「役立たず」と追放された調香師、覚醒した【魔香】スキルで聖女もエルフも完全支配する

黒崎隼人

文字の大きさ
11 / 13

第10話「楽園の創造主と永遠の香り」

しおりを挟む
 楽園を築き外界との接触を絶ってから、どれほどの時が流れただろうか。森の中では季節の移ろいも緩やかで、時間の感覚さえ曖昧になってくる。
 俺たちの生活は、穏やかそのものだった。
 朝はセレスが淹れてくれる極上の茶で目覚め、フィリアが世話をする薬草園を散歩する。昼はテトラと新しい香りの研究に没頭し、時にはミナと共に森を駆け巡って新たな素材を探しに行く。
 そして夜は四人の愛する女たちと、甘く濃密な時間を過ごす。彼女たちはそれぞれが異なる魅力と香りを持ち、俺を飽きさせることはなかった。
 フィリアの清らかで甘い花の香り。ミナの野性的でスパイシーなムスクの香り。テトラの少し無骨で、けれど落ち着く鉱石と油の香り。そしてセレスの、背徳的で官能的な甘い蜜の香り。
 彼女たちとの交わりによって精製される「愛の蜜」は俺の【調香】スキルの源となり、この楽園を維持するためのエネルギーとなっていた。俺たちが愛し合うほどにこの森は豊かになり、楽園はより強固なものとなっていく。
 ある晴れた日の午後、俺はフィリアと共に森の中心にある巨大な湖のほとりにいた。この湖の水は俺が創り出した「生命の聖香」の影響で常に清らかで、万病を癒す力を持っている。

「レン様、見てください。あそこに、新しい花の蕾が」

 フィリアが指さす先には、今まで見たこともない七色に輝く不思議な花の蕾があった。これもまた、俺たちの愛が生み出した新たな生命だ。

「綺麗だな。きっと、素晴らしい香りを咲かせてくれるだろう」

 俺が微笑むと、フィリアは幸せそうに俺の腕に寄り添った。

「レン様がここにいてくださるから、この森はこんなにも美しいのです。私は、あなたと出会えて本当に幸せです」
「俺の方こそだよ、フィリア。お前がいなければ、俺はとっくに絶望して死んでいた」

 俺たちは言葉もなくしばらく湖を眺めていた。
 その時、ミナが大慌てで俺たちの元へ駆け寄ってきた。

「レン!大変だニャ!結界の外に、人間が倒れてる!」
「人間だと?」

 ミナに案内されて森の境界へ行くと、そこには一人の老婆が倒れていた。身なりは粗末で、ひどく衰弱しているようだ。テトラの結界は敵意を持つ者を弾くが、助けを求めるような弱い存在は稀に中へ迷い込ませてしまうことがある。
 俺は老婆をアジトへ運び、セレスに介抱させた。「生命の聖香」を少量含ませた水を飲ませると、老婆はすぐに意識を取り戻した。

「……ここは……天国、かのう……?」

 老婆は俺たちの豪華なアジトと美女たちの姿を見て、呆然とつぶやいた。
 彼女の話によると、外の世界では俺が勇者パーティを壊滅させてから数十年という時が流れているらしかった。魔王軍との戦いは泥沼化し、王国は疲弊。人々は重税と終わらない戦いに苦しんでいるという。老婆はそんな世界に絶望し、死に場所を求めてこの森にやってきたのだそうだ。

「なあ、レン。このお婆さん、どうするニャ?」
「決まっているだろう。ここに住まわせてやればいい」

 俺の即決に皆は驚いた顔をしたが、誰も反対はしなかった。
 老婆を保護したことをきっかけに、俺たちの楽園には少しずつ外の世界から人が流れ着くようになった。戦いに疲れた兵士、病に苦しむ子供、居場所を失った亜人たち。俺は彼らを皆、分け隔てなく受け入れた。
 彼らはこの楽園の豊かさと平和に驚き、やがて俺を「森神様」と呼び敬うようになった。
 俺は彼らに香りの力で病や怪我を癒し、豊かな食料を与えた。その代わり彼らには楽園の維持を手伝ってもらった。人間もエルフも獣人もドワーフも、そして魔物たちも、ここでは皆が平等で互いに助け合って暮らしている。
 それはかつて俺が夢見た、理想郷そのものの姿だった。
 ある満月の夜、俺は楽園を見下ろす丘の上で四人の妻たちと共に月を眺めていた。今や彼女たちは皆、俺の子供を身ごもっている。エルフの血を引く子、獣人の血を引く子、ドワーフの血を引く子、そして人間の血を引く子。この楽園は次の世代へと受け継がれ、さらに豊かになっていくだろう。

「なあ、レン様」

 セレスが大きくなったお腹を愛おしそうに撫でながら、俺に話しかけてきた。

「後悔は、していませんか?私のような女を、そばに置いて」
「後悔?するわけないだろう。お前は俺が救った、俺だけの大事な女だ」

 俺が彼女の唇に優しくキスをすると、彼女は涙を浮かべて微笑んだ。
 追放され、絶望の淵に立たされたかつての俺。
 だが、あの出来事があったからこそ俺は真の力に目覚め、かけがえのない伴侶たちと出会い、この楽園を築くことができた。そう考えるとガイアスたちへの復讐心も、今では遠い過去の出来事のように感じられた。
 彼らは俺の物語を始めるための、ただのきっかけに過ぎなかったのだ。

「これからも、ずっと一緒にいてくれるか?」

 俺が四人に向かって尋ねると、彼女たちは声を揃えて答えた。

「「「「はい、レン(様)!」」」」

 彼女たちの身体から放たれる、幸福に満ちた極上の愛の香り。
 それは、この楽園を永遠に照らし続ける至高の香りだ。
 俺は愛する妻たちを抱きしめ、夜空に輝く月を見上げた。
 俺の物語はここで一つの終わりを迎える。だが俺と彼女たちが紡ぐ、甘く官能的な香りの物語は、この楽園で永遠に続いていくのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...