【解析眼】をゴミだと追放された俺、辺境で神獣と美少女たちに囲まれ最強の領地を築く~今更戻ってこいと言われても、もう遅い~

黒崎隼人

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第1話「理不尽な追放」

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「いい加減にしろ、レオン!貴様のその根拠もない戯言にはうんざりだ!」

 高難易度ダンジョン「深淵の迷宮」の最深部手前。Sランクパーティ「神聖なる光刃」のリーダーである勇者ガイアスの怒声が、湿った空気を震わせた。

 俺、レオンはただ、いつも通りに進言しただけだった。

「待ってくれ、ガイアス。この先の通路、右の壁から三番目の石だけ、空気の流れが僅かに違う。恐らく、踏み込み式の広範囲麻痺毒の噴出罠だ。左側を通るべきだ」

 俺は冷静に言葉を続ける。

「それと、奥に待ち構えているミノタウロス・ロード。あれは通常種と違って、右足の腱が古傷で弱点になっている。そこを狙えば……」

 俺の言葉を遮り、ガイアスが手に持った聖剣の柄で、近くの壁を殴りつける。ガァン、と鈍い音が響き、パーティのヒーラーである聖女セラフィナの肩が小さく震えた。

「黙れ!俺の聖剣が、俺の勇者としての勘が、正面から突破しろと告げている!貴様のその【解析眼】とかいうゴミスキルは、ただの鑑定の劣化版だろうが!いちいち口を挟むな!パーティの士気が下がる!」

 またか。もう何度目になるか分からない光景だ。

 俺のスキル【解析眼】は、ただ対象の名称を読み取るだけの「鑑定」とは違う。対象の構造、成り立ち、弱点、そして僅かな未来の状態までを視ることができる。

 このダンジョンでここまで無傷で来られたのも、俺が罠の構造を看破し、敵の弱点を正確に指摘してきたからだ。だが、ガイアスはそれを決して認めなかった。

 俺の進言で危機を回避すれば、それは「俺の勘が冴えていた」おかげ。俺の指摘通りに敵を倒せば、「俺の聖剣の一撃が強力だった」から。全ての功績は、勇者ガイアスのものに書き換えられた。

「しかし、ガイアス様……レオンさんの言うことには、いつも助けられています。一度、耳を傾けてみては……」

 おずおずと口を挟んだのは、聖女セラフィナだった。彼女だけは、俺の貢献を薄々感じ取ってくれていた。

 だが、そのか細い声は、ガイアスの次の言葉でかき消される。

「セラフィナ!お前までこいつの戯言を信じるのか!いいか、このパーティに必要なのは、俺の聖剣と、お前の回復魔法だけだ!こいつのような、ただ見ているだけの寄生虫ではない!」

 ガイアスは忌々しげに俺を睨みつけ、そして決然と言い放った。

「レオン。貴様は今日限りでパーティを追放だ」

 空気が、凍った。

 俺は一瞬、何を言われたのか理解できなかった。追放?この俺が?

「……な、何を言っているんだ、ガイアス。俺がいなければ、この先の罠はどうする?ボスの攻略だって……」

「うるさい!貴様がいなくなれば、俺の力が十全に発揮される!足手まといが消えて清々するわ!」

 ガイアスはそう吐き捨てると、俺の背負っていたバッグから、予備のポーションや食料を乱暴に抜き取った。

「これはパーティの共有物だ。貴様に渡すものなどない。報酬もだ。今までの分は、貴様を養ってやった手間賃だと思え」

 最低限の着の身着のまま、なけなしの金貨数枚を投げつけられる。それは、このダンジョン攻略の成功報酬の百分の一にも満たない額だった。

 俺は、ただ立ち尽くすことしかできなかった。

 長年、パーティのために尽くしてきた。危険な偵察も、徹夜での情報分析も、全ては仲間と共にダンジョンを攻略するためだった。その結果が、これか。

「……レオンさん……」

 セラフィナが悲痛な顔で俺を見ている。だが、彼女は何も言えない。傲慢な勇者の威圧に逆らう勇気は、心優しい彼女にはなかった。

 俺は、そんな彼女に力なく微笑みかけるしかなかった。

「……気にするな、セラフィナ。……達者でな」

 それが、俺が「神聖なる光刃」の一員として発した最後の言葉だった。

 ガイアスに背中を押され、迷宮の入り口へと追いやられる。閉ざされていく石の扉の向こうから、ガイアスの勝ち誇ったような声が聞こえた。

「さあ、諸君!寄生虫は消えた!真の勇者の力を見せてやろう!」

 その言葉を最後に、扉は完全に閉ざされた。

 ダンジョンの入り口に一人残された俺の心には、理不尽な仕打ちへの怒りよりも、深い、深い絶望だけが渦巻いていた。
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