追放された没落貴族、拾った通信水晶で神々の配信者になる〜規格外チートと温かいご飯で古代竜もテイムして無双〜

黒崎隼人

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第2話「光の祝福と温かいパン」

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 黄金の光は、まるで春の陽だまりのように温かかった。

 リオンの体を包み込んだ光の粒は、皮膚の表面からゆっくりと内側へと染み込んでいく。凍えきっていた手足に熱が巡り、鉛のように重かった筋肉の疲労が嘘のように消え去っていくのを感じた。それどころか、体の芯から得体の知れない強大な力が泉のように湧き上がってくる。

 呼吸をするたびに肺が広がり、澄んだ空気が体中の隅々まで行き渡る。視界は驚くほど鮮明になり、遠くの木の葉の葉脈までがはっきりと見える。耳を澄ませば、地中を這う虫の微かな足音や、はるか遠くを流れる小川の水音までが手にとるようにわかった。

「これが、祝福……」

 リオンは自分の両手を見つめ、何度も拳を握ったり開いたりした。指先の動きは自分の意志と完全に同期しており、ほんの少しのズレもない。まるで別人の体に生まれ変わったかのような、圧倒的な全能感だった。

「どう? 少しは体が軽くなったかしら。それは天上界の特別な力よ。あなたなら、きっと上手く使いこなせるはず」

 通信水晶から響くアリアの声は、どこか誇らしげだった。水晶の表面では、神々からの反応を示す小さな光が激しく明滅している。どうやら、画面の向こうの観衆たちも、リオンの変化に興奮しているようだ。

「ありがとう、アリア。これなら、生きていけそうだ」

 リオンは水晶を上着の内ポケットにしまい込み、再び歩き始めた。足取りは羽のように軽く、ぬかるんだ土の上でもまったく滑らない。周囲の環境を細部まで把握できるため、危険な場所を自然と避けることができた。

***

 しばらく森を進むと、巨大な岩肌にぽっかりと開いた暗い穴が見えてきた。入り口の周囲には青黒い苔がびっしりと生え、冷たく湿った空気が奥から流れ出してくる。カビの匂いと、微かに漂う血のような鉄の匂いが鼻を突いた。

「迷宮か」

 リオンは足を止めた。異世界において、迷宮は富と危険が隣り合わせの場所だ。魔物がはびこり、多くの冒険者が命を落とすが、同時に貴重な素材や宝が眠っている。生きていくための資金を得るには、ここに入るしかない。

 彼は腰に下げていた安物の剣を引き抜いた。刃こぼれのある粗末な鉄剣だが、今の彼の手の中では、まるで名剣のようにしっくりと馴染んだ。

 迷宮の中に足を踏み入れると、外の光はあっという間に届かなくなった。石造りの壁は湿り気を帯びており、天井から滴り落ちる水滴が、冷たい石畳を叩いて反響している。

 角を曲がった瞬間、暗がりから低い唸り声が聞こえた。

 リオンの優れた視覚が、闇の中に潜む異形の姿を捉えた。全身を緑色の硬い皮膚で覆われ、鋭い牙をむき出しにした魔物だった。大人の腰ほどの背丈だが、その瞳には獰猛な殺意が宿っている。

 魔物が地面を蹴り、鋭い爪を振り上げてリオンに飛びかかってきた。

 その瞬間、リオンの世界は極端にゆっくりと動き始めた。魔物の軌道、筋肉の収縮、飛んでくる唾液の粒までがはっきりと見える。

 彼は焦ることもなく、剣を軽く握り直して一歩前に踏み出した。

 空気を切り裂く鋭い音が迷宮に響いた。

 リオンの腕から放たれた一撃は、魔物の分厚い皮膚をバターのように滑らかに両断していた。魔物は悲鳴を上げる暇もなく、二つに分かれて石畳の上に崩れ落ちた。黒い血が飛び散り、生臭い匂いが周囲に広がる。

「すごい……これが、私の力か」

 リオン自身が一番驚いていた。剣を振った際の反動すらほとんど感じない。自分の意思のままに、完璧な力と速度で動くことができる。

 上着のポケットの中で、水晶が激しく振動し、強烈な光を放った。天上界の神々が、リオンの圧倒的な一撃を見て熱狂しているのだ。

「やったわね、リオン! 神様たちのコメントも大盛り上がりよ! あの身のこなしは素晴らしいとか、無駄のない動きだとか、みんなあなたに夢中みたい」

 アリアの明るい声が頭の中に響く。リオンは剣についた血を払い、静かに鞘に収めた。

 その後も、リオンは次々と現れる魔物を苦もなく討ち倒していった。迷宮の浅い階層にいる魔物など、今の彼の敵ではなかった。

***

 数時間が経過し、安全そうな小さな小部屋を見つけると、リオンはそこで休息をとることにした。冷たい石の床に座り込み、リュックから火打ち石と拾い集めた乾いた木切れを取り出す。

 手際よく火打ち石を打ち合わせ、小さな火種を作る。乾燥した葉に息を吹きかけると、チリチリと音を立てて赤い炎が燃え上がった。迷宮の冷たい空気が、火の温もりによって少しずつ和らいでいく。

 リオンはリュックから、カチカチに乾燥した固いパンと、塩漬けの干し肉を取り出した。木の枝に肉を刺し、炎のそばで炙る。脂が溶けて落ちるジュウという音とともに、香ばしい匂いが小部屋いっぱいに広がった。

『温かいものを食べるのは、いつぶりだろうか』

 屋敷にいた頃も、彼に与えられる食事は冷え切った残り物ばかりだった。自分の手で火を起こし、自分の力で得た安全な場所で食事をする。それは、彼にとって何よりも贅沢な時間に思えた。

 その時、ポケットの水晶が再び柔らかく光り始めた。

「リオン、神様たちがあなたの食事の風景を見て、なんだかとても感動してるみたいなの。天上界には食事を作るという概念がないから、火を使って食べ物を温める姿がすごく新鮮なんだって。それでね、みんなからの贈り物がいっぱい届いてるわ」

 アリアの言葉が終わるか終わらないかのうちに、リオンの目の前の空間が淡く光り、光の粒が空中で実体を結び始めた。

 コロン、と音を立てて石畳に転がったのは、見事なまでに真っ赤に熟した大きなリンゴだった。さらに、焼きたてで湯気を立てているふっくらとした白いパンが、清潔な布に包まれて現れた。

 リオンは目を丸くして、その光景を見つめた。

「これが、贈り物……?」

「そうよ! あなたが美味しそうに食べるから、神様たちが自分たちの力で食材を具現化して送ってくれたの。遠慮せずに食べてね」

 リオンは震える手で温かいパンに触れた。ふんわりとした柔らかい感触と、小麦の甘い香りが鼻をくすぐる。一口かじると、豊かな甘みとバターの風味が口いっぱいに広がった。

「美味しい……」

 思わずこぼれ落ちたその一言に、水晶はさらに嬉しそうにチカチカと光を瞬かせた。迷宮の冷たい闇の中で、リオンは神々がくれた温かいパンをゆっくりと味わい続けた。
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