「え、俺なんかしました?」無自覚チート《概念編集》で石ころを魔石に、なまくらを聖剣に書き換えて、国を追われた聖女様と世界を救う

黒崎隼人

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第一章「無自覚チート《概念編集》と訳あり聖女の逃避行」

第14話「新たな追手、影の双刃」

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 ルミナが完全に回復するのを待ち、俺たちは再びエルドラナへの道を進み始めた。昨日の出来事が嘘のように、彼女はすっかり元気を取り戻していた。

「それにしても、不思議な雫だったわ。私の体内から、聖なる力を感じた。まるで、高純度の魔力ポーションみたい」

「俺にもよく分からないんだ。ただ、必死だったから」

 そんな会話をしながら、毒の植物が群生するエリアを抜ける。森は再び、少しだけ明るさを取り戻したように見えた。

 旅は順調に進むかと思われた。だが、不穏な気配は、突如として俺たちを襲った。

「……カイ、止まって」

 ルミナが、鋭く短い声で俺を制止する。彼女の表情は、これまでになく険しい。

「どうした?」

「……囲まれてる」

 その言葉と同時に、俺たちの周囲の木々の上から、二つの影が音もなく舞い降りた。

 現れたのは、二人組の男女だった。どちらも、リムベルの町で遭遇した連中と同じ、黒い装束を身にまとっている。だが、雰囲気は明らかに違った。研ぎ澄まされた刃物のような、殺気。こいつらは、ただの追手じゃない。暗殺者だ。

 一人は、銀色の短髪を逆立てた、鋭い目つきの男。もう一人は、黒い長髪を一つに束ねた、無表情な女。二人とも、腰に二本ずつの短剣を差している。その姿は、まるで対になっているかのようだった。

「見つけたぞ、聖女の末裔」

 銀髪の男が、感情の感じられない声で言った。

「その隣にいるのが、報告にあった『イレギュラー』か。面白い力を使うそうだな」

 黒髪の女が、値踏みするように俺を見る。

「お前たち、影の教団か!」

 俺は剣を抜き放ち、ルミナをかばうように前に出る。

 銀髪の男が言った。
「我の名は、シン」
 黒髪の女が続けた。
「私の名は、レン」
 そして二人の声が重なった。
「――二人合わせて、『影の双刃』。お前たちを迎えに来た」

 シンと名乗った男と、レンと名乗った女が、同時に一歩踏み出す。その動きには、一切の無駄がない。

「ルミナ、下がってろ!」

 俺は叫び、シンに向かって斬りかかった。ミスリルもどきの剣が、鋭い軌跡を描く。

 しかし、シンはそれを最小限の動きでひらりとかわすと、信じられない速さで俺の懐に潜り込んできた。

「遅い」

 腹部に、硬い衝撃。シンが放った蹴りをまともに食らい、俺は「ぐふっ」という情けない声を上げて後方へ吹き飛ばされた。

「カイ!」

 ルミナが悲鳴を上げる。そのルミナに、今度はレンが襲いかかった。

「あなたの相手は、私」

 レンは二本の短剣を逆手に持ち、回転しながら連続で斬りつけていく。ルミナは聖光魔法のバリアを展開してそれを防ぐが、レンの攻撃は嵐のように止まらない。バリアの表面に、火花が連続で散る。

「くっ……!」

 なんとか体勢を立て直した俺は、再びシンと対峙する。

「ただの剣では、俺たちには届かない」

 シンは余裕の表情を崩さない。

『なら!』

 俺は地面に手をつき、牙猪(ファングボア)の時と同じように、シンとレンの足元をぬかるみに変えようとした。

「その力、報告は受けている」

 しかし、俺が能力を発動するよりも早く、シンとレンは高く跳躍し、近くの木の幹に着地していた。

「なっ!?」

「同じ手が、二度も通じると思うな」

 シンの言葉に、俺は歯噛みする。こいつら、俺の能力について、すでに対策を立ててきている。

 木の幹を蹴り、シンとレンは再び俺たちに襲いかかってきた。今度は、二人の連携攻撃だ。

 シンが正面から俺を攻め立て、レンが死角からルミナを狙う。その動きは完璧に連動しており、まるで一人の人間が二人いるかのように滑らかだった。

 俺はシンの猛攻を防ぐので手一杯で、ルミナを助けに行くことができない。ルミナもまた、レンの素早い攻撃に翻弄され、防戦一方になっている。

「くそっ、このままじゃ……!」

 俺はシンの剣戟をいなしながら、周囲の木の枝に意識を向けた。

『鋭い槍になれ!』

 近くの木の枝が、数本、鋭く尖って槍のように変化し、シンとレン目掛けて飛んでいく。

「無駄だ」

 しかし、二人は飛来する槍を、最小限の動きでひらりひらりとかわしていく。まるで、攻撃が来るのが最初から分かっていたかのようだ。

 俺の《概念編集》による攻撃は、ことごとく通用しない。動きが速すぎる上に、こちらの意図を完全に見切られている。

 ガキン!

 シンの短剣が俺の剣を弾き、がら空きになった胴体に、レンの蹴りがめり込んだ。

「がはっ……!」

 息が詰まり、視界がかすむ。俺たちの実力は、この二人組にまったく及んでいなかった。

 レベルが、違いすぎる。

 絶望的な実力差を前に、俺の心は、少しずつ折れかけていた。
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