「え、俺なんかしました?」無自覚チート《概念編集》で石ころを魔石に、なまくらを聖剣に書き換えて、国を追われた聖女様と世界を救う

黒崎隼人

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第一章「無自覚チート《概念編集》と訳あり聖女の逃避行」

第6話「聖光と黒闇の激突」

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「ルミナ、下がってろ!」

 俺はルミナの前に飛び出し、黒装束の男たちと対峙した。手に武器はない。あるのは、ポケットの中の石ころだけだ。

「カイ!? あなた、何を……!」

 背後からルミナの焦った声が聞こえる。

「何だ、貴様は。その女の護衛か? 見たところ、ただの一般人のようだが」

 顔に傷のある男が、嘲るように言った。他の二人も、俺を虫けらでも見るような目で見ている。

「まあ、いい。邪魔するなら、まとめて消すまでだ」

 傷の男が手を振ると、二人の部下が同時に動いた。一人は短剣を抜き放ち、もう一人は懐から何か黒い球体を取り出す。

『やるしかない!』

 俺はポケットから石ころを取り出し、短剣を持った男に向かって全力で投げつけた。

「フン、小細工を」

 男は鼻で笑い、短剣で石を弾き返そうとする。

 キィン!

 甲高い金属音が響き、石は男の短剣に弾かれてあらぬ方向へと飛んでいった。

『……だよな。うまくいくわけないか』

 万事休す。そう思った、その時だった。

「なっ!?」

 短剣の男が驚きの声を上げる。見ると、彼の持つ短剣に蜘蛛の巣のような亀裂が走り、次の瞬間、パラパラと金属の欠片となって砕け散ったのだ。

「俺の魔鋼の短剣が……!?」

 男が呆然としている隙に、もう一人の男が黒い球体をこちらへ投げつけてくる。

「喰らえ! 暗黒弾(ダークボルト)!」

「させない!」

 俺の後ろから、ルミナが叫ぶ。彼女の両手から放たれた光の壁が、俺たちの前に展開された。

 ドガァン!

 黒い球体が光の壁に激突して爆発し、衝撃で路地全体が揺れた。光の壁はなんとか持ちこたえたが、表面にはひびが入り、ルミナの顔色も少し悪い。魔力をかなり消耗したようだ。

「へぇ、さすがは聖女の末裔。だが、いつまで保つかな?」

 傷の男が、面白そうに口の端を吊り上げる。

「くっ……!」

 ルミナが再び光の壁を構築しようとするが、連発はきついようだ。光の輝きが先ほどよりも弱い。

 まずい。このままではジリ貧だ。俺にできることはないのか。

『さっきの、石……。投げたんじゃなくて、触れたから短剣が壊れたのか?』

 ランタンを直した時のことを思い出す。あの時も、俺はただ触れていただけだ。

『もしかして、この力は、触れたものの情報を書き換えるような……?』

「なまくらの剣」を「鋭い剣」に、じゃなくて、「頑丈な剣」を「脆い剣」に?

 試してみる価値はある。

「ルミナ、少しだけ時間を稼いでくれ!」

「え? でも……!」

「いいから!」

 俺の気迫に押されたのか、ルミナはこくりとうなずくと、残りの魔力を振り絞って牽制の光弾を放ち始めた。

 その隙に、俺は地面に転がっている瓦礫――家の壁が崩れたものだろうか――に駆け寄った。

『頼む……!』

 祈るような気持ちで、その瓦礫の破片に両手で触れる。そして、頭の中で強くイメージした。

『硬くなれ。鉄みたいに。いや、もっと……鋼みたいに硬くなれ!』

 すると、あの時と同じ、ぐにゃりとした奇妙な感覚が手のひらから伝わってくる。石の質感が、みるみるうちに変わっていくのが分かった。ずしりとした重み。ひんやりとした金属の感触。

 目を開けると、俺の手の中には、石ではなく黒光りする金属塊のようなものが握られていた。

「よし……!」

 俺はそれを手に、再び黒装束たちの前に立つ。

「まだ何かするつもりか、小僧。往生際が悪いな」

 傷の男が、今度は自ら前に出てくる。その手には、禍々しい紫色の光を放つ長剣が握られていた。

「終わりだ」

 男が剣を振りかぶる。俺はとっさに、手に持った金属塊でそれを受け止めようとした。

 ガキィィィィィンッ!!

 耳をつんざくような金属音が響き、火花が散って俺の腕に凄まじい衝撃が走る。

「ぐっ……!」

 だが、耐えられた。男の剣は、俺が持っている金属塊に阻まれてびくともしない。

「な……んだと……?」

 信じられない、という表情で目を見開く傷の男。

「俺の魔剣を、ただの石塊で……いや、これは……オリハルコンか!? 馬鹿な、なぜ貴様のような奴が!」

 男が動揺している。今がチャンスだ。

「うおおおおおっ!」

 俺は渾身の力を込めて、金属塊を押し返した。男は体勢を崩し、大きく後ろへよろめく。

 その隙を、ルミナが見逃すはずがなかった。

「はぁっ!」

 彼女の最後の力を振り絞った光の矢が、体勢を崩した傷の男の肩を正確に貫いた。

「ぐああああっ!」

 男が苦痛に叫び、その場に崩れ落ちる。

 それを見た残りの二人は、一瞬顔を見合わせた後、リーダー格の男を放置して、あっという間に路地の闇へと消えていった。

 静寂が戻る。残されたのは、肩を押さえてうめく傷の男と、息を切らしている俺たちだけだった。

「はぁ、はぁ……やった、のか?」

「ええ……なんとか……」

 ルミナも肩で息をしている。二人で、なんとか追手を撃退したのだ。

 安堵したのも束の間、遠くから衛兵たちの叫び声と、複数の足音が聞こえてきた。

「まずい、見つかる!」

 ルミナが俺の腕を掴む。

「カイ、こっちよ!」

 彼女は、俺たちが追い詰められた袋小路の壁の一部分に手を触れた。すると、壁の一部が幻のように揺らめき、向こう側への通路が現れる。隠し通路だ。

 俺たちは衛兵たちが駆けつける寸前に、その通路へと滑り込み、町の喧騒から逃れるのだった。
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