元悪役令嬢、偽聖女に婚約破棄され追放されたけど、前世の農業知識で辺境から成り上がって新しい国の母になりました

黒崎隼人

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第16章:アグリア公国の誕生、そして永遠の誓い

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 戦争は終わった。エルグランド王国は、クーデターと自滅によって、事実上崩壊した。ヴェルフェン公爵が率いる暫定評議会は、旧王国の立て直しに追われ、もはや辺境領に干渉する力も、意思もなかった。
 辺境伯領は、この戦争に勝利したことで、誰からも干渉されない、事実上の独立国家となった。
 バルトロ辺境伯をはじめ、周辺の領主たち、そして領民の誰もが、一つのことを確信していた。この新しい時代を導くことができるのは、ロゼリア・フォン・ヴェルフェン、その人しかいないと。
 領地の中央広場に、巨大な舞台が設けられた。そこに集まった全ての領民が見守る中、バルトロ辺境伯が、代表としてロゼリアの前にひざまずいた。
「ロゼリア様! 貴女様こそ、我らが新しい国の指導者にふさわしいお方です! どうか、我らの女王として、この国を統治してください!」
「女王陛下!」「女王陛下!」と、地鳴りのような歓声が巻き起こる。
 しかし、ロゼリアは静かに首を振った。そして、隣に立つカイの手を取った。
「皆さん、聞いてください。私がこの地で成し遂げたことがあるとすれば、それは私一人の力ではありません。この土地の声を誰よりも知る、この人、カイ・シルベストリがいてくれたからです」
 彼女は、カイこそが、かつてこの地を治めていた正統な後継者であることを皆に告げた。
「そして、私が女王になるべきではありません。なぜなら、私には王家の血は流れていないからです。しかし、カイにはこの地を守り続けてきた、領主の血が流れています。新しい国の王にふさわしいのは、彼をおいて他にいません」
 民衆は、最初は戸惑ったが、すぐにロゼリアの真意を理解した。彼女の謙虚さと、カイへの深い信頼。そして、カイがこれまで領民のために尽くしてきた姿を、誰もが知っていた。
 歓声は、やがてカイの名を呼ぶ声に変わっていった。
「カイ様こそ、我らの王だ!」「カイ国王、万歳!」
 民衆の熱狂的な支持を受け、カイは、少し戸惑いながらも、覚悟を決めた顔で一歩前に出た。彼は、農業を意味する古い言葉から、新しい国の名を「アグリア公国」とすることを宣言した。そして、初代公王として即位することを、民衆の前で誓った。
 戴冠式が終わり、熱狂が最高潮に達したその時。初代公王となったカイは、民衆が見守る前で、ロゼリアに向き直り、彼女の前に片膝をついた。
「ロゼリア・フォン・ヴェルフェン。いや、ロゼリア。私の、たった一人の女神よ」
 彼は、ロゼリアの手を取り、その瞳をまっすぐに見つめた。
「私が王になれたのは、貴女がいたからだ。この国があるのは、貴女がいてくれたからだ。だから、どうか……私の妃として、そして、このアグリア公国の母として、永遠に私の隣で、共に歩んでほしい」
 それは、国の創生を祝う場で捧げられた、公王からのプロポーズだった。
 ロゼリアの瞳から、大粒の涙が溢れた。彼女は、これ以上ないほどの幸福感に包まれながら、震える声で答えた。
「はい……喜んで。カイ、私の、たった一人の王様」
 彼女は涙と共に、最高の笑顔で頷いた。
 二人は、万雷の拍手と祝福の中で、固く、固く結ばれる。悪役令嬢として追放された一人の女性が、全ての逆境を乗り越え、新しい国の母となった瞬間だった。彼女の物語は、最高のハッピーエンドを迎えたのだ。
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