君と紡ぐ物語

桜糀いろは

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第10話 - 1

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(京也さんは、何であんなことを言って、わたしにこの本を読ませないようにしたんだろう)
 本を読み終えた文音は、ふたたび表紙を眺めた。
 彼の言うとおり、この本には恋愛が描かれていた。しかし、それだけではないような気がした。
(本当のしあわせとは何か、それを探していく物語……みたいな)
 主人公は若くして作家になるという夢を叶え、数年後には一生自由に暮らせるほどの財産を手にする。けれど、それによって彼は、孤独を強く感じるようになった。
 生まれ持った端整な容貌。それに名声と財力が加わったことで、益々、外見だけで判断されることが増えていったのだ。
 自分とまともに向き合ってくれる相手などいないのではないか。
 例えいたとしても、話が合わず飽きてしまうのではないだろうか。
 そう思うようになった主人公は、付き合いを避けるようになり、独りでいることを選ぶようになる。
 そんな彼が、数年後に偶然本屋で見かけたヒロインに恋をする。過去の出来事から散々悩んだ挙げ句、主人公は一歩を踏み出す。そしてその先には、京也と初めて話した時と同じ会話がなされていたのだった。
(もしかして、わたしが怒ると思ったのかな……)
 ヒロインの行動すべてに文音は心当たりがあった。店を見つけた時の様子や、本屋で性交痛を調べていた時のことも。
(だけど、主人公は最後に、ヒロインと信頼関係を築いていこうと決意して――)
 アシスタントをしないかと彼女に言ったのだった。そう、京也が自分を誘ってくれた時の出来事だ。そこで、この物語は終わっていた。
(終わり方からしてハッピーエンドだろうし、わたしの知り合いが読んでもヒロインのモデルがわたしだって分からないようアレンジされてた。だから……)
 一切、文音は怒りを抱くようなことはなかった。それどころか、ヒロインに対する主人公の想いが、自分に対する京也の想いと一緒だったら良いのにと、何度も思ったほどだった。
(……そういえば、あの文字列は何だったんだろう)
 メモを手に取って眺めてみる。
「YOSHI N AB E AYA」
 今では、これがヒロインの名前だということは分かった。
(問題は、このスペースなんだよね……)
「……あ」
(文字を並べ替えると、わたしの名前になる!)
 つまりヒロインは自分なのだと、そう受け取っていいのだろうか。
(それで主人公は、京也さんそのものだった……とか)
 主人公とヒロインの会話は、すべて実際に彼と話した内容と一致していた。主人公の思考がもし京也本人と異なっていたのなら、物語のどこかで齟齬が生じるはずだ。
(ていうことは……主人公が抱えていた孤独を、京也さんも抱えて……)
 そんな彼の気持ちを、自分は少しでも気づいていただろうか。
 そう自分に問い掛けた途端、視界が滲んでいった。
 文音は本をぎゅっと抱き締め、静かに瞼を閉じた。

「あ……おはよう、ございます」
 店に入ろうと扉に手を伸ばした瞬間、京也が中から扉を開けてきた。寝不足で頭がぼんやりとしていた文音は、咄嗟に間の抜けたような挨拶を口にした。
「お、おう」
 鉢合わせをして戸惑っているのだろうか。彼は不自然な返事をした後、こちらの顔をジロジロと見てきたのだった。
「……わたしの顔、どこか変ですか?」
「いや……大丈夫、だ」
 京也が目の辺りを見ながら答えてくる。ほんのちょっと腫れているのが分かったのだろうか。文音はおもむろに視線を逸らし、そそくさと事務所に入っていった。
(うーん、鏡でチェックした感じ、そこまで酷くなかったんだけど……)
 普段より多めに本を選び、席に着く。と、そこで、昨日に引き続き、京也がまた声を掛けてきたのだった。
「カフェラテ、飲むか?」
「え……あ、はい。是非」
 文音が答えた直後、京也は何か言いたそうに口を開けた。彼の表情から言おうとしていることを読み取ろうとしてみる。けれどすぐに、彼は口を閉じ、カウンターの中へと入っていってしまった。
(何だろう……わたしが眠そう見えて、その理由を聞こうとしたのかな?)
 そうだったとしたら、上手く答えられる自信はない。文音は慌てて本に目を向けた。
「これ……必要になったら、また……」
 京也がそっとカフェラテを差し出してくる。読書の邪魔をしないようにと気を遣ってくれたのかもしれない。文音は彼に笑顔で礼を告げてからカップを手に取った。
(美味しい……)
 口に含んだ途端、頬が緩んでいく。やっぱり彼が作ってくれるカフェラテが一番だ。しみじみとそう感じた文音は、いつもより時間を掛けてカフェラテを味わった。
(ん?)
 半分ほど飲み終え、カップを受け皿に戻した瞬間、京也の手が目に入ってくる。皿のすぐ横に置かれていた彼の手を辿って顔を上げていく。すると、頬杖を突いた京也と目が合った。
(まさか……ずっと見て……)
 急に心臓がドキドキしてくる。どう反応したら良いのか分からず、文音はただ京也を見つめ続けた。京也は決まり悪そうに視線をPCの方へと動かした後、ゆっくりと頬杖を崩す。そして文音の側に置いていた手を引き、その手で口元を覆ったのだった。
(迷ってた……とか)
 あと少しで、彼は大事なことを話してくれそうな気がする。文音は手元にあった本を開き、その時を待つことにした。
 
(違ったのかなぁ……)
 何事もないまま15時を迎え、文音は帰る支度をしに事務所へと入った。
(あの忘れ物は、歌緒理さんだよね?)
 改めてそう疑問に感じてしまう程、歌緒理の様子も、彼女と京也の仲も、いつもと変わりがなかった。
(でも、わたしから聞くのもね……)
 自分の勘違いで誰かがとばっちりを受けたなんてことになったら嫌だ。それに、彼の書いたものを読んでしまったという後ろめたさもある。文音は溜め息を吐いてから、事務所の扉を開けた。
「文音」
「え? あ……」
 緊張で身体が強張る。真剣な面持ちで京也が歩み寄って来るのが見えたのだ。
 彼は目の前で足を止めると、目をじっと見つめてから、重たげに口を開いてきたのだった。
「……読んだか?」
「読んだ?」
 小首を傾げて聞き返す。すると、京也の瞳が微かに揺れた。
「あれだよ」
「あれ? あれってどれですか?」
「っ……昨日、忘れ物としてあった本だ」
 京也が視線を外す。文音は黙って彼の顔を眺めた。
 京也の口から溜め息が漏れる。彼は視線を戻し、抑揚のない声で話をし始めた。
「すぐに歌緒理の仕業だと分かった。それで文音が帰った後、アイツに電話したんだ。そしたら歌緒理の奴、本に挟んであったメモはあるかって聞いてきたんだよ。で、見てみたらなかった。それをアイツに伝えたら、勘違いだったかもとか、ちゃんと伝わるといいなとか、意味不明なことを言ってたんだ。……持ってるんだろ、メモ。見せろ」
「見てどうするんですか」
 京也の問いただすような言い方に、文音はついムッとして怒ったような口調で言葉を返した。けれど京也は、まったく怯むことなく話を続けてきたのだった。
「変な事とか書いてないか、確認するんだよ」
「変なことって何ですか?」
「嘘とか……色々だよ」
 京也が急に口ごもる。その瞬間、文音の中に残っていた一抹の不安が一気に膨れ上がっていった。
 文音は、その不安に衝き動かされるようにして口を開いた。
「変なこととか、嘘とか、そんなもの書いてなんかないですよ。ヒロインの名前と、いくつかの数字があっただけです。わたしと京也さんの思い出が書かれたページの番号です」
 京也が顔をしかめた。さらに彼は、話すことを拒むかのように、口を強く引き結ぶ。そんな彼の態度を目にした途端、堰を切ったように文音の口から言葉が流れ出ていった。
「……あの本、全部、読みましたよ。あれ、京也さんが書いたやつですよね? これはフィクションなんだって、そう自分に言い聞かせながら、わたし……京也さんに、こう想われてたら良いなって……っ、これが全部、本当だったら嬉しいのになって……読んでました。でも、京也さん、何も言ってくれないから、わたしっ――」
 文音が顔を伏せる。その直後、思いもよらない言葉が文音の頭に降ってきたのだった。
「……から、嫌だったんだよ」
 嫌だった。京也のその言葉によって、文音の目に溜まっていた涙がぼろぼろと零れ始める。文音は咄嗟に背を向けて走り出そうとした。しかし――。
「離してっ、ください。もう良いんですっ。だから、離して……」
 京也に背後から抱きすくめられ、逃げるどころか腕を動かすことさえ出来なかった。文音は涙を隠そうと項垂れた。すると後頭部にコツンと何かがぶつかってきた。次いで京也の声が耳に入ってくる。
「……全部、本当なんだよっ。あの本に書かれている主人公の想いは、俺が文音に抱いた想いそのままなんだっ」
「え?」
 振り返ろうとした瞬間、京也が腕に力を込め、それを阻止する。その上、彼は顔を隠すように頭を動かしてから、ぼそりと呟いた。
「恥ずかしいだろ、たくっ」
「はずかしい?」
「ああ、そうだ。自分だけが、あんな一方的に想いを寄せてたとか、恥ずかし過ぎるだろ。だから、嫌だったんだ。言うのがな」
「それだけ……ですか?」
「それだけだ」
(良かった――)
 文音がほっと息を吐く。と同時に、文音の身体から力が抜け落ちていった。
「じゃあ、なんで書いたんだって、話だよな?」
 京也が突然、自嘲気味に声を発してくる。文音はじっとしたまま彼の気配を窺った。
「何で、なんだろうな……」
 言いながら京也は、文音の頬に自身の頬を擦りつける。そして少しだけ沈黙した後、おもむろに答えを口にした。
「多分、文音にフラれた時のために書いたんだろうな。文音との出会いを、幸せな物語ハッピーエンドとして取っておこうとして……」
 京也がふたたび黙り込む。文音は彼の方を見ようと顔を動かした。その瞬間、彼は顔をぱっと離し、声を上げたのだった。
「あー。自分で言ってて、自分がものすごくダサいと思ったわ」
 京也の腕の力が弱まる。文音はすかさず身体を反転させ、両手で彼の顔を押さえると、自分の方へと向けさせた。
「なっ――」
「京也さん! ちゃんと聞いてなかったんですか? あの小説が本当だったら嬉しいのになって、わたしは言ったんですけど」
「お前、断りもなく自分のことを書かれたんだぞ? しかも、ほぼ事実どおりでな。気持ち悪いとか思わなかったのかよ」
「思わなかったです。でも、京也さんが想いを口にしてくれなかったことに、わたしは拗ねてます」
「……言わなくても、俺の行動見てれば分かるだろ」
 京也が恥ずかしそうに目を逸らした。
「言葉にしてくれないとダメなんです。好きなら好きって、ちゃんと言ってください」
 文音が頬を含ませる。すると京也が小さく噴き出した。
「もう、何で笑うんですか」
「いや、文音を休ませた時に、歌緒理にも同じことで怒られたんだよ。想いは口にして伝えていかないと駄目だってな」
「え……」
「最初は、あえて口にしないよう気をつけてたんだ。俺が想いを口にすればする程、真面目な文音は、自分の身体のことを深刻に捉え過ぎて、苦しくなると思ったんだ。で、歌緒理に注意され、文音の身体も良くなったことだし、そろそろ口にしていこうとしたらだな……文音を前にすると言えなくてだな……兎に角、店を閉めてから、ゆっくり話をしようと考えていたら、あの『忘れ物』だ」
 歌緒理の奴め、と最後に呟いた後、京也はふっと表情を緩め、それから意地の悪い笑みを浮かべてきたのだった。
「ちなみに、俺はまだ一度も文音に『好き』って言われたことないけどな」
「えっ? そう……でしたっけ?」
「ああ、そうだ。文音が『好き』って言ったのは、俺の淹れるカフェラテと、二人でゆっくり過ごす時間な。俺のことが好きだとは言っていない」
 どうだと言わんばかりに京也がニヤついてくる。
(心の中では、いっぱい言ってたんだけど……)
 文音が小さな声で「ごめんなさい」と謝ると、京也は目を細めて笑った。そして文音の両手を握り、目をじっと見つめながら、彼はおもろに口を開けた。
「文音、好きだ。いや、愛してる」
 京也が唇に優しいキスをする。文音は目を閉じて彼のキスを受け止めた。
「で、文音はどうなんだ? 聞かせて、文音」
 少しだけ唇を離し、京也が甘い声音で囁いてくる。文音はゆっくりと目を開け、彼の目を見てから自分の想いを口にした。
「京也さんのおかげで、一番大切なものがわかったんです。わたしにとってそれは、愛する人と過ごす時間なんです。京也さん、大好きです。愛してます。だからこれからも、こうして側にいさせてください」
 京也の唇にそっとキスを返す。すると、京也が片方の手を後頭部に回し、深くキスをしてきた。
「ん……」
 想いが通じ合えたからなのか、いつも以上にキスが心地良く感じた。
 しばらくこうしていたい。そう思った矢先――。
「帰るぞ」
「えっ? えっ? 京也さん?」
 握っていた手を引っ張って、京也が店の外へと出ていく。彼はポケットからキーケースを取り出し、店の鍵を閉めると、エントランスに向かった。
 手を繋いだままオートロックの鍵を開け、京也がエレベーターの操作パネルに鍵をかざす。解除音が鳴り、彼は文音の家がある3階、ではなくマンションの最上階である10階のボタンを押した。
「あれ、アナウンスが流れない……他の階って行けたんでしたっけ? というか、何で10階なんですか?」
 不思議そうに顔を覗き込んでくる文音に、京也は持っていた鍵を見せ、得意気に笑った。
「これは、俺の部屋の鍵。これから俺の家に行くんだよ」
「え……ええっ!? 同じマンションだったんですか! 京也さん、ちょっと遠いって……んっ」
 京也が唇を塞いでくる。同時に、エレベーターが動き出した。
「んーん、京也さん、映ってる」
 エレベーター内の様子は、各階に設置されたディスプレイで確認出来るようになっている。そのことを思い出した文音は、彼の胸板を押し、離れるよう促した。
「なんだ、気づいたのか。俺のだって見せつけたかったんだけどな。仕方ない。これならいいだろ?」
 そう言って京也は、カメラに背を向けて口づけを再開してきた。
(……これ以上言っても、きっと無駄だよね)
 文音は肩の力を抜き、彼の肩に腕を回した。
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