「え、俺なんかしました?」無自覚チート《概念編集》で石ころを魔石に、なまくらを聖剣に書き換えて、国を追われた聖女様と世界を救う

黒崎隼人

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第二章「最強になった俺と聖女様、世界の真の黒幕を倒しに行きます。」

第69話「英雄の凱旋、そして…」

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 俺の意識は、純粋なエネルギーの海に投げ出されたようだった。
 制御を失い、ただ破壊のためだけに渦巻く混沌の魔力。
 これをどうやって書き換える?

『無理やり消し去るんじゃない。本来あるべき穏やかな流れに戻すんだ……!』

 世界樹との対話で得た調和のイメージ。
 四季が巡るように、荒れ狂う嵐もいずれは凪ぎ、穏やかな風となる。
 その「理」をこの場に強制的に再現させる。

『この「破壊の魔力奔流」を、「世界を巡る穏やかなる魔力の流れ(マナストリーム)」に!』

 全身の神経が焼き切れるような激痛が走る。
 だが俺の体を包むルミナの温かい光が、魂が霧散するのを必死でつなぎとめてくれていた。

「うおおおおおおっ!」

 俺の魂の叫びと共に、宝物庫を満たしていた破壊のエネルギーはその性質を急速に変化させていく。
 荒れ狂う奔流は穏やかな川の流れのように静けさを取り戻し、やがて目に見えない魔力の粒子となって世界の大気へと溶けていった。

 静寂が戻る。

 崩壊しかけていた宝物庫は、奇跡的にその形を保っていた。

「……はぁ……はぁ……」

 俺はその場に膝から崩れ落ちた。
 全身から力が抜け、指一本動かせない。

「カイ!」

 ルミナが駆け寄ってくる。
 彼女もまた魔力を使い果たし、顔は蒼白だった。
 俺たちは互いに寄りかかるようにして、なんとか意識を保っていた。

「……終わったのか……?」

「ええ……。終わったのよ、カイ」

 俺たちはボロボロになりながらも笑い合った。

 ***

 その後、俺たちがどうやって宝物庫から助け出されたのか、あまり覚えていない。

 気づいた時には、俺は王城の豪華なベッドの上で眠っていた。
 隣ではルミナも静かな寝息を立てている。

 俺たちが目を覚ましたのは、それから丸二日が過ぎた後のことだった。

 俺たちを待っていたのは、英雄への熱狂的な歓迎だった。

 オルダス宰相の反乱とそれを鎮圧した俺たちの活躍は、瞬く間に王都中に知れ渡っていた。
 俺たちが王城のバルコニーに姿を現すと、眼下に集まった何万という民衆から割れんばかりの歓声が巻き起こった。

「英雄カイ! 聖女ルミナ!」

 その声に、俺はなんだかむず痒いような、照れくさいような不思議な気持ちになった。

 その後、謁見の間では国王レグルス自らが俺たちに最大の賛辞と感謝を述べた。

「君たちがいなければ、このアルストリア王国は今頃滅びいただろう。この恩は言葉では到底言い表せん」

 王は俺たちに望むだけの褒美を与えると言ってくれた。
 莫大な金銀財宝、貴族の爵位、望むなら国の半分でさえも。

 だが、俺はそれを丁重に断った。

「俺たちが欲しいのは褒美じゃありません。ただ一つ、残る楔を見つけ出し、この世界に本当の平和を取り戻すためのご協力をお願いします」

 俺の言葉に、レグルス王は感銘を受けたように深く頷いた。

「……承知した。君こそ真の英雄だ。アルストリア王国は未来永劫、君たちの最も信頼できる同盟国であり続けることを、ここに誓おう」

 ギルバートはオルダスという重しが取れたことで、王の片腕としてより一層その才覚を発揮し始めていた。
 大賢者エルミナも隠居を返上し、国の再建に力を貸している。

 王都アヴァロンは一度は影に覆われかけたが、今は以前にも増して力強い光を取り戻していた。

 そして、俺たちの手には『星詠みの羅針盤』があった。

 盤面には七つの星が描かれ、そのうち四つは穏やかな光を放っている。
 俺たちが確保した楔だ。
 残る三つの星はまだ輝きを失ったままだ。

 だが、羅針盤の針は、そのうちの一つの星を確かに指し示していた。

 大陸南西部、『竜の墓場』。
 俺たちが元々目指していた場所。

「……行くか」

「ええ」

 俺たちは顔を見合わせる。

 王都での戦いは終わった。
 だが、俺たちの本当の戦いはこれからだ。

 羅針盤が示す次なる舞台へ。

 俺たちは王都の民の熱狂的な歓声に見送られ、再び旅路へと戻るのだった。
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