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第11話:再会と嘲笑
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運命の日は、唐突に訪れた。
ギルドで次の依頼を探していた僕たちの前に、聞き覚えのある声が響いた。
「おい、どけよ。俺たちが通るんだ」
横暴な声の主は、吾郎だった。
彼の後ろには得意げな顔の海斗と、その腕に寄り添う玲奈の姿があった。今や王国で最も有名なパーティーとなった「紅蓮の剣」の登場に、ギルド内がざわめく。
僕と楓、龍司は、彼らに道を譲るように壁際に寄った。僕はフードを目深に被り、顔を見られないようにする。まだ、その時ではない。
海斗たちは僕たちのことなど気にも留めず、依頼掲示板の前で最も報酬の高い依頼書を剥ぎ取った。
「よし、次はこれだ。A級ダンジョン『幻影の森』の調査。俺たちにかかれば、こんなもの楽勝だろ」
海斗が尊大に笑う。
その時、玲奈がふと僕たちの方に目を向けた。
「あら、こんなところに新顔がいたのね。あなたたちが、最近噂の『アヴァロン』かしら?」
彼女の視線には、格下のパーティーを見下すような侮蔑の色が浮かんでいた。
龍司が前に出ようとするのを、僕は手で制した。
「……そうだ」
僕は、声を少し変えて短く答えた。
僕の返事を聞いた吾郎が、僕たちを上から下まで値踏みするように見て、下品に笑った。
「へっ、こいつらか。リーダーは見るからにひょろいし、女はガキ、デカブツは元騎士崩れだろ? こんなんで、よくA級依頼がこなせるな」
その言葉に、龍司の眉がピクリと動く。
海斗は、そんな僕たちを一瞥すると、興味を失ったように鼻で笑った。
「まあ、頑張ることだな。俺たち『紅蓮の剣』の足元にも及ばないだろうが」
彼は、僕の顔をまじまじと見ることもなく、僕の隣を通り過ぎようとした。
僕が「湊」だとは、夢にも思っていないのだろう。それもそうか。ダンジョンの過酷な環境と手に入れた力は、僕の雰囲気や体つきを大きく変えていた。何より、彼らにとって湊はもう死んだ人間でしかないのだから。
しかし、彼らが僕のすぐ横を通り過ぎた、その瞬間。
「――お前たちのような偽物が、いつまでも英雄でいられると思うな」
僕は、彼らにだけ聞こえるような、低く冷たい声でつぶやいた。
その声に、海斗たちの足がピタリと止まる。
「……なんだと?」
海斗が、殺気のこもった目で僕を振り返る。
僕はゆっくりと顔を上げた。フードの影で、僕の口元が笑みの形に歪んでいる。
「そのままの意味だ。借り物の力で手に入れた名声など、すぐに剥がれ落ちるぞ、と」
僕の言葉に、海斗だけでなく吾郎と玲奈の表情も凍りついた。
特に「借り物の力」という部分に、彼らは激しく動揺していた。
「てめえ……! 何を知ってる!」
激昂した吾郎が、僕に掴みかかろうとする。
それを、龍司のタワーシールドが音もなく防いだ。
「騒ぎを起こすのは感心せんな。ギルド内での私闘は禁止されているはずだ」
龍司の静かな声に、周囲の探索者たちも何事かとこちらに注目し始める。
海斗は舌打ちを一つすると、吾郎を制した。
「……行くぞ。こんな雑魚に構っている時間はない」
彼は僕を強く睨みつけると、仲間たちを促してギルドを出て行った。その背中には、明らかに焦りの色が浮かんでいた。
彼らが去った後、楓が心配そうに僕に尋ねた。
「クロさん、よかったんですか? あんなことを言って……」
「ああ。宣戦布告だよ」
僕は静かに答えた。
「奴らは、俺の正体に気づいていない。だが、俺が奴らの秘密を知っていることには気づいた。これから、奴らは常に疑心暗鬼に苛まれることになる」
僕の心の中では、復讐の計画がより具体的に、より鮮明に形作られていた。
今日の出来事は、ほんの序章に過ぎない。
海斗。吾郎。玲奈。
お前たちが築き上げた偽りの栄光を、僕が一つずつ、丁寧に、木っ端微塵に破壊してやる。
まずは、あの脳筋の戦士からだ。
僕の瞳の奥で、復讐の炎がこれまでになく激しく燃え上がっていた。
ギルドで次の依頼を探していた僕たちの前に、聞き覚えのある声が響いた。
「おい、どけよ。俺たちが通るんだ」
横暴な声の主は、吾郎だった。
彼の後ろには得意げな顔の海斗と、その腕に寄り添う玲奈の姿があった。今や王国で最も有名なパーティーとなった「紅蓮の剣」の登場に、ギルド内がざわめく。
僕と楓、龍司は、彼らに道を譲るように壁際に寄った。僕はフードを目深に被り、顔を見られないようにする。まだ、その時ではない。
海斗たちは僕たちのことなど気にも留めず、依頼掲示板の前で最も報酬の高い依頼書を剥ぎ取った。
「よし、次はこれだ。A級ダンジョン『幻影の森』の調査。俺たちにかかれば、こんなもの楽勝だろ」
海斗が尊大に笑う。
その時、玲奈がふと僕たちの方に目を向けた。
「あら、こんなところに新顔がいたのね。あなたたちが、最近噂の『アヴァロン』かしら?」
彼女の視線には、格下のパーティーを見下すような侮蔑の色が浮かんでいた。
龍司が前に出ようとするのを、僕は手で制した。
「……そうだ」
僕は、声を少し変えて短く答えた。
僕の返事を聞いた吾郎が、僕たちを上から下まで値踏みするように見て、下品に笑った。
「へっ、こいつらか。リーダーは見るからにひょろいし、女はガキ、デカブツは元騎士崩れだろ? こんなんで、よくA級依頼がこなせるな」
その言葉に、龍司の眉がピクリと動く。
海斗は、そんな僕たちを一瞥すると、興味を失ったように鼻で笑った。
「まあ、頑張ることだな。俺たち『紅蓮の剣』の足元にも及ばないだろうが」
彼は、僕の顔をまじまじと見ることもなく、僕の隣を通り過ぎようとした。
僕が「湊」だとは、夢にも思っていないのだろう。それもそうか。ダンジョンの過酷な環境と手に入れた力は、僕の雰囲気や体つきを大きく変えていた。何より、彼らにとって湊はもう死んだ人間でしかないのだから。
しかし、彼らが僕のすぐ横を通り過ぎた、その瞬間。
「――お前たちのような偽物が、いつまでも英雄でいられると思うな」
僕は、彼らにだけ聞こえるような、低く冷たい声でつぶやいた。
その声に、海斗たちの足がピタリと止まる。
「……なんだと?」
海斗が、殺気のこもった目で僕を振り返る。
僕はゆっくりと顔を上げた。フードの影で、僕の口元が笑みの形に歪んでいる。
「そのままの意味だ。借り物の力で手に入れた名声など、すぐに剥がれ落ちるぞ、と」
僕の言葉に、海斗だけでなく吾郎と玲奈の表情も凍りついた。
特に「借り物の力」という部分に、彼らは激しく動揺していた。
「てめえ……! 何を知ってる!」
激昂した吾郎が、僕に掴みかかろうとする。
それを、龍司のタワーシールドが音もなく防いだ。
「騒ぎを起こすのは感心せんな。ギルド内での私闘は禁止されているはずだ」
龍司の静かな声に、周囲の探索者たちも何事かとこちらに注目し始める。
海斗は舌打ちを一つすると、吾郎を制した。
「……行くぞ。こんな雑魚に構っている時間はない」
彼は僕を強く睨みつけると、仲間たちを促してギルドを出て行った。その背中には、明らかに焦りの色が浮かんでいた。
彼らが去った後、楓が心配そうに僕に尋ねた。
「クロさん、よかったんですか? あんなことを言って……」
「ああ。宣戦布告だよ」
僕は静かに答えた。
「奴らは、俺の正体に気づいていない。だが、俺が奴らの秘密を知っていることには気づいた。これから、奴らは常に疑心暗鬼に苛まれることになる」
僕の心の中では、復讐の計画がより具体的に、より鮮明に形作られていた。
今日の出来事は、ほんの序章に過ぎない。
海斗。吾郎。玲奈。
お前たちが築き上げた偽りの栄光を、僕が一つずつ、丁寧に、木っ端微塵に破壊してやる。
まずは、あの脳筋の戦士からだ。
僕の瞳の奥で、復讐の炎がこれまでになく激しく燃え上がっていた。
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