追放令嬢と【神の農地】スキル持ちの俺、辺境の痩せ地を世界一の穀倉地帯に変えたら、いつの間にか建国してました。

黒崎隼人

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第4話:アキト村の誕生と新たな波乱

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 村の改革は、驚くべき速度で進んでいった。
 セレスティーナの提案通り、俺たちは特産品開発に着手した。俺の前世知識が、ここでも大いに役立った。
 まず、豊富に採れる野菜や果物を使い、ジャムやピクルスといった保存食を作った。さらに、俺は日本の発酵食品の知識を応用し、大豆に似た豆から味噌や醤油に似た調味料を開発した。これらの新しい食品は、村の食生活を劇的に豊かにしただけでなく、その独特の美味しさが評判を呼び、高値で取引される交易品となった。

 次に、村のインフラ整備だ。
 川には水車を設置し、製粉の効率を格段に上げた。余剰の木材を使って、燻製小屋や共同の食料貯蔵庫も建設した。俺が設計図を描き、セレスティーナが村人をまとめ、皆で力を合わせて作り上げていく。村人たちの間には、かつてないほどの一体感が生まれていた。

 村の噂は、あっという間に周辺地域へと広がった。
「奇跡の村」「聖女様が治める豊かな土地」。
 そんな評判を聞きつけ、他の貧しい村や町から移住を希望する人々が、日を追うごとに増え始めた。静かだった村は活気に満ち、いつしか「町」と呼ぶにふさわしい規模にまで発展していた。

 ある日、セレスティーナは町の住民全員を集めて宣言した。
「この町の目覚ましい発展は、すべてアキトの功績です。彼への感謝と敬意を込め、今日からこの町を『アキト村』と名付けます!」

 その瞬間、広場は割れんばかりの歓声と拍手に包まれた。俺は突然のことで驚き、慌てて辞退しようとしたが、村人たちの嬉しそうな顔を見て、何も言えなくなった。自分の名前が、この大切な場所の 이름になる。それは、少し照れくさいけれど、最高に誇らしいことだった。

 しかし、光が強くなれば、影もまた濃くなる。
 アキト村の急成長は、隣接する領地を治める子爵、ゲルラッハの嫉妬と警戒を招くことになった。彼は自分の領地が寂れていくのを、アキト村のせいだと逆恨みしていたのだ。

「あの追放令嬢と小僧が……俺の領地から人を奪い、富を独占しおって!」

 ゲルラッハ子爵は、陰湿な嫌がらせを開始した。
 まず、アキト村の特産品を運ぶ商隊に対し、自分の領地を通る際に法外な通行税を課した。次に、アキト村の作物は「呪われた土地で採れた毒の作物だ」「食べると病気になる」といった悪意に満ちた噂を、あちこちに流し始めた。

 交易路を止められ、悪評を流されたことで、村の経済は一時的に大きな打撃を受けた。村人たちの間にも、不安の色が広がり始める。
 領主の館で、セレスティーナと俺は頭を抱えていた。

「ゲルラッハ子爵、あまりに卑劣な……。このままでは、村の発展が止まってしまうわ」
 悔しそうに唇を噛むセレスティーナに、俺は地図を指さして言った。

「セレスティーナ様、道が一つ塞がれたなら、新しい道を作ればいい」
 俺が指さしたのは、村と隣町を隔てる険しい山だった。これまで誰も超えようとしなかった未開の森だ。
「この山を越える道を開拓すれば、子爵の領地を通らずに町へ行けます。それに、山には木材や薬草など、新しい資源も眠っているかもしれない」

 俺の提案は、無謀に聞こえたかもしれない。だが、セレスティーナは俺の目をじっと見つめ、力強く頷いた。
「わかったわ、アキト。やってみましょう」

 再び、村を挙げての大事業が始まった。
 セレスティーナが領民に呼びかけ、男たちは木を切り、岩を砕き、女たちは炊き出しや道具の整備を行った。俺も、スキルで地盤を固めたり、危険な場所の木を成長させて足場にするなど、陰ながら作業をサポートした。

 初めは「山に道など作れるものか」と懐疑的だった村人たちも、セレスティーナの懸命な姿と、日に日に形になっていく道を見て、心を一つにして作業に打ち込んだ。
 そして一月後、ついに山を越える新しい交易路が完成したのだ。

 さらに、セレスティーナはただやられっぱなしでは終わらなかった。彼女は密かに人を雇い、ゲルラッハ子爵が不正な通行税を取っている証拠や、悪意ある噂を流しているという証言を集めていた。そして、それらをまとめた詳細な陳情書を作成し、中央の貴族院へ送ったのだ。その見事な政治的手腕に、俺は舌を巻いた。

 妨害を乗り越えたことで、アキト村の結束はさらに強固なものになった。新しい道は「希望の道」と名付けられ、村の物流は以前にも増して活発になった。
 その名を善意と共に、さらに遠くまで知れ渡らせていく。

 その夜、完成した道を見下ろせる丘の上で、俺とセレスティーナは二人きりで火を囲んでいた。
「アキト。私、気づいたの。私たちがやっていることは、もう、ただの村おこしじゃない。これは……一つの国づくりなのだと」

 セレスティーナの言葉に、俺は頷いた。
 そうだ。貧しい農家の三男だった俺と、追放された公爵令嬢。
 二人で始めた小さな革命は、いつの間にか、新しい国の産声に変わろうとしていた。
 眼下に広がるアキト村の灯りを見つめながら、俺たちはこれから訪れるであろう、更なる大きな未来を予感していた。
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