13 / 13
エピローグ「最強への道、二人で」
しおりを挟む
シルヴァリア魔法学園を卒業してから数年の月日が流れた。
ユキナリ・アステールは、今やエルミナ王国でその名を知らぬ者はいない若き宮廷魔術師となっていた。
かつて「出来損ない」と呼ばれた少年はもうどこにもいない。そこにいるのは自信に満ちた精悍な顔つきの青年だ。
彼の傍らにはいつも一冊の黒い魔導書があった。
「ユキナリ、次の任務よ。北の国境で魔物の異常発生が確認されたわ。あなたの力が必要なの」
執務室を訪れたのは同じく宮廷魔術師として活躍するセレスティア・フォン・ヴァイスだった。彼女は数年の時を経てさらに美しさと威厳を増していた。
「わかりました。すぐに向かいます」
ユキナリが頷くとセレスティアは少し寂しそうな顔をした。
「……また、すぐに行ってしまうのね。たまにはゆっくりお茶でもしたいものだわ」
「すみません。でも僕を必要としてくれる人がいるので」
ユキナリが微笑むと、セレスティアは「そうね。それがあなただもの」と小さく笑い返した。二人は今や互いを認め合う最高のライバルであり、良き同僚だった。
セレスティアが部屋を出ていくとユキナリは魔導書に話しかけた。
「さて、カイ。仕事の時間です」
すると魔導書から半透明のカイの姿が現れた。彼はユキナリと出会った頃と何も変わらない。
『やっとか。退屈で死ぬところだったぜ。それにしても、あのお嬢様も諦めが悪いな。まだお前に気があるらしい』
カイは腕を組んでふてくされたように言った。
「やきもちですか?」
ユキナリがからかうとカイはカッとなったように反論する。
『違うと言ってるだろ! 俺はただ、主の周りに変な虫がつくのを警戒している忠実な従者なだけだ!』
「はいはい」
このやり取りもすっかり日常になった。主従関係という言葉で始まった二人の絆は、今では何物にも代えがたい「相棒」という形に落ち着いていた。
ユキナリは旅の支度をしながらふと昔のことを思い出す。
「カイと出会った頃は、僕、本当に何もできませんでしたね」
『ああ、全くだ。魔力だけは無駄にあるただの出来損ないだったな』
「ひどい言い草ですね。でもカイがいてくれたから僕はここまで来れました」
感謝を込めて言うとカイはそっぽを向いてしまった。
『……別に。俺は俺が自由になるためにお前を利用しただけだ』
照れ隠しなのはもう分かっている。ユキナリはくすりと笑った。
カイの魂を完全に解放するにはまだ膨大な魔力が必要だ。だが二人はもうそれを急いではいなかった。カイがこの魔導書からいなくなってしまうことをユキナリが望んでいなかったし、カイ自身もユキナリの傍を離れる気はないようだった。
準備を終えユキナリは転移魔法陣の上に立つ。
「行きますよ、カイ」
『おう。さっさと片付けて美味い飯でも食いに行くぞ』
「いいですね。何が食べたいですか?」
『そうだな……。たまには俺のいた世界の料理ってやつを、お前の魔法で再現してみるか?』
「面白そうだ。やってみましょう」
そんな軽口を叩き合いながらユキナリは魔法を発動させる。光が彼を包み込み、一瞬でその姿が執務室から消えた。
目的地は魔物が蔓延る危険な国境地帯。
だがユキナリに恐れはなかった。
最強の相棒がいつも隣にいてくれるのだから。
無属性の魔術師と異世界の魂。
二人が歩む最強への道はまだ終わらない。世界のどこかで助けを求める声がある限り彼らの旅は続いていく。
それはかつて落ちこぼれだった少年がたった一人の相棒と出会って始まった壮大な物語。
そしてこれからも紡がれていく二人の未来の始まりだった。
ユキナリ・アステールは、今やエルミナ王国でその名を知らぬ者はいない若き宮廷魔術師となっていた。
かつて「出来損ない」と呼ばれた少年はもうどこにもいない。そこにいるのは自信に満ちた精悍な顔つきの青年だ。
彼の傍らにはいつも一冊の黒い魔導書があった。
「ユキナリ、次の任務よ。北の国境で魔物の異常発生が確認されたわ。あなたの力が必要なの」
執務室を訪れたのは同じく宮廷魔術師として活躍するセレスティア・フォン・ヴァイスだった。彼女は数年の時を経てさらに美しさと威厳を増していた。
「わかりました。すぐに向かいます」
ユキナリが頷くとセレスティアは少し寂しそうな顔をした。
「……また、すぐに行ってしまうのね。たまにはゆっくりお茶でもしたいものだわ」
「すみません。でも僕を必要としてくれる人がいるので」
ユキナリが微笑むと、セレスティアは「そうね。それがあなただもの」と小さく笑い返した。二人は今や互いを認め合う最高のライバルであり、良き同僚だった。
セレスティアが部屋を出ていくとユキナリは魔導書に話しかけた。
「さて、カイ。仕事の時間です」
すると魔導書から半透明のカイの姿が現れた。彼はユキナリと出会った頃と何も変わらない。
『やっとか。退屈で死ぬところだったぜ。それにしても、あのお嬢様も諦めが悪いな。まだお前に気があるらしい』
カイは腕を組んでふてくされたように言った。
「やきもちですか?」
ユキナリがからかうとカイはカッとなったように反論する。
『違うと言ってるだろ! 俺はただ、主の周りに変な虫がつくのを警戒している忠実な従者なだけだ!』
「はいはい」
このやり取りもすっかり日常になった。主従関係という言葉で始まった二人の絆は、今では何物にも代えがたい「相棒」という形に落ち着いていた。
ユキナリは旅の支度をしながらふと昔のことを思い出す。
「カイと出会った頃は、僕、本当に何もできませんでしたね」
『ああ、全くだ。魔力だけは無駄にあるただの出来損ないだったな』
「ひどい言い草ですね。でもカイがいてくれたから僕はここまで来れました」
感謝を込めて言うとカイはそっぽを向いてしまった。
『……別に。俺は俺が自由になるためにお前を利用しただけだ』
照れ隠しなのはもう分かっている。ユキナリはくすりと笑った。
カイの魂を完全に解放するにはまだ膨大な魔力が必要だ。だが二人はもうそれを急いではいなかった。カイがこの魔導書からいなくなってしまうことをユキナリが望んでいなかったし、カイ自身もユキナリの傍を離れる気はないようだった。
準備を終えユキナリは転移魔法陣の上に立つ。
「行きますよ、カイ」
『おう。さっさと片付けて美味い飯でも食いに行くぞ』
「いいですね。何が食べたいですか?」
『そうだな……。たまには俺のいた世界の料理ってやつを、お前の魔法で再現してみるか?』
「面白そうだ。やってみましょう」
そんな軽口を叩き合いながらユキナリは魔法を発動させる。光が彼を包み込み、一瞬でその姿が執務室から消えた。
目的地は魔物が蔓延る危険な国境地帯。
だがユキナリに恐れはなかった。
最強の相棒がいつも隣にいてくれるのだから。
無属性の魔術師と異世界の魂。
二人が歩む最強への道はまだ終わらない。世界のどこかで助けを求める声がある限り彼らの旅は続いていく。
それはかつて落ちこぼれだった少年がたった一人の相棒と出会って始まった壮大な物語。
そしてこれからも紡がれていく二人の未来の始まりだった。
46
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた
黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。
そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。
「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」
前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。
二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。
辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる