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番外編「初めての嫉妬」
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楽園での穏やかな日々が続くある日のこと。俺はテトラと共に新しい香りの研究に没頭していた。
「うーむ、この『太陽石』のエネルギー抽出がうまくいかん……。もう少し、触媒の純度を上げられんかのう」
テトラが唸りながらフラスコの中の液体を睨んでいる。
「純度か……。フィリアに頼んで、特別に濃い生命エネルギーを分けてもらうか」
俺がそう呟いた時だった。工房の入り口からミナがひょっこりと顔を出した。
「レン、ちょっといいかニャ?」
「どうした、ミナ。何か急ぎの用か?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど……その、フィリアばっかりずるいニャ!」
ミナは頬をぷくっと膨らませてそう言った。
「ずるいって、何がだ?」
「だって、レンはいつも香りのことでフィリアとばっかり一緒じゃないか!あたしだって、レンの役に立ちたいのに!」
どうやら俺が研究のことでフィリアに頼ることが多いのが、ミナは不満らしい。嫉妬、というやつだろうか。猫の耳をぺたりと伏せ、不満げに尻尾をぱたぱたさせている姿は、可愛らしくて思わず笑みがこぼれてしまう。
「はは、悪い。ミナの力もいつも頼りにしているさ。お前が持ってきてくれる情報や素材がなければ、研究は進まないからな」
「……口先だけだニャ」
「そんなことはない。そうだ、じゃあ今日は、お前と一緒に新しい素材を探しに行こうか。東の森に珍しい光る苔があるらしいんだ」
俺がそう提案すると、ミナの耳がぴくんと立った。
「ほんと!?」
「ああ、本当だ。テトラ、すまないが今日の研究は中断だ」
「うむ、構わんぞ。たまには息抜きも必要じゃろう。それに、わしもこいつの解析に少し時間がかかりそうじゃしな」
テトラは快く送り出してくれた。
俺はミナと共に東の森へと向かった。二人きりで出かけるのは久しぶりだ。ミナは終始ご機嫌で、俺の隣で楽しそうに鼻歌を歌っている。
「なあ、レン」
森の奥深く、目的の光る苔が生えている洞窟の前でミナが不意に立ち止まった。
「ん?」
「あたしのこと、ちゃんと見ててくれてるかニャ?」
その琥珀色の瞳が少し不安そうに揺れている。フィリアやテトラ、そしてセレスと、俺の周りにはそれぞれ特別な役割を持つ女たちがいる。その中で、自分はちゃんとレンに必要な存在だと思われているのか、不安になったのかもしれない。
俺はそんな彼女の健気な想いが愛おしくて、たまらなくなった。
俺はミナの身体をそっと引き寄せ、強く抱きしめた。
「当たり前だろう。お前は俺が最初に見つけた、俺だけの俊敏な猫だ。誰よりも信頼している」
「レン……」
「それに、お前のその野性的な香りが、俺は一番好きだ」
俺が耳元で囁くと、ミナは顔を真っ赤にして俺の胸に顔をうずめた。
「……ばか」
小さな声でそう呟く彼女の身体は、小刻みに震えている。
洞窟の中、青白く光る苔が幻想的な雰囲気を醸し出している。俺たちはその光に照らされながら、どちらからともなく唇を重ねた。
ミナとのキスはいつも情熱的で、少し強引だ。だが今日はどこか甘えるような、愛おしさがこもっているように感じられた。
苔の絨毯の上に彼女を優しく押し倒し、俺たちは夢中で互いを求め合った。嫉妬から始まった今日の出来事は、結果的に俺たちの絆をさらに深めることになった。
「レン、好きだニャ」
汗ばんだ肌を寄せ合いながら、ミナが幸せそうに囁く。
「ああ、俺もだ、ミナ」
この楽園では、嫉妬さえも俺たちの愛を深めるためのスパイスになる。
帰路につく頃には、ミナはいつもの快活な笑顔を取り戻していた。俺の腕にしっかりと絡みつき、今日の冒険の成果である光る苔が入った袋を得意げに揺らしている。
アジトに戻ると、フィリアが少しだけ、本当に少しだけ拗ねたような顔で俺たちを迎えてくれたのは、また別の話だ。
どうやら俺のハーレムは、まだまだ退屈させてくれそうにない。
「うーむ、この『太陽石』のエネルギー抽出がうまくいかん……。もう少し、触媒の純度を上げられんかのう」
テトラが唸りながらフラスコの中の液体を睨んでいる。
「純度か……。フィリアに頼んで、特別に濃い生命エネルギーを分けてもらうか」
俺がそう呟いた時だった。工房の入り口からミナがひょっこりと顔を出した。
「レン、ちょっといいかニャ?」
「どうした、ミナ。何か急ぎの用か?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど……その、フィリアばっかりずるいニャ!」
ミナは頬をぷくっと膨らませてそう言った。
「ずるいって、何がだ?」
「だって、レンはいつも香りのことでフィリアとばっかり一緒じゃないか!あたしだって、レンの役に立ちたいのに!」
どうやら俺が研究のことでフィリアに頼ることが多いのが、ミナは不満らしい。嫉妬、というやつだろうか。猫の耳をぺたりと伏せ、不満げに尻尾をぱたぱたさせている姿は、可愛らしくて思わず笑みがこぼれてしまう。
「はは、悪い。ミナの力もいつも頼りにしているさ。お前が持ってきてくれる情報や素材がなければ、研究は進まないからな」
「……口先だけだニャ」
「そんなことはない。そうだ、じゃあ今日は、お前と一緒に新しい素材を探しに行こうか。東の森に珍しい光る苔があるらしいんだ」
俺がそう提案すると、ミナの耳がぴくんと立った。
「ほんと!?」
「ああ、本当だ。テトラ、すまないが今日の研究は中断だ」
「うむ、構わんぞ。たまには息抜きも必要じゃろう。それに、わしもこいつの解析に少し時間がかかりそうじゃしな」
テトラは快く送り出してくれた。
俺はミナと共に東の森へと向かった。二人きりで出かけるのは久しぶりだ。ミナは終始ご機嫌で、俺の隣で楽しそうに鼻歌を歌っている。
「なあ、レン」
森の奥深く、目的の光る苔が生えている洞窟の前でミナが不意に立ち止まった。
「ん?」
「あたしのこと、ちゃんと見ててくれてるかニャ?」
その琥珀色の瞳が少し不安そうに揺れている。フィリアやテトラ、そしてセレスと、俺の周りにはそれぞれ特別な役割を持つ女たちがいる。その中で、自分はちゃんとレンに必要な存在だと思われているのか、不安になったのかもしれない。
俺はそんな彼女の健気な想いが愛おしくて、たまらなくなった。
俺はミナの身体をそっと引き寄せ、強く抱きしめた。
「当たり前だろう。お前は俺が最初に見つけた、俺だけの俊敏な猫だ。誰よりも信頼している」
「レン……」
「それに、お前のその野性的な香りが、俺は一番好きだ」
俺が耳元で囁くと、ミナは顔を真っ赤にして俺の胸に顔をうずめた。
「……ばか」
小さな声でそう呟く彼女の身体は、小刻みに震えている。
洞窟の中、青白く光る苔が幻想的な雰囲気を醸し出している。俺たちはその光に照らされながら、どちらからともなく唇を重ねた。
ミナとのキスはいつも情熱的で、少し強引だ。だが今日はどこか甘えるような、愛おしさがこもっているように感じられた。
苔の絨毯の上に彼女を優しく押し倒し、俺たちは夢中で互いを求め合った。嫉妬から始まった今日の出来事は、結果的に俺たちの絆をさらに深めることになった。
「レン、好きだニャ」
汗ばんだ肌を寄せ合いながら、ミナが幸せそうに囁く。
「ああ、俺もだ、ミナ」
この楽園では、嫉妬さえも俺たちの愛を深めるためのスパイスになる。
帰路につく頃には、ミナはいつもの快活な笑顔を取り戻していた。俺の腕にしっかりと絡みつき、今日の冒険の成果である光る苔が入った袋を得意げに揺らしている。
アジトに戻ると、フィリアが少しだけ、本当に少しだけ拗ねたような顔で俺たちを迎えてくれたのは、また別の話だ。
どうやら俺のハーレムは、まだまだ退屈させてくれそうにない。
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