【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立

黒崎隼人

文字の大きさ
3 / 16

第02話「初めてのお客様は、お腹を空かせた伝説の魔獣でした」

しおりを挟む
 荒野での初日。
 僕は夕暮れまで【土壌改良】を繰り返し、テニスコート一面分ほどの畑を作り上げた。
 植えたのは、手持ちの種すべて。
 ラディッシュ、カブ、そして数粒だけあったトマトの種だ。

 どれもこれも、種を蒔いて魔力を注ぐだけで、数分のうちに収穫可能サイズまで成長した。
 僕のスキル、やっぱり何かがおかしい。
「改良」というより「進化」させているような気がする。
 でもまあ、早く育つ分には食料に困らないし、良しとしよう。

 即席で作った土のベッド(これもスキルで土をフカフカにしたもの)に寝転がり、星空を見上げる。
 遮るものが何もない満天の星空は、息をのむほど美しかった。

『静かだな……』

 前世では車の音や隣人の生活音に悩まされていたのが嘘のようだ。
 そんなことを考えてウトウトしていた、その時だった。

 グルルルゥ……。

 低い唸り声が、すぐ近くで聞こえた。
 僕は飛び起きて周囲を見渡す。
 月明かりの下、畑の向こうに二つの赤い光が浮かんでいた。

 狼だ。
 それも、普通の狼じゃない。
 体長は優に2メートルを超え、銀色の毛並みは月光を浴びて青白く輝いている。
 鋭い牙、そして何より、その体から滲み出る圧倒的な威圧感。

(で、でかい……! これってまさか、図鑑で見た「シルバーウルフ」? いや、それよりも遥かに強そうだ)

 魔獣はゆっくりと、僕ではなく畑の方へと近づいてくる。
 その足取りはふらついていて、お腹のあたりが痩せこけているように見えた。

『もしかして、お腹が減ってるのか?』

 魔獣は、赤く熟れたトマトの前で足を止め、鼻をひくひくさせている。
 食べたい。でも警戒している。そんな葛藤が見て取れた。

 僕は意を決して、足元にあったカゴから大きめのトマトを一つ手に取った。
 そのまま投げつけるのではなく、下手投げでそっと放る。

「……食うか?」

 トマトはコロコロと転がり、魔獣の鼻先で止まった。
 魔獣はビクリと体を震わせ、僕を睨みつける。
 僕は両手を上げ、敵意がないことを示した。

 魔獣はしばらく僕とトマトを交互に見ていたが、空腹には勝てなかったらしい。
 大きな口を開け、トマトを一口でパクリといった。

 その瞬間。

 カッッッ!!!

 魔獣の体が眩い光に包まれた。
「えっ、何!?」
 思わず腕で顔を覆う。
 光が収まると、そこにはさっきまでの巨大な猛獣はいなかった。

 代わりにいたのは――。

「わふっ!」

 柴犬サイズにまで縮んだ、モフモフの銀色の子犬だった。
 つぶらな瞳。パタパタと振られる尻尾。
 さっきまでの威圧感はどこへやら、完全に無害な愛玩動物になっている。

「ええええ!? ち、縮んだ!?」

 子犬(?)は嬉しそうに駆け寄ってくると、僕の足にスリスリと体をこすりつけてきた。
 その毛並みは最高級のシルクのように滑らかで、触り心地が抜群にいい。

「わん! わんっ!(もっとちょうだい!)」

 そう言っているように聞こえる。
 僕は戸惑いながらも、もう一つトマトを差し出した。
 子犬はそれを嬉しそうに受け取り、器用に前足で抱えてかじりついている。
 その姿があまりにも可愛くて、僕は自然と頭を撫でていた。

「よしよし。お前、一人ぼっちだったのか?」

「くぅ~ん」

 甘えた声を出して、僕の手のひらに顔を押し付けてくる。
 なんだこれ、可愛すぎる。
 こんな荒野で、まさかこんな癒やしに出会えるとは。

「いいよ。ここには野菜ならたくさんあるからな。好きなだけ食え」

 僕がそう言うと、子犬は尻尾が千切れんばかりに振って喜びを表現した。

「名前がないと不便だな……。よし、お前は今日から『フェン』だ」

「わふっ!」

 気に入ったようだ。
 こうして僕の荒野生活に、最初の相棒(ペット)が加わった。

 実はこのフェン、ただの魔獣ではなかった。
 古代より「天災」として恐れられる伝説の神獣・フェンリルの幼体だったのだが……。
 トマトに含まれる異常な魔力を摂取したことで、本来の姿と知性を取り戻しつつ、体を圧縮(デフォルメ)してエネルギーを温存する形態になっていたのだ。

 そんなこととはつゆ知らず、僕はフェンを抱き枕にして、温かい毛皮の感触を楽しみながら眠りについた。
 最高のモフモフ感だ。これだけで、ここに来た価値があるかもしれない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

「洗い場のシミ落とし」と追放された元宮廷魔術師。辺境で洗濯屋を開いたら、聖なる浄化の力に目覚め、呪いも穢れも洗い流して成り上がる

黒崎隼人
ファンタジー
「銀閃」と謳われたエリート魔術師、アルク・レンフィールド。彼は五年前、国家の最重要儀式で犯した一つの失敗により、全てを失った。誇りを砕かれ、「洗い場のシミ落とし」と嘲笑された彼は、王都を追われ辺境の村でひっそりと洗濯屋を営む。 過去の「恥」に心を閉ざし、ひまわり畑を眺めるだけの日々。そんな彼の前に現れたのは、体に呪いの痣を持つ少女ヒマリ。彼女の「恥」に触れた時、アルクの中に眠る失われたはずの力が目覚める。それは、あらゆる汚れ、呪い、穢れさえも洗い流す奇跡の力――「聖濯術」。 これは、一度は全てを失った男が、一枚の洗濯物から人々の心に染みついた悲しみを洗い流し、自らの「恥」をも乗り越えていく、ささやかで温かい再生の物語。ひまわりの咲く丘で、世界で一番優しい洗濯が、今始まる。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

追放された悪役令嬢、規格外魔力でもふもふ聖獣を手懐け隣国の王子に溺愛される

黒崎隼人
ファンタジー
「ようやく、この息苦しい生活から解放される!」 無実の罪で婚約破棄され、国外追放を言い渡された公爵令嬢エレオノーラ。しかし彼女は、悲しむどころか心の中で歓喜の声をあげていた。完璧な淑女の仮面の下に隠していたのは、国一番と謳われた祖母譲りの規格外な魔力。追放先の「魔の森」で力を解放した彼女の周りには、伝説の聖獣グリフォンをはじめ、可愛いもふもふ達が次々と集まってきて……!? 自由気ままなスローライフを満喫する元悪役令嬢と、彼女のありのままの姿に惹かれた「氷の王子」。二人の出会いが、やがて二つの国の運命を大きく動かすことになる。 窮屈な世界から解き放たれた少女が、本当の自分と最高の幸せを見つける、溺愛と逆転の異世界ファンタジー、ここに開幕!

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

処理中です...