悪役令嬢は廃墟農園で異世界婚活中!~離婚したら最強農業スキルで貴族たちが求婚してきますが、元夫が邪魔で困ってます~

黒崎隼人

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第10話『皇太子、辞めます!?』

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 マグナス公爵の反乱が鎮圧され、王宮は完全にクロード様の支持派で固められた。もう、私や彼を脅かす者はいない。宮廷の誰もが、これでようやく皇太子殿下とリネット様は復縁なされるだろう、とうわさしていた。

 しかし、事件の後、クロード様は驚くべきことを口にした。

「リネット……私は、皇太子を辞めようと思う」

 農園の片隅で、二人で夕日を眺めている時のことだった。

「……は?」

「そして、ここで君と一緒に農業をして暮らしたい。君を守るためには、その方がいい。もう、君を危険な目に遭わせるのはこりごりだ」

 彼は、真剣な目で私を見つめていた。本気で言っているのがわかる。
 私は、頭を抱えたくなった。この人は、どうしてこう極端から極端へ走るのだろう。

「それは、困ります」

「えっ」

 私のきっぱりとした返事に、彼は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。

「なぜだ!? 君は、王宮に戻りたくないのだろう? だったら、私が君の元へ行けば……」

「違いますわ、クロード様。そういう問題ではありません」

 私は立ち上がると、彼に向き直った。

「あなたは、この国の皇太子です。あなたには、この国をより良く治める責任がある。それを、私一人のために放り出すなんて、絶対に許しません」

 私の言葉に、彼はハッとした顔をした。

「……だが、私は君のそばにいたいんだ」

「私もです」

「え?」

 今度は、彼が驚く番だった。私は、少し照れながらも、続けた。

「私も、あなたのそばにいたいです。でも、それはあなたが畑仕事をする姿を、隣で見たいという意味ではありません」

 私は、自分の夢を、そして私たちの新しい未来を、彼に語った。

「私は、この国の農業をもっと発展させたい。私の知識と技術で、この国を世界一豊かな農業大国にしたいんです。でも、それには、政治の力が必要不可欠です。法を整備し、予算をつけ、新しい制度を作る……それは、私一人ではできません。あなたにしか、できないことです」

 私の目を見て、クロード様は息を呑んだ。

「私は畑から、あなたは玉座から。それぞれの場所で、それぞれの得意なことをして、一緒にこの国を良くしていく。そんな関係では、ダメでしょうか?」

 それは、復縁でも、結婚でもない。けれど、誰よりも強く、深く結びついたパートナーシップの提案だった。
 クロード様は、しばらく黙って何かを考えていたが、やがて、その顔に決意の光が宿った。

「……わかった。リネット。君の言う通りだ」

 彼は立ち上がると、私に向かって手を差し出した。

「皇太子は、辞めない。だが、君の隣で、君と共に国を動かしていく。そのための新しい部署を設立しよう。『農業発展省』だ。初代大臣は、もちろん君だ」

「農業発展省……!」

 なんて素敵な響きだろう!

「そして、皇太子としてではなく、一人の男として、君のパートナーであり続けたい。それで、いいだろうか?」

 私は、彼の差し出した手を、力強く握り返した。

「ええ、喜んで。クロード様」

 私たちは、どちらからともなく、微笑み合った。夕日が、私たちの新しい門出を祝福するように、世界を茜色に染めていた。
 恋人でもなく、夫婦でもない。でも、誰よりも強い絆で結ばれた、最高のパートナー。
 私たちの新しい関係が、この瞬間、始まったのだ。
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