異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

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63 シルヴィアの覚悟

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 駆けつけた時、現場は既に凄惨な様相を呈していた。

 燃え盛る建物。

 逃げ惑う一般人。

 血まみれで倒れた冒険者。

 つい先刻まで平和そのものだったセリアの街は、世界で一番地獄に近い街に成り果ててしまっていた。

 そして状況は刻一刻と悪化している。

 状況を作り出しているのは、たった一人の魔族。

「何だ、ありゃ……」

 モノに動じることがほとんどないリョウさんにして、声が震えている。

 魔族は、それだけ圧倒的な存在だった。

 遠くから見ているだけで、あれとは関わっちゃいけないと本能が警告してくる。

   姿形は人間と大差ない。頭に角が生えているのを除けば、人間と区別はつかなそうだ。

   だが、中身は完全に別物だ。わかりあえるとはこれっぽっちも思えない。そもそも話が通じることはないだろう。

「やるしかねえのか……」

   できるなら今すぐ逃げ出したい。が、それをやってしまえば、この先、この世界で浮かび上がる目がなくなる。

「シルヴィア、絶対に前に出るなよ」

「出たくても、足がすくんで動けないよ」

「それはそれで困るじゃねえか」

   いざという時逃げられないんじゃ話にならない。

「みすみす負けるつもりはねえけど、俺がやられたら、とっとと逃げろよ」

   そう言うと、一瞬シルヴィアの表情が鬼のそれと化した。

「!?」

   同時に脇腹に突き刺さった肝臓打ちに悶絶した。

   シ、シルヴィア、いいパンチ持ってるじゃねえか…って、そうじゃねえ……

「な、何を……」

   ぐい、と革鎧の襟元を掴まれて、引き寄せられた。

「今日こそ言わせてもらうわよ」

「は、はい……」

   マジビビった。この時、魔族よりシルヴィアの方が怖かった。絶対に口には出せないけど……

「わたしは、あなたの、なんなの?」

「見目麗しき最愛の奥様でございます」

「余計な装飾要らないから」

   顔が少々赤くなったが、おっかないオーラはそのままだった。

「わたしと、あなたは、夫婦。間違いない?」

「はい」

「だったら、簡単に置いてくようなことは言わないで」

「いや、でもな……」

「でもじゃない」

   ぴしゃりと言われた。

「あなたが死んだら、後追うから」

「おいーー」

「おいじゃない」

   またぴしゃられた。

「言いそうなことは想像つくから、先に言わせてもらいますーーあなたとじゃなきゃ、幸せになんかなれないから」

「……」

「この前のダンジョンであなたがなかなか帰って来なかった時、わたしがどんな思いでいたかわかる?」

「……」

「あの時に決めたの。もしまた同じようなシチュエーションになったら、今度は一緒に戦うって」

「……」

「わたしは、一緒に戦えって言って欲しい。初めて会ったときのわたしとは違うんだから。コータローと一緒に歩いて行けるように頑張ってるんだから、認めて欲しい」

「……」

「大体あなた、わたしを何だと思ってるんですか。怪我したって、わたしの治癒魔法ですぐに治してあげますよ」

「…わかった。頼むな」

   シルヴィアの言うことはいちいちもっともだ。シルヴィアのためを思って言ってたつもりが、逆にシルヴィアを傷つけていたなんて、自分の未熟さに腹が立つ。

「何だか魔族も怖くなくなっちゃった」

   シルヴィアは笑顔で言ってのけた。

「いつでもどこでも二人の空間を作り出す、このバカップルクオリティ……ある意味尊敬するわ」

   カズサさんの呆れた口調に、今が修羅場の真っ最中であることを思い出した。

「そろそろいいかな?   魔族も待ちくたびれてるっぽいよ」

   なぜか魔族は隙だらけの俺たちに攻撃してこなかった。

   魔族の興味を惹くくらい俺たちって珍しいのか、って思ったら、ちょっとだけ哀しくなった……
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