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番外編1「レオニダス、初めてのケーキ作り」
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イザベラの誕生日が、間近に迫っていた。連盟の執務室は、祝いの花や贈り物で溢れかえっていたが、副連盟長のレオニダスは、一人だけ浮かない顔をしていた。他の連中と同じように、ありきたりの物を贈るだけでは、どうにも気が済まなかったのだ。
(あいつが、本当に喜ぶもの……。俺にしか、できないもの……)
悩んだ末、彼は、一つの結論に達した。以前、イザベラが「たまに、甘いものが無性に食べたくなるのよね」と、幸せそうに菓子を頬張っていたのを思い出したのだ。
「よし、ケーキ、とやらを作ってみるか」
それは、獣人族の、しかも武闘派ギルドのマスターにとっては、ワイバーン討伐よりも無謀な挑戦だった。
レオニダスは、こっそりとギルドの厨房を借りると、料理番から聞きかじった知識を頼りに、ケーキ作りに取り掛かった。
最初の難関は、生クリームの泡立てだった。
「こう、空気を含ませるように混ぜるんだよな……?」
彼は、巨大なボウルに生クリームを入れ、泡立て器を握りしめた。しかし、獣人族の腕力は、繊細な作業には全く向いていなかった。
ガシャガシャガシャッ!
凄まじい勢いでかき混ぜられた生クリームは、泡立つどころか、みるみるうちに分離し、黄色い塊と液体に分かれてしまった。
「な、なんだこりゃ!? バターか!?」
そう、それはバターだった。彼の腕力は、意図せずしてバターを生み出してしまったのだ。
次は、生地作り。レシピには「卵と砂糖を、白くもったりとするまで混ぜる」とある。
「白くもったり、だな! 任せろ!」
今度こそ失敗しまいと、彼は力いっぱい卵をかき混ぜた。しかし、またしても力が入りすぎ、ボウルから中身が飛び散り、厨房の壁と、彼の顔をべちゃべちゃに汚した。
「くそっ!」
さらに、小麦粉の分量を間違え、焼き上がったスポンジ生地は、カチカチの岩のように硬くなってしまった。叩くと、コンコンと乾いた音がする。もはや、鈍器だ。
悪戦苦闘するレオニダスの姿を、厨房の入り口から、ギルドの仲間たちが心配そうに覗いていた。
「マスター、どうしたんだ? 何か手伝おうか?」
「う、うるせえ! これは俺一人の戦いだ!」
強がるレオニダスだったが、その顔は小麦粉と卵で真っ白。もはや、威厳も何もあったものではない。
見かねた仲間の一人が、そっと新しい材料と、正しいレシピが書かれた本を差し出した。
「……まあ、手伝ってやらんでもないぜ、マスター」
「……おう」
ぶっきらぼうなやり取りの後、結局、ギルドの仲間たち総出でのケーキ作りが始まった。誰かが卵を泡立て、誰かが小麦粉をふるい、誰かがオーブンの火加減を見る。
一人では無謀な挑戦も、仲間と一緒なら、楽しい共同作業に変わる。
そして、ようやく、一つのケーキが完成した。形は少し不格好で、クリームの塗り方も雑だったが、たくさんのフルーツが飾られた、心のこもったケーキだった。
***
誕生日当日。レオニダスは、大きな箱を抱え、緊張した面持ちでイザベラの執務室を訪れた。
「イザベラ……その、なんだ。誕生日、おめでとう」
彼は、箱を差し出しながら、そっぽを向く。
「まあ! レオニダス、ありがとう。これは何かしら?」
イザベラが箱を開けると、中から現れた手作り感満載のケーキに、彼女はぱっと顔を輝かせた。
「すごい! ケーキじゃない! もしかして、あなたが?」
「……まあな。少し、仲間にも手伝ってもらったが」
イザベラは、心から嬉しそうに微笑むと、早速一口、ケーキを頬張った。
「……美味しい!」
その満面の笑みに、レオニダスの苦労は、すべて吹き飛んだ。
「そうか……。なら、よかった」
照れくさそうに頭を掻く彼の顔は、夕焼けよりも赤く染まっていた。
不器用な獣人王からの、最高に甘くて、そして、少しだけバターの風味がする、心のこもった誕生日プレゼント。それは、どんな高価な贈り物よりも、イザベラの心を温かく満たしてくれた、微笑ましい一日だった。
(あいつが、本当に喜ぶもの……。俺にしか、できないもの……)
悩んだ末、彼は、一つの結論に達した。以前、イザベラが「たまに、甘いものが無性に食べたくなるのよね」と、幸せそうに菓子を頬張っていたのを思い出したのだ。
「よし、ケーキ、とやらを作ってみるか」
それは、獣人族の、しかも武闘派ギルドのマスターにとっては、ワイバーン討伐よりも無謀な挑戦だった。
レオニダスは、こっそりとギルドの厨房を借りると、料理番から聞きかじった知識を頼りに、ケーキ作りに取り掛かった。
最初の難関は、生クリームの泡立てだった。
「こう、空気を含ませるように混ぜるんだよな……?」
彼は、巨大なボウルに生クリームを入れ、泡立て器を握りしめた。しかし、獣人族の腕力は、繊細な作業には全く向いていなかった。
ガシャガシャガシャッ!
凄まじい勢いでかき混ぜられた生クリームは、泡立つどころか、みるみるうちに分離し、黄色い塊と液体に分かれてしまった。
「な、なんだこりゃ!? バターか!?」
そう、それはバターだった。彼の腕力は、意図せずしてバターを生み出してしまったのだ。
次は、生地作り。レシピには「卵と砂糖を、白くもったりとするまで混ぜる」とある。
「白くもったり、だな! 任せろ!」
今度こそ失敗しまいと、彼は力いっぱい卵をかき混ぜた。しかし、またしても力が入りすぎ、ボウルから中身が飛び散り、厨房の壁と、彼の顔をべちゃべちゃに汚した。
「くそっ!」
さらに、小麦粉の分量を間違え、焼き上がったスポンジ生地は、カチカチの岩のように硬くなってしまった。叩くと、コンコンと乾いた音がする。もはや、鈍器だ。
悪戦苦闘するレオニダスの姿を、厨房の入り口から、ギルドの仲間たちが心配そうに覗いていた。
「マスター、どうしたんだ? 何か手伝おうか?」
「う、うるせえ! これは俺一人の戦いだ!」
強がるレオニダスだったが、その顔は小麦粉と卵で真っ白。もはや、威厳も何もあったものではない。
見かねた仲間の一人が、そっと新しい材料と、正しいレシピが書かれた本を差し出した。
「……まあ、手伝ってやらんでもないぜ、マスター」
「……おう」
ぶっきらぼうなやり取りの後、結局、ギルドの仲間たち総出でのケーキ作りが始まった。誰かが卵を泡立て、誰かが小麦粉をふるい、誰かがオーブンの火加減を見る。
一人では無謀な挑戦も、仲間と一緒なら、楽しい共同作業に変わる。
そして、ようやく、一つのケーキが完成した。形は少し不格好で、クリームの塗り方も雑だったが、たくさんのフルーツが飾られた、心のこもったケーキだった。
***
誕生日当日。レオニダスは、大きな箱を抱え、緊張した面持ちでイザベラの執務室を訪れた。
「イザベラ……その、なんだ。誕生日、おめでとう」
彼は、箱を差し出しながら、そっぽを向く。
「まあ! レオニダス、ありがとう。これは何かしら?」
イザベラが箱を開けると、中から現れた手作り感満載のケーキに、彼女はぱっと顔を輝かせた。
「すごい! ケーキじゃない! もしかして、あなたが?」
「……まあな。少し、仲間にも手伝ってもらったが」
イザベラは、心から嬉しそうに微笑むと、早速一口、ケーキを頬張った。
「……美味しい!」
その満面の笑みに、レオニダスの苦労は、すべて吹き飛んだ。
「そうか……。なら、よかった」
照れくさそうに頭を掻く彼の顔は、夕焼けよりも赤く染まっていた。
不器用な獣人王からの、最高に甘くて、そして、少しだけバターの風味がする、心のこもった誕生日プレゼント。それは、どんな高価な贈り物よりも、イザベラの心を温かく満たしてくれた、微笑ましい一日だった。
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