元・小野小町の悪役令嬢、破滅回避で嫁いだ仮面公爵が実は超美形。離婚前提のはずが和歌とコスメで領地を豊かにしたら世界一溺愛されています

黒崎隼人

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第10章:悪役令嬢、最後の舞台(ザマァ)

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 聖女エレナの悪事は、カイウス様が掴んでいた決定的な証拠と共に、白日の下に晒された。聖なる力と偽っていた禁断の魔法、毒物混入による殺人未遂、そして王家への背信行為。彼女の罪は重く、聖女の称号は即日剥奪。彼女を信奉していた人々も、その黒い本性を知って手のひらを返した。エレナは全ての栄光を失い、断罪された。

 そして、もう一人の愚か者、アルフォンス王太子。彼はエレナの口車に乗せられ、レティシアを追い詰める片棒を担いだ。全ての真相を知った彼は、国王陛下から厳しく叱責され、顔面蒼白のまま、私とカイウス様の前に現れた。

「レティシア……カイウス公……本当に、申し訳なかった!」
 彼は見苦しくも、その場で土下座をした。かつての傲慢な姿は見る影もない。
「私が、私が愚かだった! 君の真価を見抜けず、あんな女に惑わされるなど……! 頼む、もう一度、私に機会を……」
 その無様な姿に、私は氷のように冷たい視線を向けた。

「今更ですわ、殿下」
 私の声は、冬の風のように冷え切っていた。
「貴方が手放したのは、ただの女一人ではございません。貴方は、人を見る目も、国を治める者としての器も、何もかもを失ったのです」

 悪役令嬢として、最後にこの舞台で、彼に引導を渡す。それが、ゲームのシナリオを乗り越えた私なりの、けじめの付け方だった。
 私の言葉は、彼の心に最後の追い打ちをかけた。人を見る目がないと国内外に知れ渡ったアルフォンスは、王太子としての信頼を完全に失い、その地位を弟君に譲ることになる。彼が私に与えようとした破滅は、形を変えて彼自身に返っていったのだ。

 事件の解決後、カイウス様は素顔のまま、私を伴って王都の民衆の前に姿を現した。「醜悪公爵」の噂は消え去り、代わりに「国を守る美しき英雄」という新たな伝説が生まれた。
 私とカイウス様は国王陛下に謁見し、ヴォルフガング領での功績を絶賛された。そして、国全体の経済改革を担う国家顧問という、破格の地位を与えられることになった。

 もはや、私たちを嘲笑う者はどこにもいない。
 オーブリー公爵である父も、最初は私の行動に激怒していたが、今では手のひらを返し、カイウス様との関係を全面的に祝福している。現金なものだとは思うが、結果として家との関係が修復されたのは、悪くない。

 そして、私たちは王都の大聖堂で、改めて結婚の式を挙げた。今度は、たくさんの人々の心からの祝福に包まれて。
 銀の指輪が、私の左手の薬指にはめられる。それは契約の証ではなく、永遠の愛の証。

 その夜、ヴォルフガング公爵邸の暖炉の前で、カイウス様は一枚の古い羊皮紙を取り出した。それは、二年前、私たちが交わした契約結婚の証書だった。
「これはもう、不要だな」
 彼は優しく微笑むと、その契約書を暖炉の炎の中へとくべた。
 羊皮紙は、あっという間に燃え上がり、灰となって消えていく。

 私たちの偽りの関係は終わり、ここから、本当の夫婦としての物語が始まるのだ。私は彼の胸に顔をうずめ、その確かな温もりを感じていた。
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