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第09話「王都からの視察団、畑の泥に腰を抜かす」
商会の嫌がらせ(という名の資材提供)以降、僕たちのギルド【グリーンハンド】の噂は、風に乗って王都にまで届いていたらしい。
「荒野に楽園がある」「死の土地で禁断の果実が栽培されている」など、尾ひれがつきまくった噂だ。
ある晴れた午後、きらびやかな馬車の一団が農園の入り口に到着した。
王家の紋章が入っている。
降りてきたのは、片眼鏡をかけた神経質そうな官僚と、立派なローブを纏った宮廷魔導師たちだった。
「ここが噂の不法占拠地か。私は王立監査官のバロンだ。土地の無断使用および、危険植物栽培の疑いで調査に来た」
バロンと名乗る男は、ハンカチで鼻を押さえながら、見下すような目で僕たちを見た。
「こんな汚らわしい場所、すぐに焼き払って……ん?」
彼の言葉が止まった。
視界に入った「畑」の異様さに気づいたからだ。
そこには、大人の背丈を超える巨大なナスや、太陽の光を集めて自発光する黄金色の稲穂が揺れていた。
風に乗って漂うのは、濃厚なマナの香り。
呼吸するだけで寿命が延びそうな空気だ。
「な、なんだこの魔力濃度は!? 王宮の地下大迷宮よりも濃いぞ!?」
同行していた宮廷魔導師長が、顔色を変えて叫んだ。
彼は震える手で、畑の土をひとつまみ手に取った。
「ヒッ……!?」
その瞬間、魔導師長が白目を剥いて倒れた。
「おい! どうした!」
「か、官僚様……この土……一粒に込められた魔力が……ドラゴンの心臓(ドラゴンハート)並みです……。触れただけで、私の魔力許容量(キャパシティ)が焼き切れそうだ……」
「はあ!?」
騒然となる視察団。
僕は慌てて駆け寄った。
「あ、すみません! そこ、今朝『超・改良』したばかりで、まだ馴染んでないんです。素手で触るとちょっとビリビリしますよ」
「ビリビリで済むか貴様! これは国宝級の魔触媒だぞ!」
魔導師たちは恐る恐る土を解析し始め、その結果が出るたびに「ありえない」「神の奇跡か」と絶叫している。
一方、バロン監査官はフェンを見つけて目を丸くしていた。
フェンは今、子犬サイズでキュウリをかじっている。
「そ、その犬……まさか、かつて王国軍を壊滅させた『銀狼の災厄』に似て……いや、まさかな。あんなに幸せそうな顔でキュウリを食うわけがない」
現実逃避を始めたようだ。
「えっと、それで調査というのは?」
僕が尋ねると、バロンは居住まいを正し、脂汗を流しながら言った。
「……訂正する。これは調査ではない。こ、国王陛下からの『友好親善』の使者として参ったのだ! この素晴らしい農園を、我が国の『特別指定重要保護区』に認定したい!」
手のひら返しが早すぎる。
どうやら、魔導師長が「この少年を怒らせたら、国が土に還りますよ」と耳打ちしたらしい。
結局、彼らは大量の野菜をお土産に(というより貢物として)購入し、深々と頭を下げて帰っていった。
帰り際、魔導師長が僕の手を握り、「師匠と呼ばせてください!」と涙目で訴えてきたのは丁重にお断りしたけれど。
こうして僕の農園は、正式に国のお墨付きをもらうことになった。
これで堂々と野菜が作れるぞ。
「荒野に楽園がある」「死の土地で禁断の果実が栽培されている」など、尾ひれがつきまくった噂だ。
ある晴れた午後、きらびやかな馬車の一団が農園の入り口に到着した。
王家の紋章が入っている。
降りてきたのは、片眼鏡をかけた神経質そうな官僚と、立派なローブを纏った宮廷魔導師たちだった。
「ここが噂の不法占拠地か。私は王立監査官のバロンだ。土地の無断使用および、危険植物栽培の疑いで調査に来た」
バロンと名乗る男は、ハンカチで鼻を押さえながら、見下すような目で僕たちを見た。
「こんな汚らわしい場所、すぐに焼き払って……ん?」
彼の言葉が止まった。
視界に入った「畑」の異様さに気づいたからだ。
そこには、大人の背丈を超える巨大なナスや、太陽の光を集めて自発光する黄金色の稲穂が揺れていた。
風に乗って漂うのは、濃厚なマナの香り。
呼吸するだけで寿命が延びそうな空気だ。
「な、なんだこの魔力濃度は!? 王宮の地下大迷宮よりも濃いぞ!?」
同行していた宮廷魔導師長が、顔色を変えて叫んだ。
彼は震える手で、畑の土をひとつまみ手に取った。
「ヒッ……!?」
その瞬間、魔導師長が白目を剥いて倒れた。
「おい! どうした!」
「か、官僚様……この土……一粒に込められた魔力が……ドラゴンの心臓(ドラゴンハート)並みです……。触れただけで、私の魔力許容量(キャパシティ)が焼き切れそうだ……」
「はあ!?」
騒然となる視察団。
僕は慌てて駆け寄った。
「あ、すみません! そこ、今朝『超・改良』したばかりで、まだ馴染んでないんです。素手で触るとちょっとビリビリしますよ」
「ビリビリで済むか貴様! これは国宝級の魔触媒だぞ!」
魔導師たちは恐る恐る土を解析し始め、その結果が出るたびに「ありえない」「神の奇跡か」と絶叫している。
一方、バロン監査官はフェンを見つけて目を丸くしていた。
フェンは今、子犬サイズでキュウリをかじっている。
「そ、その犬……まさか、かつて王国軍を壊滅させた『銀狼の災厄』に似て……いや、まさかな。あんなに幸せそうな顔でキュウリを食うわけがない」
現実逃避を始めたようだ。
「えっと、それで調査というのは?」
僕が尋ねると、バロンは居住まいを正し、脂汗を流しながら言った。
「……訂正する。これは調査ではない。こ、国王陛下からの『友好親善』の使者として参ったのだ! この素晴らしい農園を、我が国の『特別指定重要保護区』に認定したい!」
手のひら返しが早すぎる。
どうやら、魔導師長が「この少年を怒らせたら、国が土に還りますよ」と耳打ちしたらしい。
結局、彼らは大量の野菜をお土産に(というより貢物として)購入し、深々と頭を下げて帰っていった。
帰り際、魔導師長が僕の手を握り、「師匠と呼ばせてください!」と涙目で訴えてきたのは丁重にお断りしたけれど。
こうして僕の農園は、正式に国のお墨付きをもらうことになった。
これで堂々と野菜が作れるぞ。
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