赤い糸

オフィス景

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3 告白

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 「君の運命の相手が、私では駄目だろうか?」


 
「!?」

 想像を遥かに超えるトンデモ話に、裕治は絶句してしまう。

 聞き間違いを期待したのだが、薫は熱い視線を注いできている。

 今更ながらに、裕治は右手に握った封筒を見た。

「…これは…まさか……」

 はにかみながら薫が頷く。

 裕治の背筋を悪寒が駆け上がった。

「どうだろう…駄目だろうか……?」

 不安げな表情はともすれば庇護欲をかき立てるが、ここでの迂闊な選択はその後をずっと台無しにしかねない。

「だだだだだだ駄目に決まってんだろ!」

 ドラムロールのようにどもりながら、裕治は叫んだ。ここだけは譲れない。自分にそういう趣味はないのだ。

「何考えてんだ、馬鹿。俺は男だぞ!」

「わかってる」

 薫は真剣な表情で頷いた。

「おまえだって男だろうが」

「それなんだけど……」

「何だ、まだ何かあるのか?」


 
「今まで騙していて悪かったと思うのだが――実は、私は女なんだ」


 
「はあ?」

「いきなり信じてくれと言っても難しいかもしれないが、私は女なんだ」

「って、オカマってことか?」

「違う!」

「え? でも」

「だから、私は女なんだと言ってるだろう」

「わかった」

 裕治はイタいものを見る目で頷いた。

「おまえの心が乙女だということはよくわかった。でもあきらめてくれ。俺は生物学的にも女じゃなきゃ駄目なんだ」

「生物学的にも女だ」

 薫は言うが、はいそうですかと信じられる話でもない。

「…信じて、もらえないか……?」

 今にも泣きだしそうな顔。

「…どうすれば信じてもらえる?」

「どうもこうも……」

 正直に言えば、これ以上この話につきあいたくない。

 その思いは表情にも表れていたらしい。薫の顔がさらに悲しげに歪む。

 薫はシャツのボタンに手をかけた。

「お、おい?」

 戸惑う裕司の前で薫は全てのボタンを外すと、シャツをはだけた。

 そこにはさらしがきつく巻かれていた。

「え?」

 思わずまじまじと見つめてしまう。

 そうすると、さらしの下にはそれなりのボリュームがあるものが隠されていることがよくわかった。

 言葉を失っていると、頬を染めた薫がシャツの前を合わせた。

「あんまり見ないでくれ」

「あ、わ、悪ぃ」

 毒気を抜かれた顔で裕司は謝る。

「…これでどうだろうか?」

「…マジなのか?」

 信じられない、という思いが強い。裕治的にはキツネかタヌキに化かされたような気分だった。
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