしが当事者だとは言いにくい。

「うん、マイアちゃんならきっとあたしなんかよりずっと綺麗になれるよ」

 そんなちょっと乾いた答えしか返せなかった。

「ホント!?」

 それでもマイアちゃんには嬉しい答えだったらしい。無邪気に喜んでいる。

 …何だろう、モヤモヤする。

 何かぶつけるものが欲しいなー、と思い始めた時、馬車の外が騒がしくなった。

「どうしたのかしら?」

 外から「盗賊だ」という声が聞こえてきた。

 馬車には冒険者の護衛がついている。それでも盗賊の人数によっては手を貸した方がいいかもしれない。

 というか、貸したい。

 ちょっとやさぐれた気分になっていたので、暴れたかった。

 馬車が止まったので、窓から外の様子を伺う。

 盗賊の数は思っていたより多かった。窓から確認できるだけで二十人くらいいる。

 対するに馬車の護衛は五人。状況は厳しいと言わざるを得ない。

 やっぱり手が必要ね。

 剣を手に馬車の外に出る。

「危ないぞ。中にいてくれ!」

 護衛の一人が声をかけてくる。

「手伝いますよ」

「何を馬鹿なーー」

「とりあえずこっちの一角は任せてください」

 あたしが前に出ていくと、盗賊どもは下品な口笛を吹き鳴らした。

「ひゅうー、いい女がいるじゃねえか」

「今回は大当たりだな!」

「姉ちゃん、たっぷり可愛がってやるぜ」

「黙りなさい」

 言葉と共に威を発する。

 当てられた盗賊は、ビクン、と身体を震わせた。

「運が悪かったわね。あたしが乗り合わせた馬車を襲うなんて」

 無造作に間を詰める。

 間合いに入った瞬間、剣を振る。

 盗賊が三人、声もなく倒れた。

「な、何をしやがった!?」

「盗賊退治に決まってるでしょ」

 言い終わるより早く、更に二人を斬り倒す。

 その後、戦いはあたしの圧勝で終わった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

思いを込めてあなたに贈る

あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。

【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

初恋の終わりは

あんど もあ
ファンタジー
おてんばで無邪気な少女と婚約した、第一王子の私。だが十年後、彼女は無表情な淑女となっていた。その事に耐えられなくなって婚約解消したのだが、彼女は「これからは、好きな物は好きだと突き進ませていただきます!」と言わんばかりに豹変! そんな彼女と反対に、私には問題が降りかかり……。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...