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第4話「盗賊猫と癒しの香り」
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フィリアとの絆を深めてから、俺の【調香】スキルは飛躍的に進化した。彼女の生命エネルギーを糧に、今までとは比べ物にならないほど強力な香りを創り出せるようになったのだ。森の魔物たちを操る「支配の魔香」も、より広範囲の、より強力な魔物に効果を発揮するようになった。
アジトである洞窟の周りは俺に服従した魔物たちが警備しており、もはや鉄壁の要塞と化している。フィリアとの生活も順調で、穏やかで甘美な日々が続いていた。
だが、一つ問題があった。食料だ。木の実やキノコ、そして狩りで得た魔物の肉だけでは栄養が偏ってしまう。特にフィリアには、もっと美味しいものを食べさせてやりたい。
「よし、少し遠いが麓の街まで行ってみるか」
俺は手なずけた魔物たちから得た情報で、森の出口の先に小さな街があることを知っていた。そこで保存食や調味料を手に入れようと考えたのだ。
「私もお供します、レン様」
「いや、フィリアはここで待っていてくれ。街には何があるか分からないし、君のような美しいエルフは目立つ。何かあってからでは遅い」
俺がそう言うと、フィリアは少し寂しそうな顔をしたが、素直にうなずいてくれた。
俺はフード付きのローブで顔を隠し、一人で街へと向かった。
街は森のすぐそばにあるとは思えないほど活気があった。市場には様々な品物が並び、人々の喧騒で満ちている。俺は人目を避けながら、露店で干し肉や塩、スパイスなどを買い求めた。
その帰り道だった。俺は路地裏で素早い動きを見せる一つの影に気づいた。小さな身体、しなやかな動き。その影はパン屋の店先から見事な手際でパンを一つ盗み、あっという間に人混みの中へと消えていった。
『盗賊か……』
興味本位で俺はその影を追った。相手は相当な手練れのようで、人混みや建物の陰を利用して巧みに姿をくらまそうとする。だが俺には【調香】スキルがある。相手が残した微かな体臭を辿ることで、その行方を正確に追うことができた。
やがてその影は街外れの廃墟へと入っていった。俺は息を潜めて後を追う。
廃墟の奥、崩れかけた壁の陰にその盗賊はいた。フードを取った顔を見て、俺は少し驚いた。相手は小柄だが、成熟した大人の女性だったのだ。
ぴんと立った猫の耳としなやかな尻尾。彼女は猫の獣人族だった。
女性は盗んだパンを大事そうに懐から取り出すと、それを半分にちぎり妹の口元へと運んだ。
「ほら、お食べ。今日は少し大きいのが手に入ったから」
「お姉ちゃん……ごほっ、ごほっ……」
毛布に横たわる女性はひどく咳き込んでいる。顔色も悪く、熱もあるようだ。
「大丈夫、これを食べれば元気になるから」
姉らしい女性は気丈に振る舞っているが、その表情には深い憂いが浮かんでいた。妹のために、盗みを働いていたのか。
『見て見ぬふりをするか……』
一度はそう思った。だが妹の苦しそうな咳を聞き、姉の必死な顔を見ていたら、追放されて絶望していた頃の自分と重なり、どうしても放っておけなかった。
俺は物音を立てて、彼女たちの前に姿を現した。
「誰!?」
姉は即座に懐からナイフを抜き、威嚇するように俺に向ける。その瞳は、警戒心に満ちた野良猫のようだった。
「落ち着け、危害を加えるつもりはない。ただ、お前の妹、かなり具合が悪そうだな」
俺が妹の方に視線を向けると、姉は妹を庇うように一歩前に出た。
「あんたに関係ない!さっさとあっちに行け!」
「医者には診せたのか?」
「……医者に診せる金なんて、あるわけないだろ!」
姉は叫ぶように言った。その声には悔しさと無力さが滲んでいる。
「俺が治してやろうか?」
「はあ?あんたが医者だって言うのかよ」
「医者じゃない。だが、薬を作るのは得意なんだ」
俺はそう言うと、懐から先日調合したばかりの「万能治癒の聖香」を取り出した。これはフィリアの生命エネルギーを元に創り出したもので、並の病気や怪我なら瞬時に治癒できる自信作だ。
瓶の蓋を開け、妹にゆっくりと近づく。
「待て!そいつに何をする気だ!」
姉がナイフを構えて止めようとするが、俺はそれを無視して妹の顔の近くで瓶を傾けた。ふわりと森の新緑のような、爽やかで生命力に満ちた香りが広がる。
妹の苦しそうな呼吸が、少しずつ穏やかになっていく。真っ赤だった顔色も徐々に健康的な色を取り戻し始めた。
「え……?」
姉は目の前で起きている信じられない光景に、呆然と立ち尽くしている。
やがて妹はすーっと穏やかな寝息を立て始めた。もう咳はしていない。
「眠っただけだ。だが、目が覚める頃にはすっかり良くなっているはずだ」
「……あんた、一体……何者なんだ……?」
姉はナイフを下ろし、震える声で尋ねた。
「レンだ。ただの調香師だよ」
「……あたしはミナ。こいつは妹のミアだ。……その、ありがとう。ミアを助けてくれて」
ミナは素直に頭を下げた。警戒心はまだ完全には解けていないようだが、敵意はもう感じられない。
「どうして盗みなんてしていたんだ?」
「……ミアの薬代を稼ぐためだ。でも、まともな仕事なんて獣人には回ってこない。だから、これしか……」
ミナは俯いて唇を噛み締めた。この街でも獣人族は差別されているのだろう。
「行くあてがないなら、俺のところに来い。食事も寝床も用意してやる。もちろん、ミアも一緒だ」
「……え?」
「その代わり、お前のその俊敏さと情報収集能力を貸してほしい。どうだ?」
俺の提案に、ミナはしばらく黙って考えていたが、やがて顔を上げた。その琥珀色の瞳には、強い決意の光が宿っている。
「……分かった。あんたを信じる。あたしたち姉妹の面倒を見てくれるなら、あたしは何でもする」
こうして、俺の仲間は二人になった。
アジトに戻り、フィリアにミナとミアを紹介すると、彼女は嫌な顔一つせず優しく二人を迎え入れてくれた。特にまだ病み上がりのミアのことは、実の妹のように甲斐甲斐しく世話を焼いている。
ミナはすぐに俺の右腕として活躍し始めた。彼女の身軽さは森での素材集めに大いに役立ったし、街から仕入れてくる情報はガイアスたちの動向を探る上で非常に重要だった。
その夜、ミアとフィリアが寝静まった後、俺はミナと二人きりで焚き火の前に座っていた。
「なあ、レン」
「ん?」
「本当に良かったのか?あたしたちみたいな厄介者を引き取って」
「厄介だなんて思ってないさ。お前は優秀なパートナーだ」
「……ふーん」
ミナはどこか不満そうに鼻を鳴らすと、猫のようにしなやかな動きで俺の隣にぴたりと身を寄せた。そして、俺の腕に自分の腕を絡めてくる。
「パートナー、だけか?」
吐息がかかるほどの距離で、ミナが俺の顔を覗き込む。その琥珀色の瞳は熱っぽく潤んでいた。
「……どういう意味だ?」
「ミアを助けてもらった恩だけじゃない。あたしは、レン、あんた自身に惚れたんだ。強くて、優しくて、不思議な力を持ってて……。だから、あたしもあんたの女にしてほしい」
大胆な告白に、俺は思わず息を呑んだ。彼女の身体から甘く少し野性的な、ムスクのような香りが立ち上り、俺の理性を刺激する。
フィリアとは違う、直接的で抗いがたい魅力。俺は、その誘惑に逆らえなかった。
俺がミナの顎に手を添え唇を近づけると、彼女は嬉しそうに目を細め、自分からその唇を重ねてきた。
フィリアとのそれが清らかで神聖な儀式だったとすれば、ミナとの交わりは、本能と本能がぶつかり合うどこまでも原始的なものだった。
彼女の獣人ならではのしなやかで引き締まった身体は、触れる箇所すべてが官能的で、俺の欲望を際限なく煽った。
「んっ……れん……もっと……!」
ミナは恥ずかしがる素振りも見せず、快感をありのままに声にし、身体で表現する。その野生的な姿が、俺をさらに興奮させた。
彼女の生命エネルギーもまた、フィリアとは質の違う鋭く力強いものだった。それは俺の【調香】スキルと交じり合い、魔物をより強力に支配する「魔香」を生み出すための新たな糧となった。
月明かりの下、獣のように求め合う俺たち。フィリアという「聖」の伴侶に加え、ミナという「魔」の伴侶を得たことで、俺の力はさらなる高みへと昇り詰めていく。
甘く濃密なハーレムが、また一人、その花を増やした夜だった。
アジトである洞窟の周りは俺に服従した魔物たちが警備しており、もはや鉄壁の要塞と化している。フィリアとの生活も順調で、穏やかで甘美な日々が続いていた。
だが、一つ問題があった。食料だ。木の実やキノコ、そして狩りで得た魔物の肉だけでは栄養が偏ってしまう。特にフィリアには、もっと美味しいものを食べさせてやりたい。
「よし、少し遠いが麓の街まで行ってみるか」
俺は手なずけた魔物たちから得た情報で、森の出口の先に小さな街があることを知っていた。そこで保存食や調味料を手に入れようと考えたのだ。
「私もお供します、レン様」
「いや、フィリアはここで待っていてくれ。街には何があるか分からないし、君のような美しいエルフは目立つ。何かあってからでは遅い」
俺がそう言うと、フィリアは少し寂しそうな顔をしたが、素直にうなずいてくれた。
俺はフード付きのローブで顔を隠し、一人で街へと向かった。
街は森のすぐそばにあるとは思えないほど活気があった。市場には様々な品物が並び、人々の喧騒で満ちている。俺は人目を避けながら、露店で干し肉や塩、スパイスなどを買い求めた。
その帰り道だった。俺は路地裏で素早い動きを見せる一つの影に気づいた。小さな身体、しなやかな動き。その影はパン屋の店先から見事な手際でパンを一つ盗み、あっという間に人混みの中へと消えていった。
『盗賊か……』
興味本位で俺はその影を追った。相手は相当な手練れのようで、人混みや建物の陰を利用して巧みに姿をくらまそうとする。だが俺には【調香】スキルがある。相手が残した微かな体臭を辿ることで、その行方を正確に追うことができた。
やがてその影は街外れの廃墟へと入っていった。俺は息を潜めて後を追う。
廃墟の奥、崩れかけた壁の陰にその盗賊はいた。フードを取った顔を見て、俺は少し驚いた。相手は小柄だが、成熟した大人の女性だったのだ。
ぴんと立った猫の耳としなやかな尻尾。彼女は猫の獣人族だった。
女性は盗んだパンを大事そうに懐から取り出すと、それを半分にちぎり妹の口元へと運んだ。
「ほら、お食べ。今日は少し大きいのが手に入ったから」
「お姉ちゃん……ごほっ、ごほっ……」
毛布に横たわる女性はひどく咳き込んでいる。顔色も悪く、熱もあるようだ。
「大丈夫、これを食べれば元気になるから」
姉らしい女性は気丈に振る舞っているが、その表情には深い憂いが浮かんでいた。妹のために、盗みを働いていたのか。
『見て見ぬふりをするか……』
一度はそう思った。だが妹の苦しそうな咳を聞き、姉の必死な顔を見ていたら、追放されて絶望していた頃の自分と重なり、どうしても放っておけなかった。
俺は物音を立てて、彼女たちの前に姿を現した。
「誰!?」
姉は即座に懐からナイフを抜き、威嚇するように俺に向ける。その瞳は、警戒心に満ちた野良猫のようだった。
「落ち着け、危害を加えるつもりはない。ただ、お前の妹、かなり具合が悪そうだな」
俺が妹の方に視線を向けると、姉は妹を庇うように一歩前に出た。
「あんたに関係ない!さっさとあっちに行け!」
「医者には診せたのか?」
「……医者に診せる金なんて、あるわけないだろ!」
姉は叫ぶように言った。その声には悔しさと無力さが滲んでいる。
「俺が治してやろうか?」
「はあ?あんたが医者だって言うのかよ」
「医者じゃない。だが、薬を作るのは得意なんだ」
俺はそう言うと、懐から先日調合したばかりの「万能治癒の聖香」を取り出した。これはフィリアの生命エネルギーを元に創り出したもので、並の病気や怪我なら瞬時に治癒できる自信作だ。
瓶の蓋を開け、妹にゆっくりと近づく。
「待て!そいつに何をする気だ!」
姉がナイフを構えて止めようとするが、俺はそれを無視して妹の顔の近くで瓶を傾けた。ふわりと森の新緑のような、爽やかで生命力に満ちた香りが広がる。
妹の苦しそうな呼吸が、少しずつ穏やかになっていく。真っ赤だった顔色も徐々に健康的な色を取り戻し始めた。
「え……?」
姉は目の前で起きている信じられない光景に、呆然と立ち尽くしている。
やがて妹はすーっと穏やかな寝息を立て始めた。もう咳はしていない。
「眠っただけだ。だが、目が覚める頃にはすっかり良くなっているはずだ」
「……あんた、一体……何者なんだ……?」
姉はナイフを下ろし、震える声で尋ねた。
「レンだ。ただの調香師だよ」
「……あたしはミナ。こいつは妹のミアだ。……その、ありがとう。ミアを助けてくれて」
ミナは素直に頭を下げた。警戒心はまだ完全には解けていないようだが、敵意はもう感じられない。
「どうして盗みなんてしていたんだ?」
「……ミアの薬代を稼ぐためだ。でも、まともな仕事なんて獣人には回ってこない。だから、これしか……」
ミナは俯いて唇を噛み締めた。この街でも獣人族は差別されているのだろう。
「行くあてがないなら、俺のところに来い。食事も寝床も用意してやる。もちろん、ミアも一緒だ」
「……え?」
「その代わり、お前のその俊敏さと情報収集能力を貸してほしい。どうだ?」
俺の提案に、ミナはしばらく黙って考えていたが、やがて顔を上げた。その琥珀色の瞳には、強い決意の光が宿っている。
「……分かった。あんたを信じる。あたしたち姉妹の面倒を見てくれるなら、あたしは何でもする」
こうして、俺の仲間は二人になった。
アジトに戻り、フィリアにミナとミアを紹介すると、彼女は嫌な顔一つせず優しく二人を迎え入れてくれた。特にまだ病み上がりのミアのことは、実の妹のように甲斐甲斐しく世話を焼いている。
ミナはすぐに俺の右腕として活躍し始めた。彼女の身軽さは森での素材集めに大いに役立ったし、街から仕入れてくる情報はガイアスたちの動向を探る上で非常に重要だった。
その夜、ミアとフィリアが寝静まった後、俺はミナと二人きりで焚き火の前に座っていた。
「なあ、レン」
「ん?」
「本当に良かったのか?あたしたちみたいな厄介者を引き取って」
「厄介だなんて思ってないさ。お前は優秀なパートナーだ」
「……ふーん」
ミナはどこか不満そうに鼻を鳴らすと、猫のようにしなやかな動きで俺の隣にぴたりと身を寄せた。そして、俺の腕に自分の腕を絡めてくる。
「パートナー、だけか?」
吐息がかかるほどの距離で、ミナが俺の顔を覗き込む。その琥珀色の瞳は熱っぽく潤んでいた。
「……どういう意味だ?」
「ミアを助けてもらった恩だけじゃない。あたしは、レン、あんた自身に惚れたんだ。強くて、優しくて、不思議な力を持ってて……。だから、あたしもあんたの女にしてほしい」
大胆な告白に、俺は思わず息を呑んだ。彼女の身体から甘く少し野性的な、ムスクのような香りが立ち上り、俺の理性を刺激する。
フィリアとは違う、直接的で抗いがたい魅力。俺は、その誘惑に逆らえなかった。
俺がミナの顎に手を添え唇を近づけると、彼女は嬉しそうに目を細め、自分からその唇を重ねてきた。
フィリアとのそれが清らかで神聖な儀式だったとすれば、ミナとの交わりは、本能と本能がぶつかり合うどこまでも原始的なものだった。
彼女の獣人ならではのしなやかで引き締まった身体は、触れる箇所すべてが官能的で、俺の欲望を際限なく煽った。
「んっ……れん……もっと……!」
ミナは恥ずかしがる素振りも見せず、快感をありのままに声にし、身体で表現する。その野生的な姿が、俺をさらに興奮させた。
彼女の生命エネルギーもまた、フィリアとは質の違う鋭く力強いものだった。それは俺の【調香】スキルと交じり合い、魔物をより強力に支配する「魔香」を生み出すための新たな糧となった。
月明かりの下、獣のように求め合う俺たち。フィリアという「聖」の伴侶に加え、ミナという「魔」の伴侶を得たことで、俺の力はさらなる高みへと昇り詰めていく。
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※小説家になろうにも掲載しています。
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