元・小野小町の悪役令嬢、破滅回避で嫁いだ仮面公爵が実は超美形。離婚前提のはずが和歌とコスメで領地を豊かにしたら世界一溺愛されています

黒崎隼人

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第11章:国を豊かにする女神の詩

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 国家顧問に就任した私とカイウス様は、二人で一つの頭脳のように機能し、王国全体の改革に乗り出した。カイウス様がその卓越した政治力と実行力で制度や法を整え、私が人々の心や土地の特性に寄り添った具体的な振興策を提案する。私たちのやり方は、まさに二人三脚だった。

 まずは、ヴォルフガング領の成功モデルを、国の他の貧しい地域に広めることから始めた。しかし、ただ同じことをするのではない。
「この地方は水が豊かですから、稲作を取り入れてはどうでしょう。お米を使った新しい料理も、私が考えますわ」
「こちらの山岳地帯では、良質な鉱石が眠っているようです。無理な採掘ではなく、職人たちの技術を高める工房を作り、付加価値の高い工芸品を作るのです」

 私はそれぞれの土地を訪れ、そこに住む人々と話し、その土地が持つ文化や可能性を見つけ出していった。そして、私がその土地の未来を祝して詠む即興の詩――和歌は、不思議な力を持っていた。
 私の詠む歌は、人々の心を一つにし、改革への希望と情熱を掻き立てた。領主と民の心を繋ぎ、時には、国境を接する隣国との緊張関係を和らげる、最高の外交の切り札にさえなった。

 ある時、長年水利権で争っていた隣国との会談の席で、私は両国の平和を願う歌を詠んだ。

『君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪は降りつつ』
(あなたのために、春の野に出て若菜を摘む私の袖に、雪が降りかかっています。この困難を乗り越え、共に春を迎えましょう)

 その詩に込められた真摯な祈りは、頑なだった相手国の王の心を動かし、長年の懸案だった水利問題は、平和的な協定を結ぶことで解決した。

 いつしか、私は民衆から「豊穣の女神」と呼ばれるようになっていた。かつて「国を惑わす悪役令嬢」と蔑まれたのが、嘘のようだ。
 けれど、そんな称号よりも、私にとってはカイウス様の存在の方がずっと大切だった。

「今日も見事だった、レティシア。君の言葉は、百万の兵に勝るな」
 公務を終えて執務室に戻ると、カイウス様が優しい眼差しで私を迎えてくれる。
「貴方様という最高のパートナーがいてくださるからですわ」
 私たちは、公私ともに、なくてはならない存在になっていた。彼が政治の表舞台で国を導き、私がその傍らで人々の心を支える。

 二人の活躍によって、王国は目に見えて豊かになり、国中に人々の笑顔が溢れていった。
 美貌に囚われ、孤独だった悪役令嬢は、今、自らの力で運命を切り開き、国中の人々の幸せを創造する存在となっていた。これ以上の幸福があるだろうか。私はカイウス様の手を取り、彼の瞳を見つめながら、心からの感謝を捧げた。
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