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48 婚約反対~ガチでやられると結構キツい~
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帝国との国境から先触れが届いた。
その報せを聞いて、ケントは表情を曇らせた。先触れが出るということは、大抵の場合悪いニュースである。
「まさかフローリアに何かあったのか?」
真っ先にそう思ったのは無理のないところだったが、ケントの想像力はまだまだ不足していると言わざるを得なかった。
「何だって? 皇帝が一緒に来てる?」
続いての一報で厄介事が確定した。どう考えても平穏な未来を想像することはできなかった。
「いいのか? こんな簡単に国空けて」
「事が事だからね。無理もないんじゃないかな」
アリサは軽い口調で言った。
「他人事みたいに言うな」
「わたしは両親の許可もらったもん」
アリサの両親にとっては、絶対に断れないという一点において、天災と大差ない話だったと言えるだろう。挨拶に行ったケントに対し、アリサの両親はノータイムで娘を献上していた。
もちろんそれは娘への愛に基づくものであるのは言うまでもない。たとえ選択肢があったとしても答えは変わらなかったはずだ。
そんなわけでアリサは余裕綽々なのだが、ケントの場合はここからが正念場となる。一悶着あるのは想定内で、それが二悶着、三悶着にならなければいいなあ、というのが正直なところであった。
「娘はやらんぞ」
開口一番そう来るか……
ケントは内心で大きくため息をついた。
「お父様!」
フローリアが悲鳴をあげる。
「いきなり結婚などと言われて、はいそうですかなどと言えるわけがなかろう」
「いきなりじゃないでしょ。前から何度も話を聞いてって言ってるのにお父様が逃げ回っているだけじゃない」
「それは……」
途端に弱気になる皇帝陛下。
あ、ヤバい。
ケントの直感が警告を発した。
これ、逆ギレして一番めんどくさくなるパターンだ。
「今日こそは認めてもらうからね」
フローリア、そこは煽っちゃダメだ。余計頑なになる。
ケントがそう思った瞬間、案の定皇帝がキレた。
「勝手なことをぬかすな。おまえも王族ならばわかっているだろう。王族の結婚というのは好き嫌いで決められるものではないと」
「それは……」
今度はフローリアが言葉に詰まった。
「王族の結婚は国益に繋がらなければならないーーそこの優男にそれだけの価値があるというのか?」
仮にも他国の王族を、本人を目の前にしてディスるというのはどうなんだろうか、と思わないでもないのだが、ちょっと口をはさめる空気ではなかったので、ケントはただ苦笑した。
「じゃあケントにそれだけの価値があると認めさせればいいわけね」
フローリアの目が据わってきた。
「言っておくが、帝国に利をもたらすのは簡単なことではないぞ」
世界でも屈指の大国である帝国では、大抵のことが不自由なく行える。そんな国に「こちらからこんな利益を提供できますよ」と提示するのは、確かに簡単なことではない。
だからと言って諦めるつもりはフローリアにもケントにもなかったので、皇帝陛下に対するプレゼンを考えることになった。
その報せを聞いて、ケントは表情を曇らせた。先触れが出るということは、大抵の場合悪いニュースである。
「まさかフローリアに何かあったのか?」
真っ先にそう思ったのは無理のないところだったが、ケントの想像力はまだまだ不足していると言わざるを得なかった。
「何だって? 皇帝が一緒に来てる?」
続いての一報で厄介事が確定した。どう考えても平穏な未来を想像することはできなかった。
「いいのか? こんな簡単に国空けて」
「事が事だからね。無理もないんじゃないかな」
アリサは軽い口調で言った。
「他人事みたいに言うな」
「わたしは両親の許可もらったもん」
アリサの両親にとっては、絶対に断れないという一点において、天災と大差ない話だったと言えるだろう。挨拶に行ったケントに対し、アリサの両親はノータイムで娘を献上していた。
もちろんそれは娘への愛に基づくものであるのは言うまでもない。たとえ選択肢があったとしても答えは変わらなかったはずだ。
そんなわけでアリサは余裕綽々なのだが、ケントの場合はここからが正念場となる。一悶着あるのは想定内で、それが二悶着、三悶着にならなければいいなあ、というのが正直なところであった。
「娘はやらんぞ」
開口一番そう来るか……
ケントは内心で大きくため息をついた。
「お父様!」
フローリアが悲鳴をあげる。
「いきなり結婚などと言われて、はいそうですかなどと言えるわけがなかろう」
「いきなりじゃないでしょ。前から何度も話を聞いてって言ってるのにお父様が逃げ回っているだけじゃない」
「それは……」
途端に弱気になる皇帝陛下。
あ、ヤバい。
ケントの直感が警告を発した。
これ、逆ギレして一番めんどくさくなるパターンだ。
「今日こそは認めてもらうからね」
フローリア、そこは煽っちゃダメだ。余計頑なになる。
ケントがそう思った瞬間、案の定皇帝がキレた。
「勝手なことをぬかすな。おまえも王族ならばわかっているだろう。王族の結婚というのは好き嫌いで決められるものではないと」
「それは……」
今度はフローリアが言葉に詰まった。
「王族の結婚は国益に繋がらなければならないーーそこの優男にそれだけの価値があるというのか?」
仮にも他国の王族を、本人を目の前にしてディスるというのはどうなんだろうか、と思わないでもないのだが、ちょっと口をはさめる空気ではなかったので、ケントはただ苦笑した。
「じゃあケントにそれだけの価値があると認めさせればいいわけね」
フローリアの目が据わってきた。
「言っておくが、帝国に利をもたらすのは簡単なことではないぞ」
世界でも屈指の大国である帝国では、大抵のことが不自由なく行える。そんな国に「こちらからこんな利益を提供できますよ」と提示するのは、確かに簡単なことではない。
だからと言って諦めるつもりはフローリアにもケントにもなかったので、皇帝陛下に対するプレゼンを考えることになった。
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