「え、俺なんかしました?」無自覚チート《概念編集》で石ころを魔石に、なまくらを聖剣に書き換えて、国を追われた聖女様と世界を救う

黒崎隼人

文字の大きさ
13 / 87
第二章「最強になった俺と聖女様、世界の真の黒幕を倒しに行きます。」

第63話「王都アヴァロンの光と影」

しおりを挟む
 王都アヴァロンは壮大で美しい都だった。

 白い城壁に囲まれ、中央には天を突くように白亜の王城がそびえ立っている。
 整然と区画整理された街並み、活気にあふれる市場、そして行き交う人々の豊かな服装。
 全てがこの国が平和で繁栄していることを物語っていた。

「すごい……。エルドラナとはまた違う美しさね」

 ルミナが馬車の窓から感嘆の声を漏らす。

 俺たちは騎士ギルバートに先導され王城へと直接通された。
 磨き上げられた大理石の廊下を抜け、衛兵が固める巨大な扉の前に立つ。

「国王陛下に謁見である!」

 衛兵の厳かな声と共に扉が開かれる。

 その先は広大な謁見の間だった。
 天井からは巨大なシャンデリアが下がり、壁には歴代の王たちの肖像画が飾られている。
 そしてその最奥、一段高くなった玉座に一人の男が座っていた。

 歳は五十代半ばだろうか。
 手入れの行き届いた金髪に穏やかだが鋭い理性の光を宿した青い瞳。
 豪華な王衣をまとっているがその身体は鍛え上げられており、かつては自ら剣を取って戦場に立ったであろうことを窺わせる。

 アルストリア王国国王、レグルス・フォン・アルストリア。
 その人だった。

「面を上げよ、英雄たちよ」

 王の威厳に満ちた、しかし温かみのある声が響き渡った。

 俺とルミナは緊張しながらも顔を上げる。

「カイ、ルミナ。遠路よくぞ参られた。君たちの噂はかねがね耳にしておる。世界のために戦うその勇気と献身に心から敬意を表する」

「……もったいないお言葉です」

 俺はなんとかそれだけを絞り出した。

「さて、本題に入ろう。君たちが追っているという『封印の楔』、そして『影の教団』の残党……。その脅威について詳しく聞かせてもらえぬか」

 俺たちはこれまでの旅で起きた出来事を包み隠さず全て話した。
 楔を巡るシンとレンとの戦い。
 彼らが語った『真の主』という存在。
 そしてゲルド率いる残党たちが水面下で勢力を拡大している可能性。

 俺たちの話をレグルス王は側近の大臣たちと共に静かに、しかし真剣な表情で聞き入っていた。

 全てを話し終えると謁見の間に重い沈黙が流れた。

 やがてレグルス王はゆっくりと口を開いた。

「……事態は我らが想像していた以上に深刻なようじゃな」

 彼は玉座から立ち上がると俺たちの前まで歩み寄ってきた。

「カイ、ルミナ。君たちに頼みがある。いや、これはアルストリア王国からの正式な要請だ」

 王は俺たちの前で深々と頭を下げた。

「どうか残る三つの楔を邪悪なる者たちの手に渡る前に確保してほしい。そのためならば我が王国はいかなる協力も惜しまぬ。騎士団も魔術師団も国が持つ全ての情報を君たちのために使おう」

 一国の王がただの冒険者に頭を下げる。
 その姿に俺は彼のこの国と世界を思う真摯な心を感じた。

「……分かりました。その要請、お受けします」

 俺が力強く答えると王は安堵の表情を浮かべた。

 話はトントン拍子に進んだ。
 俺たちは王城内に特別に部屋を与えられ、王国が持つ古文書の閲覧や情報網へのアクセスを許可された。

 これで俺たちの旅は格段にやりやすくなるはずだ。

 ***

 その夜、俺たちが与えられた豪華な一室。

 俺はバルコニーに出て王都の夜景を見下ろしていた。
 無数の灯りが星のように瞬いている。

「……よかったのかしら。国の要請を受けてしまって」

 隣に立ったルミナが不安そうに言う。

「私たちは自由な旅人だったのに。なんだか大きな組織に組み込まれてしまったみたいで……」

「大丈夫だよ」

 俺は彼女の肩を抱いた。

「俺たちの目的は変わらない。世界を守る。そのために利用できるものは何でも利用するさ。王様だってその一人だよ」

 俺が不遜なことを言って笑うと、ルミナもつられてふっと笑った。

 だが俺の心の中には一抹の拭えない違和感があった。

 王も大臣たちも皆協力的だった。
 だが一人だけ。
 謁見の間で玉座の脇に控えていた宰相の男。
 彼は俺たちの話を聞いている間一度も表情を変えなかった。
 その冷たい瞳の奥に何か得体の知れない感情が渦巻いているように見えたのは気のせいだろうか。

 王都アヴァロン。
 光り輝くこの繁栄の都のどこか深い場所に、俺たちの知らない暗い影が潜んでいる。

 そんな予感がしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~

御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。 異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。 前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。 神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。 朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。 そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。 究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

処理中です...