「役立たず」と追放された調香師、覚醒した【魔香】スキルで聖女もエルフも完全支配する

黒崎隼人

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第5話「忍び寄る影と復讐の序曲」

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 フィリアとミナを仲間に加え、俺の森での生活は確固たるものになっていた。洞窟を拡張して生活環境も改善され、さながら小さな王国のようだ。日中はミナが持ってくる情報を元に新たな香りの開発に勤しみ、夜はフィリアとミナ、二人の美女との甘く濃密な時間に溺れる。満ち足りた日々。だが、俺は決して忘れていなかった。俺を追放したガイアスたちへの復讐を。

「レン、例の勇者パーティの情報が入ったニャ」

 アジトに駆け込んできたミナが、一枚の羊皮紙を俺に手渡す。ミナが街の情報屋から買ってきたものだった。

「ほう、どれどれ……」

 羊皮紙に目を通した俺の口元に、自然と笑みが浮かんだ。

「ははっ、苦戦しているようだな」

 そこには勇者ガイアス一行が魔王軍の幹部との戦いで苦戦を強いられ、多大な被害を出していると書かれていた。俺という雑用係がいなくなったことでポーションの管理や物資の補給が滞り、パーティ全体の機能が低下しているらしい。

「自業自得だ。だが、これだけじゃ足りない。もっとだ。もっとあいつらを絶望の底に叩き落としてやらないと、俺の気は済まない」
「レン様、あまり無理はなさらないでください」

 俺の呟きを聞いていたフィリアが、心配そうな顔で寄り添ってくる。その優しさが、復讐心で黒く染まった俺の心を少しだけ癒してくれた。

「大丈夫だよ、フィリア。俺はもう、一人じゃないからな」

 俺は彼女の頭を優しく撫でた。
 俺は本格的な復讐計画を開始することにした。手始めに、開発した「狂乱の魔香」を勇者パーティの進軍ルート上にある森に散布させる。この香りを嗅いだ魔物は凶暴性が増し、連携して人間を襲うようになるのだ。
 俺は手なずけた鳥の魔物の群れに、魔香を染み込ませた布を運ばせた。これで、俺の存在を悟られることなく遠隔で彼らを妨害できる。
 数日後、ミナがもたらした情報は俺の計画が成功したことを示していた。

「勇者パーティ、魔物の連携攻撃に遭って半壊状態らしいニャ。特に聖女の回復魔法が追いつかなくて、前線が崩壊したって話だ」
「そうか。セレス、今頃どんな顔をしているだろうな」

 俺の脳裏に、俺を見下していた聖女の顔が浮かぶ。彼女が苦しむ姿を想像するだけで胸がすく思いだった。
 だが、俺の復讐はまだ始まったばかりだ。次なる一手として、俺はさらに強力な香りを開発した。その名も「夢幻の香」。これを吸い込んだ人間は気力を失い、ただ甘い夢を見ながらゆっくりと衰弱していくという、たちの悪い代物だ。
 俺はこの香りを王都へと続く風に乗せて拡散させた。直接的な被害はないが、王都周辺の村々で原因不明の奇病が流行るという噂が流れれば、王国も勇者パーティも無視できないはずだ。俺という未知の脅威の存在を、彼らに知らしめるための布石だった。

 案の定、王国は原因不明の奇病の調査に乗り出した。そして、その調査団がこの黒の森に向かっているという情報をミナが掴んできた。

「調査団だって?面倒なことになったな」
「どうする、レン?迎え撃つかニャ?」

 ミナが好戦的な目で聞いてくる。

「いや、待て。相手の正体が分かるまでは下手に動かない方がいい。もしかしたら、利用できるかもしれない」

 俺は調査団をアジトに誘い込むことにした。森の入り口に微量の「夢幻の香」と同じ成分を持つ花の香りを漂わせ、彼らをここまで誘導する罠を仕掛けたのだ。
 数日後、罠にかかった調査団が俺のアジトである洞窟の前に現れた。その数およそ十名。騎士たちに護衛された中心人物は、意外にも小柄な女性だった。
 ごつい革の作業着に身を包み、背丈はフィリアよりも低い。しかしその瞳は知性に溢れ、鋭い光を放っていた。赤茶色の髪を無造作にお団子にまとめ、顔には少し煤汚れがついている。ドワーフ族だ。

「ここか……香りの発生源は。一体、何者が……」

 彼女が呟いた時、俺は魔物たちを引き連れて姿を現した。

「ようこそ、辺鄙な森の奥へ。王国からの調査団御一行様」

 俺の登場に騎士たちが一斉に剣を抜く。だが、ドワーフの女性は慌てることなく冷静に俺を観察していた。

「お主がこの香りの主か。わしはテトラ。王国の魔道具技師だ。単刀直入に聞く。村で流行っている奇病は、お主の仕業か?」

 名乗ったテトラの口調はぶっきらぼうだが、その瞳には敵意よりも強い好奇心の色が浮かんでいる。

「そうだと言ったら?」
「……ほう。あっさりと認めるか。ならば、その目的は何だ?魔王軍の手先か?」
「まさか。俺はただ、俺を裏切った奴らに復讐しているだけだ。勇者ガイアスと、聖女セレスにな」

 俺がその名を口にすると、テトラの目がわずかに見開かれた。

「……あの傲慢勇者と腹黒聖女に、か……。なるほど、道理で。わしもあやつらは前々から気に食わなかった」

 テトラは意外にもガイアスたちに悪感情を抱いていたようだ。

「わしはお主の敵ではない。むしろ、その未知の技術……香りで精神に干渉する力に強い興味がある。どうだ、わしと手を組まんか?」
「手を組む?」
「うむ。お主の【調香】とわしの魔道具技術を組み合わせれば、もっと面白いことができると思わんか?例えば、香りの効果を特定の対象にだけ、それも超長距離から発揮させるとか」

 テトラの提案は非常に魅力的だった。彼女の技術があれば、俺の復讐はより確実かつ大規模なものになるだろう。
 俺は後ろに控えていたフィリアとミナに視線を送る。二人は、俺の判断に任せると言うように静かにうなずいた。

「いいだろう。その話、乗った」

 俺が承諾すると、テトラはニヤリと口角を上げた。

「話が早くて助かる。では改めてよろしく頼むぞ、レン殿。こいつらは邪魔だから、ここで眠っていてもらおうか」

 テトラが指を鳴らすと、背後の騎士たちがまるで糸が切れたようにその場に倒れ、眠りこけてしまった。彼女が隠し持っていた魔道具の効果らしい。
 こうして、俺のハーレムに三人目の仲間が加わった。王国の魔道具技師、テトラ。彼女の加入により、俺の復讐計画は新たなステージへと突入する。
 ガイアス、セレス。お前たちの絶望は、まだ始まったばかりだ。
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