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68 前世の知識
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「ものすごく嫌な予感しかしない」
内なるプレッシャーに煽られるようにケントは魔法の修得に励んだ。
急がないと間に合わないかもしれない。
その思いは日に日に強くなっていくばかり。具体的な兆候などがあるわけではないのだが、ケントは良くないことが起こるのは確信していたので、貪欲に力を求めた。
その際に思わぬところで役に立ったのが前世の知識であった。
何事においてもそうなのだが、知識があるのとないのとでは天と地ほどの違いが出る。
今回のケースでいけば、魔法にはどんなものがあるのか、その一点を知っているだけで習熟のスピードに恐ろしいほどの差が出てくる。
「炎と風をミックスさせてーーファイアトルネード!」
ケントの手から炎を纏った竜巻が生み出され、一抱えはありそうな大岩を木端微塵に吹き飛ばした。
「「すごいね……」」
見ていたフローリアとアリサは目を真ん丸に見開いている。これだけの破壊力を個人が操るなど、これまでは想像も出来なかったのだ。
「何がすごいって、火の魔法と風の魔法を組み合わせちゃうところよね。どういう頭してたらそんな発想が生まれるわけ?」
「そうよね。もしかして、前世の記憶?」
「ああ」
ケントは小さく首肯した。
「なるほどーーケントの前世って魔法があったの?」
「物語の中にな」
「物語?」
アリサはきょとんとした顔になる。
「娯楽のひとつでな、歴史書とか恋愛ものを頭の中で作り上げるんだ。んで、それを一冊の書物にするんだ」
ケントの説明に、フローリアとアリサは顔を見合わせた。
「それってすごくない?」
「少なくともあたしにはできないわね」
「ケントもその物語を作ってたの?」
「いや、俺は読む方専門。その代わりいろんなものたくさん読んだぞ」
「その中に魔法があったの?」
「そういうこと」
「そうなんだ」
フローリアは感心したように言った。
「どんな人が最初に魔法を考えたんだろうね」
「ある意味天才だよな」
ケントも頷く。もしもラノベなどの素地がなければ、自分も魔法を使いこなすことなど出来なかったはずだ。顔も名も知らぬ先人に、ケントは最大級の感謝を捧げた。
「で、さっきの魔法でもまだ足りないの?」
フローリアは眉をひそめて訊いた。今見せてもらったファイアトルネードでも個人が持つには過ぎた力だと思うのだが、ケントはまだまだ満足していないように見えたのだ。
「…多分これじゃダメな気がする」
「何と戦う気でいるの!?」
ツッコミにケントは複雑な表情を見せた。
「俺にもよくわからないんだ。でも、ずっと嫌な予感が消えないんだよ」
思い詰めたようなケントの言葉に、フローリアとアリサは小さなため息をついた。
「これ、魔法使いがケントだからいいけど、別の人ーー例えばウチのお父様だったりしたら確実にヤバいわね」
「確かに。ケントじゃなかったら怖かったかも」
アリサも同調する。
「なるほど。ってことは、一般人から見れば、俺は危険人物にも見えるってことだな。気をつけよう」
ケントに自分を客観視できる冷静さがあったのは幸いなことであった。
内なるプレッシャーに煽られるようにケントは魔法の修得に励んだ。
急がないと間に合わないかもしれない。
その思いは日に日に強くなっていくばかり。具体的な兆候などがあるわけではないのだが、ケントは良くないことが起こるのは確信していたので、貪欲に力を求めた。
その際に思わぬところで役に立ったのが前世の知識であった。
何事においてもそうなのだが、知識があるのとないのとでは天と地ほどの違いが出る。
今回のケースでいけば、魔法にはどんなものがあるのか、その一点を知っているだけで習熟のスピードに恐ろしいほどの差が出てくる。
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ケントの手から炎を纏った竜巻が生み出され、一抱えはありそうな大岩を木端微塵に吹き飛ばした。
「「すごいね……」」
見ていたフローリアとアリサは目を真ん丸に見開いている。これだけの破壊力を個人が操るなど、これまでは想像も出来なかったのだ。
「何がすごいって、火の魔法と風の魔法を組み合わせちゃうところよね。どういう頭してたらそんな発想が生まれるわけ?」
「そうよね。もしかして、前世の記憶?」
「ああ」
ケントは小さく首肯した。
「なるほどーーケントの前世って魔法があったの?」
「物語の中にな」
「物語?」
アリサはきょとんとした顔になる。
「娯楽のひとつでな、歴史書とか恋愛ものを頭の中で作り上げるんだ。んで、それを一冊の書物にするんだ」
ケントの説明に、フローリアとアリサは顔を見合わせた。
「それってすごくない?」
「少なくともあたしにはできないわね」
「ケントもその物語を作ってたの?」
「いや、俺は読む方専門。その代わりいろんなものたくさん読んだぞ」
「その中に魔法があったの?」
「そういうこと」
「そうなんだ」
フローリアは感心したように言った。
「どんな人が最初に魔法を考えたんだろうね」
「ある意味天才だよな」
ケントも頷く。もしもラノベなどの素地がなければ、自分も魔法を使いこなすことなど出来なかったはずだ。顔も名も知らぬ先人に、ケントは最大級の感謝を捧げた。
「で、さっきの魔法でもまだ足りないの?」
フローリアは眉をひそめて訊いた。今見せてもらったファイアトルネードでも個人が持つには過ぎた力だと思うのだが、ケントはまだまだ満足していないように見えたのだ。
「…多分これじゃダメな気がする」
「何と戦う気でいるの!?」
ツッコミにケントは複雑な表情を見せた。
「俺にもよくわからないんだ。でも、ずっと嫌な予感が消えないんだよ」
思い詰めたようなケントの言葉に、フローリアとアリサは小さなため息をついた。
「これ、魔法使いがケントだからいいけど、別の人ーー例えばウチのお父様だったりしたら確実にヤバいわね」
「確かに。ケントじゃなかったら怖かったかも」
アリサも同調する。
「なるほど。ってことは、一般人から見れば、俺は危険人物にも見えるってことだな。気をつけよう」
ケントに自分を客観視できる冷静さがあったのは幸いなことであった。
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