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第04話「荒野に人が集まってきました。みんなお腹が空いてるみたいです」
シルヴィアが加わってから、僕の生活は劇的に改善された。
彼女は魔法だけでなく、土木建築の知識も持っていたのだ。
僕が【土壌改良】で基礎となる土台を作ると、彼女が魔法で石材を生成し、あっという間に立派な家が建ってしまった。
風呂もあるし、トイレも水洗だ。文明レベルが一気に上がった。
「ノア様、本日の収穫量ですが、トマトが300個、ナスが200本です。保存庫がそろそろ限界です」
「うーん、食べるのが追いつかないな……」
豊作は嬉しいが、フードロスは避けたい。
誰かに配ろうにも、ここは人里離れた荒野だ。
そんな悩みを抱えていたある日のこと。
畑の向こうから、砂煙を上げて何かが近づいてきた。
「魔物の群れか?」
フェンが警戒して唸り声を上げる。
シルヴィアが杖を構える。
「いえ、あれは……人間です。武装していますね」
近づいてきたのは、十数人の薄汚れた男たちだった。
鎧はボロボロで、剣や斧を引きずるように持っている。
目つきは鋭いが、その奥には疲労と飢えの色が濃い。
「おい、そこなガキ! ここは俺たちのシマだぞ……と言いたいところだが」
リーダー格の大柄な男が、ふらつきながら大剣を地面に突き刺した。
名前はゴードンというらしい。
「水……食い物を……寄越せ……」
言うが早いか、数人がその場にへたり込んだ。
どうやら彼らは、一攫千金を夢見てこの荒野に挑んだものの、魔物に追われ、遭難しかけていた冒険者たちらしい。
「襲う元気もないか」
僕はため息をつき、カゴからトマトとキュウリを取り出した。
冷たい水で洗ったばかりの、瑞々しい野菜だ。
「ほら、食え」
ゴードンの前に転がす。
彼はそれをひったくるように掴み、泥も払わずにかぶりついた。
ガリッ、ジュワァ……。
「う、うおおおッ!?」
一口食べた瞬間、ゴードンが雄叫びを上げた。
他の仲間たちも、次々と野菜に飛びつく。
「なんだこれ!? 甘い! 力が……力が湧いてくるぞ!?」
「古傷の痛みが消えた!?」
「おい、俺のハゲかかった頭皮が熱い! 毛が生えてきてる気がするぞ!」
大騒ぎだ。
相変わらずリアクションが大げさだなあ。
でも、彼らが元気を取り戻していく様子を見るのは悪くない気分だ。
一通り食べ終えた冒険者たちは、さっきまでの殺伐とした雰囲気が嘘のように、穏やかな顔つきになっていた。
そして、ゴードンがおもむろに僕の前に進み出ると、ドスンと片膝をついた。
「坊主……いや、旦那。俺たちを雇ってくれねえか」
「はい?」
「こんな美味いもんは食ったことがねえ。それに、食っただけで魔力がパンパンになりやがる。あんた、とんでもないお人だ。俺たちゃ冒険者を廃業してでも、あんたについていくぜ!」
「俺たちもお願いします! 草むしりでも何でもします!」
野太い男たちに一斉に土下座される光景は、なかなかにシュールだ。
シルヴィアが耳元で囁く。
「ノア様、これは好機です。畑が広がりすぎて手が足りていません。彼らを労働力として取り込みましょう」
「まあ、そうだな……。悪い人たちじゃなさそうだし」
野菜を食べて感動する人に、悪い人はいない、というのが僕の持論だ。
「分かった。じゃあ、まずはそのへんの開拓と、柵作りを手伝ってくれ。報酬は、三食の野菜と寝床だ。それでいいか?」
「「「ありがとうございますッ!!!」」」
荒野に野太い歓声が響き渡る。
こうして、僕の農園に初めての「従業員」ができた。
彼らは元々、体力のあり余る冒険者だ。
美味しい野菜を食べ放題という条件で、彼らは通常の数倍の速度で作業をこなしてくれた。
荒野に杭を打ち、石を運び、道を整備する。
「旦那! ここの岩、どかしておきましたぜ!」
「こっちの畝作り、終わりました!」
活気に満ちた声が飛び交う。
ただの荒野だった場所が、少しずつ「村」のような形になり始めていた。
僕はそれを見ながら、ふと思った。
これ、もうただの農園じゃなくて、一つの組織(ギルド)になりつつあるんじゃないか?
「ま、みんな楽しそうだし、いっか」
僕は気楽に考えていたが、彼らが着ている装備が、野菜の効果でいつの間にか光り輝くミスリル並みの強度に変質していることには、まだ気づいていなかった。
彼女は魔法だけでなく、土木建築の知識も持っていたのだ。
僕が【土壌改良】で基礎となる土台を作ると、彼女が魔法で石材を生成し、あっという間に立派な家が建ってしまった。
風呂もあるし、トイレも水洗だ。文明レベルが一気に上がった。
「ノア様、本日の収穫量ですが、トマトが300個、ナスが200本です。保存庫がそろそろ限界です」
「うーん、食べるのが追いつかないな……」
豊作は嬉しいが、フードロスは避けたい。
誰かに配ろうにも、ここは人里離れた荒野だ。
そんな悩みを抱えていたある日のこと。
畑の向こうから、砂煙を上げて何かが近づいてきた。
「魔物の群れか?」
フェンが警戒して唸り声を上げる。
シルヴィアが杖を構える。
「いえ、あれは……人間です。武装していますね」
近づいてきたのは、十数人の薄汚れた男たちだった。
鎧はボロボロで、剣や斧を引きずるように持っている。
目つきは鋭いが、その奥には疲労と飢えの色が濃い。
「おい、そこなガキ! ここは俺たちのシマだぞ……と言いたいところだが」
リーダー格の大柄な男が、ふらつきながら大剣を地面に突き刺した。
名前はゴードンというらしい。
「水……食い物を……寄越せ……」
言うが早いか、数人がその場にへたり込んだ。
どうやら彼らは、一攫千金を夢見てこの荒野に挑んだものの、魔物に追われ、遭難しかけていた冒険者たちらしい。
「襲う元気もないか」
僕はため息をつき、カゴからトマトとキュウリを取り出した。
冷たい水で洗ったばかりの、瑞々しい野菜だ。
「ほら、食え」
ゴードンの前に転がす。
彼はそれをひったくるように掴み、泥も払わずにかぶりついた。
ガリッ、ジュワァ……。
「う、うおおおッ!?」
一口食べた瞬間、ゴードンが雄叫びを上げた。
他の仲間たちも、次々と野菜に飛びつく。
「なんだこれ!? 甘い! 力が……力が湧いてくるぞ!?」
「古傷の痛みが消えた!?」
「おい、俺のハゲかかった頭皮が熱い! 毛が生えてきてる気がするぞ!」
大騒ぎだ。
相変わらずリアクションが大げさだなあ。
でも、彼らが元気を取り戻していく様子を見るのは悪くない気分だ。
一通り食べ終えた冒険者たちは、さっきまでの殺伐とした雰囲気が嘘のように、穏やかな顔つきになっていた。
そして、ゴードンがおもむろに僕の前に進み出ると、ドスンと片膝をついた。
「坊主……いや、旦那。俺たちを雇ってくれねえか」
「はい?」
「こんな美味いもんは食ったことがねえ。それに、食っただけで魔力がパンパンになりやがる。あんた、とんでもないお人だ。俺たちゃ冒険者を廃業してでも、あんたについていくぜ!」
「俺たちもお願いします! 草むしりでも何でもします!」
野太い男たちに一斉に土下座される光景は、なかなかにシュールだ。
シルヴィアが耳元で囁く。
「ノア様、これは好機です。畑が広がりすぎて手が足りていません。彼らを労働力として取り込みましょう」
「まあ、そうだな……。悪い人たちじゃなさそうだし」
野菜を食べて感動する人に、悪い人はいない、というのが僕の持論だ。
「分かった。じゃあ、まずはそのへんの開拓と、柵作りを手伝ってくれ。報酬は、三食の野菜と寝床だ。それでいいか?」
「「「ありがとうございますッ!!!」」」
荒野に野太い歓声が響き渡る。
こうして、僕の農園に初めての「従業員」ができた。
彼らは元々、体力のあり余る冒険者だ。
美味しい野菜を食べ放題という条件で、彼らは通常の数倍の速度で作業をこなしてくれた。
荒野に杭を打ち、石を運び、道を整備する。
「旦那! ここの岩、どかしておきましたぜ!」
「こっちの畝作り、終わりました!」
活気に満ちた声が飛び交う。
ただの荒野だった場所が、少しずつ「村」のような形になり始めていた。
僕はそれを見ながら、ふと思った。
これ、もうただの農園じゃなくて、一つの組織(ギルド)になりつつあるんじゃないか?
「ま、みんな楽しそうだし、いっか」
僕は気楽に考えていたが、彼らが着ている装備が、野菜の効果でいつの間にか光り輝くミスリル並みの強度に変質していることには、まだ気づいていなかった。
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