11 / 17
第10話『皇太子、辞めます!?』
しおりを挟む
マグナス公爵の反乱が鎮圧され、王宮は完全にクロード様の支持派で固められた。もう、私や彼を脅かす者はいない。宮廷の誰もが、これでようやく皇太子殿下とリネット様は復縁なされるだろう、とうわさしていた。
しかし、事件の後、クロード様は驚くべきことを口にした。
「リネット……私は、皇太子を辞めようと思う」
農園の片隅で、二人で夕日を眺めている時のことだった。
「……は?」
「そして、ここで君と一緒に農業をして暮らしたい。君を守るためには、その方がいい。もう、君を危険な目に遭わせるのはこりごりだ」
彼は、真剣な目で私を見つめていた。本気で言っているのがわかる。
私は、頭を抱えたくなった。この人は、どうしてこう極端から極端へ走るのだろう。
「それは、困ります」
「えっ」
私のきっぱりとした返事に、彼は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。
「なぜだ!? 君は、王宮に戻りたくないのだろう? だったら、私が君の元へ行けば……」
「違いますわ、クロード様。そういう問題ではありません」
私は立ち上がると、彼に向き直った。
「あなたは、この国の皇太子です。あなたには、この国をより良く治める責任がある。それを、私一人のために放り出すなんて、絶対に許しません」
私の言葉に、彼はハッとした顔をした。
「……だが、私は君のそばにいたいんだ」
「私もです」
「え?」
今度は、彼が驚く番だった。私は、少し照れながらも、続けた。
「私も、あなたのそばにいたいです。でも、それはあなたが畑仕事をする姿を、隣で見たいという意味ではありません」
私は、自分の夢を、そして私たちの新しい未来を、彼に語った。
「私は、この国の農業をもっと発展させたい。私の知識と技術で、この国を世界一豊かな農業大国にしたいんです。でも、それには、政治の力が必要不可欠です。法を整備し、予算をつけ、新しい制度を作る……それは、私一人ではできません。あなたにしか、できないことです」
私の目を見て、クロード様は息を呑んだ。
「私は畑から、あなたは玉座から。それぞれの場所で、それぞれの得意なことをして、一緒にこの国を良くしていく。そんな関係では、ダメでしょうか?」
それは、復縁でも、結婚でもない。けれど、誰よりも強く、深く結びついたパートナーシップの提案だった。
クロード様は、しばらく黙って何かを考えていたが、やがて、その顔に決意の光が宿った。
「……わかった。リネット。君の言う通りだ」
彼は立ち上がると、私に向かって手を差し出した。
「皇太子は、辞めない。だが、君の隣で、君と共に国を動かしていく。そのための新しい部署を設立しよう。『農業発展省』だ。初代大臣は、もちろん君だ」
「農業発展省……!」
なんて素敵な響きだろう!
「そして、皇太子としてではなく、一人の男として、君のパートナーであり続けたい。それで、いいだろうか?」
私は、彼の差し出した手を、力強く握り返した。
「ええ、喜んで。クロード様」
私たちは、どちらからともなく、微笑み合った。夕日が、私たちの新しい門出を祝福するように、世界を茜色に染めていた。
恋人でもなく、夫婦でもない。でも、誰よりも強い絆で結ばれた、最高のパートナー。
私たちの新しい関係が、この瞬間、始まったのだ。
しかし、事件の後、クロード様は驚くべきことを口にした。
「リネット……私は、皇太子を辞めようと思う」
農園の片隅で、二人で夕日を眺めている時のことだった。
「……は?」
「そして、ここで君と一緒に農業をして暮らしたい。君を守るためには、その方がいい。もう、君を危険な目に遭わせるのはこりごりだ」
彼は、真剣な目で私を見つめていた。本気で言っているのがわかる。
私は、頭を抱えたくなった。この人は、どうしてこう極端から極端へ走るのだろう。
「それは、困ります」
「えっ」
私のきっぱりとした返事に、彼は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。
「なぜだ!? 君は、王宮に戻りたくないのだろう? だったら、私が君の元へ行けば……」
「違いますわ、クロード様。そういう問題ではありません」
私は立ち上がると、彼に向き直った。
「あなたは、この国の皇太子です。あなたには、この国をより良く治める責任がある。それを、私一人のために放り出すなんて、絶対に許しません」
私の言葉に、彼はハッとした顔をした。
「……だが、私は君のそばにいたいんだ」
「私もです」
「え?」
今度は、彼が驚く番だった。私は、少し照れながらも、続けた。
「私も、あなたのそばにいたいです。でも、それはあなたが畑仕事をする姿を、隣で見たいという意味ではありません」
私は、自分の夢を、そして私たちの新しい未来を、彼に語った。
「私は、この国の農業をもっと発展させたい。私の知識と技術で、この国を世界一豊かな農業大国にしたいんです。でも、それには、政治の力が必要不可欠です。法を整備し、予算をつけ、新しい制度を作る……それは、私一人ではできません。あなたにしか、できないことです」
私の目を見て、クロード様は息を呑んだ。
「私は畑から、あなたは玉座から。それぞれの場所で、それぞれの得意なことをして、一緒にこの国を良くしていく。そんな関係では、ダメでしょうか?」
それは、復縁でも、結婚でもない。けれど、誰よりも強く、深く結びついたパートナーシップの提案だった。
クロード様は、しばらく黙って何かを考えていたが、やがて、その顔に決意の光が宿った。
「……わかった。リネット。君の言う通りだ」
彼は立ち上がると、私に向かって手を差し出した。
「皇太子は、辞めない。だが、君の隣で、君と共に国を動かしていく。そのための新しい部署を設立しよう。『農業発展省』だ。初代大臣は、もちろん君だ」
「農業発展省……!」
なんて素敵な響きだろう!
「そして、皇太子としてではなく、一人の男として、君のパートナーであり続けたい。それで、いいだろうか?」
私は、彼の差し出した手を、力強く握り返した。
「ええ、喜んで。クロード様」
私たちは、どちらからともなく、微笑み合った。夕日が、私たちの新しい門出を祝福するように、世界を茜色に染めていた。
恋人でもなく、夫婦でもない。でも、誰よりも強い絆で結ばれた、最高のパートナー。
私たちの新しい関係が、この瞬間、始まったのだ。
38
あなたにおすすめの小説
子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~
九頭七尾
ファンタジー
子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。
女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。
「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」
「その願い叶えて差し上げましょう!」
「えっ、いいの?」
転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。
「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」
思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。
【完結】動物と話せるだけの少女、森で建国して世界の中心になりました
なみゆき
ファンタジー
ミナ・クローバーは、王国で唯一の“動物使い”として王宮のペットたちを世話していたが、実は“動物語”を理解できる特異体質を持つ少女。その能力を隠しながら、動物たちと心を通わせていた。
ある日、王女の猫・ミルフィーの毒舌を誤訳されたことがきっかけで、ミナは「動物への不敬罪」で王都を追放される。失意の中、森へと向かったミナを待っていたのは、かつて助けた動物たちによる熱烈な歓迎だった。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
悪役令嬢に転生したけど、破滅エンドは王子たちに押し付けました
タマ マコト
ファンタジー
27歳の社畜OL・藤咲真帆は、仕事でも恋でも“都合のいい人”として生きてきた。
ある夜、交通事故に遭った瞬間、心の底から叫んだーー「もう我慢なんてしたくない!」
目を覚ますと、乙女ゲームの“悪役令嬢レティシア”に転生していた。
破滅が約束された物語の中で、彼女は決意する。
今度こそ、泣くのは私じゃない。
破滅は“彼ら”に押し付けて、私の人生を取り戻してみせる。
乙女ゲームに転生したら不遇ヒロインでしたが、真エンドは自分で選びます
タマ マコト
ファンタジー
社畜のように他人の期待に応える人生を送り、事故で命を落とした朝霧玲奈は、かつて遊んでいた乙女ゲームの世界に“不遇ヒロイン”として転生する。
努力しても報われず、最終的に追放される役割を知った彼女は、誰かに選ばれる物語を拒否し、自分の意志で生きることを決意する。
さて、物語はどう変化するのか……。
【完結】パパ、私は犯人じゃないよ ~処刑予定の私、冷徹公爵(パパ)に溺愛されるまで~
チャビューヘ
ファンタジー
※タイトル変更しました。
「掃除(処分)しろ」と私を捨てた冷徹な父。生き残るために「心を無」にして媚びを売ったら。
「……お前の声だけが、うるさくない」
心の声が聞こえるパパと、それを知らずに生存戦略を練る娘の物語。
-----
感想送っていただいている皆様へ
たくさんの嬉しい言葉や厳しい意見も届いており一つ一つがすごく嬉しいのと頑張ろうと感じています。ご意見を元に修正必要な部分は随時更新していきます。
成長のため感想欄を閉じませんが公開はする予定ありません。ですが必ず全て目を通しています。拙作にお時間を頂きありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」
チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。
だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。
魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。
だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。
追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。
訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。
そして助けた少女は、実は王国の姫!?
「もう面倒ごとはごめんだ」
そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。
追放悪役令嬢のスローライフは止まらない!~辺境で野菜を育てていたら、いつの間にか国家運営する羽目になりました~
緋村ルナ
ファンタジー
「計画通り!」――王太子からの婚約破棄は、窮屈な妃教育から逃れ、自由な農業ライフを手に入れるための完璧な計画だった!
前世が農家の娘だった公爵令嬢セレスティーナは、追放先の辺境で、前世の知識と魔法を組み合わせた「魔法農業」をスタートさせる。彼女が作る奇跡の野菜と心温まる料理は、痩せた土地と人々の心を豊かにし、やがて小さな村に起こした奇跡は、国全体を巻き込む大きなうねりとなっていく。
これは、自分の居場所を自分の手で作り出した、一人の令嬢の痛快サクセスストーリー! 悪役の仮面を脱ぎ捨てた彼女が、個人の幸せの先に掴んだものとは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる