64 / 179
64 魔族との激闘
しおりを挟む
「それじゃあ、いつも通りいってみますか」
リョウさんは大きく息を吸い込んだ。
「来いや、おらあああぁっ!」
同時に魔族に向かって駆け出す。
が、魔族は全く威圧に惑わされてはいなかった。俺は真正面から突っ込んでいく形になってしまう。
「やべっ」
無造作に振られた右腕は、かろうじて剣で受けることができた。が、その威力までは吸収しきれず、大きく後ろへ飛ばされた。
「くうっ」
何とか足から着地はしたものの、体勢が整う前に魔族が迫る。
振りかぶった拳が炎を帯びる。
「うおっ!?」
身を投げ出して拳をかわす。あんなの食らったら、治癒魔法かけてもらう前に死んじまいそうだ。
紙一重のかわし方ができないと、反撃のきっかけが掴めない。
「コータロー!」
シルヴィアの心配そうな声が聞こえたが、それに答えている余裕はなかった。
向こうは向こうで、こっちの動きが激しすぎて援護のタイミングを掴めずにいるようだ。
図らずも俺と魔族のタイマンになってしまっていた。
今のところスピードだけはほんの少しだけ上回れているので致命的な事態にはなっていないが、このままではじり貧だ。
にしても、魔族の体力ってのは底無しか。あれだけ激しく動きまわっても、まったく動きが衰えない。
こうなると、頼りはシルヴィアの治癒魔法しかない。体力の回復をしてもらって、魔族が隙を見せるまでついていく。気が遠くなりそうだが、できなきゃ死ぬのだから、やるしかない。
気のせいか、魔族からは愉しげな気配が伝わってくる。
こっちは一発だってもらうわけにはいかないから、とにかく必死だ。
ふと魔族が動きを止めた。大口を開けて俺に向かって何かを叫ぶが、魔族の言葉なんて理解できるはずがない。伝わったのは魔族がこの闘いを心から楽しんでいるということだけだ。
ふざけんな。こっちはこれっぽっちも楽しかねえよ。
ここから魔族の動きは一段ギアが上がった。
全力じゃなかったんかよ!?
本気でゆとりがなくなった。30センチでかわせていたところが10センチになった。
炎を帯びた拳相手に10センチは、かわせているとは言いがたい。炎に炙られ火傷を負い、少しでも見切りを誤れば裂傷を負い、じわじわダメージが積もっていく。
シルヴィアが治癒魔法を飛ばしてくれるが、終わりが見えない中で使い過ぎるわけにもいかず、どうしても後手にまわることになる。
途切れない攻撃を必死に捌くが、いい加減心が折れそうになる。
くそったれ、この体力バカが……
愚痴を口にしそうになった瞬間、空振りした魔族の身体がほんのわずか流れた。
「!」
考えるより先に身体が動いた。
右手の剣が魔族の左肩に届いた。血飛沫が舞う。
…何だよ、魔族でも血は赤いのかよ……
頭の片隅でそんなことを思いながらも、身体は魔族相手に攻勢に転じていた。
バランスを崩した魔族の懐に飛び込む。
絶妙のタイミングで治癒魔法がかかった。
さすがだぜ、シルヴィア!
「うおおおおっ!!」
双剣を操り、魔族に剣撃を浴びせる。俺が非力なせいで、一発で与えられるダメージは少ないが、それを手数でカバーする勢いで双剣を振るう。
ここで仕留められなかったら勝ち筋はなくなる。
闘いが始まってどれくらい経ったのか、時間の感覚は既にない。ただの戦闘マシンに徹して、剣を振るい続ける。
異変が起きたのは、シルヴィアが十何度目かの治癒魔法を飛ばした時だった。
「!?」
回復はせず、逆に目眩を覚え、俺は片膝を着いた。
「くっ……」
強烈な脱力感に苛まれ、横倒れにならずにいるのが精一杯だった。
何が起きたのかまったくわからなかったが、闘いの中でこれは致命的な隙だ。チリっとした感覚とともに死の予感が冷たく背を撫でる。
だが、魔族からの反撃はなかった。
見れば、魔族も膝を着いている。俺の剣もそれなりに通じていたようだ。
「コータロー!」
シルヴィアが駆け寄ってくる。
カズサさんたちは弱った魔族にとどめを刺すべく動きだす。
だがーー
「危ねえっ!」
嫌な予感に、思わず声をあげていた。
声に反応したカズサさんたちがその場に急停止した瞬間、魔族の身体が爆発的に膨れ上がったように見えた。
「伏せろっ!」
シルヴィアを抱え込んで身を伏せた。
直後、爆風が頭上を駆け抜けた。
爆風が治まった後、魔族の姿は跡形もなくなっていた。
「逃げられたわね」
カズサさんが悔しそうに言った。
「でも、魔族を撃退したんだぜ。すげえよ、コータロー」
「本当にね。もう終わりかと思ったわ」
「最後のは何だったんだ?」
「俺にも何が何だか……」
言った瞬間、さっきの数倍の目眩を感じた。
「…あれ……?」
「コータロー!?」
シルヴィアの声を最後に、意識はプツンと途切れた。
リョウさんは大きく息を吸い込んだ。
「来いや、おらあああぁっ!」
同時に魔族に向かって駆け出す。
が、魔族は全く威圧に惑わされてはいなかった。俺は真正面から突っ込んでいく形になってしまう。
「やべっ」
無造作に振られた右腕は、かろうじて剣で受けることができた。が、その威力までは吸収しきれず、大きく後ろへ飛ばされた。
「くうっ」
何とか足から着地はしたものの、体勢が整う前に魔族が迫る。
振りかぶった拳が炎を帯びる。
「うおっ!?」
身を投げ出して拳をかわす。あんなの食らったら、治癒魔法かけてもらう前に死んじまいそうだ。
紙一重のかわし方ができないと、反撃のきっかけが掴めない。
「コータロー!」
シルヴィアの心配そうな声が聞こえたが、それに答えている余裕はなかった。
向こうは向こうで、こっちの動きが激しすぎて援護のタイミングを掴めずにいるようだ。
図らずも俺と魔族のタイマンになってしまっていた。
今のところスピードだけはほんの少しだけ上回れているので致命的な事態にはなっていないが、このままではじり貧だ。
にしても、魔族の体力ってのは底無しか。あれだけ激しく動きまわっても、まったく動きが衰えない。
こうなると、頼りはシルヴィアの治癒魔法しかない。体力の回復をしてもらって、魔族が隙を見せるまでついていく。気が遠くなりそうだが、できなきゃ死ぬのだから、やるしかない。
気のせいか、魔族からは愉しげな気配が伝わってくる。
こっちは一発だってもらうわけにはいかないから、とにかく必死だ。
ふと魔族が動きを止めた。大口を開けて俺に向かって何かを叫ぶが、魔族の言葉なんて理解できるはずがない。伝わったのは魔族がこの闘いを心から楽しんでいるということだけだ。
ふざけんな。こっちはこれっぽっちも楽しかねえよ。
ここから魔族の動きは一段ギアが上がった。
全力じゃなかったんかよ!?
本気でゆとりがなくなった。30センチでかわせていたところが10センチになった。
炎を帯びた拳相手に10センチは、かわせているとは言いがたい。炎に炙られ火傷を負い、少しでも見切りを誤れば裂傷を負い、じわじわダメージが積もっていく。
シルヴィアが治癒魔法を飛ばしてくれるが、終わりが見えない中で使い過ぎるわけにもいかず、どうしても後手にまわることになる。
途切れない攻撃を必死に捌くが、いい加減心が折れそうになる。
くそったれ、この体力バカが……
愚痴を口にしそうになった瞬間、空振りした魔族の身体がほんのわずか流れた。
「!」
考えるより先に身体が動いた。
右手の剣が魔族の左肩に届いた。血飛沫が舞う。
…何だよ、魔族でも血は赤いのかよ……
頭の片隅でそんなことを思いながらも、身体は魔族相手に攻勢に転じていた。
バランスを崩した魔族の懐に飛び込む。
絶妙のタイミングで治癒魔法がかかった。
さすがだぜ、シルヴィア!
「うおおおおっ!!」
双剣を操り、魔族に剣撃を浴びせる。俺が非力なせいで、一発で与えられるダメージは少ないが、それを手数でカバーする勢いで双剣を振るう。
ここで仕留められなかったら勝ち筋はなくなる。
闘いが始まってどれくらい経ったのか、時間の感覚は既にない。ただの戦闘マシンに徹して、剣を振るい続ける。
異変が起きたのは、シルヴィアが十何度目かの治癒魔法を飛ばした時だった。
「!?」
回復はせず、逆に目眩を覚え、俺は片膝を着いた。
「くっ……」
強烈な脱力感に苛まれ、横倒れにならずにいるのが精一杯だった。
何が起きたのかまったくわからなかったが、闘いの中でこれは致命的な隙だ。チリっとした感覚とともに死の予感が冷たく背を撫でる。
だが、魔族からの反撃はなかった。
見れば、魔族も膝を着いている。俺の剣もそれなりに通じていたようだ。
「コータロー!」
シルヴィアが駆け寄ってくる。
カズサさんたちは弱った魔族にとどめを刺すべく動きだす。
だがーー
「危ねえっ!」
嫌な予感に、思わず声をあげていた。
声に反応したカズサさんたちがその場に急停止した瞬間、魔族の身体が爆発的に膨れ上がったように見えた。
「伏せろっ!」
シルヴィアを抱え込んで身を伏せた。
直後、爆風が頭上を駆け抜けた。
爆風が治まった後、魔族の姿は跡形もなくなっていた。
「逃げられたわね」
カズサさんが悔しそうに言った。
「でも、魔族を撃退したんだぜ。すげえよ、コータロー」
「本当にね。もう終わりかと思ったわ」
「最後のは何だったんだ?」
「俺にも何が何だか……」
言った瞬間、さっきの数倍の目眩を感じた。
「…あれ……?」
「コータロー!?」
シルヴィアの声を最後に、意識はプツンと途切れた。
0
あなたにおすすめの小説
妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
『ゴミ掃除』が役立たずと追放されたが、実は『存在抹消』級のチートだった。勇者一行がゴミで溺れているが、俺は辺境で美少女と温泉宿を経営中なので
eringi
ファンタジー
「悪いが、お前のスキル『ゴミ掃除』は魔王討伐の役には立たない。クビだ」
勇者パーティの雑用係だったアレクは、戦闘の役に立たないという理由で、ダンジョンの最深部手前で追放されてしまう。
しかし、勇者たちは気づいていなかった。
彼らの装備が常に新品同様だったのも、野営地が快適だったのも、襲い来る高レベルモンスターの死体が跡形もなく消えていたのも、すべてアレクが『掃除』していたからだということに。
アレクのスキルは単なる掃除ではない。対象を空間ごと削り取る『存在抹消』レベルの規格外チートだったのだ。
一人になったアレクは、気ままに生こうと辺境の廃村にたどり着く。
そこでボロボロになっていた伝説のフェンリル(美少女化)を『洗浄』して懐かれたり、呪われたエルフの姫君を『シミ抜き』して救ったりしているうちに、いつの間にかそこは世界最高峰の温泉宿になっていて……?
一方、アレクを失った勇者パーティは、武器は錆びつき、悪臭にまみれ、雑魚モンスターの処理すら追いつかず破滅の一途をたどっていた。
「今さら戻ってきてくれと言われても、俺はお客さん(美少女)の背中を流すのに忙しいんで」
これは、掃除屋の少年が無自覚に最強の座に君臨し、幸せなスローライフを送る物語。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる