婚約破棄された元悪役令嬢、前世が淀殿だったので慰謝料のクズ領地で治水・商業チート炸裂!元婚約者?もう知りません

黒崎隼人

文字の大きさ
15 / 18

エピローグ:我が名は

しおりを挟む
 それから、数年の月日が流れた。
 ヴァイス領は、かつての泥濘地の面影を完全になくし、大陸でも有数の豊かで、平和な都市国家へと発展を遂げていた。
 城壁は高く、堅固に整備され、その内側には美しい石畳の道が走り、活気のある市場と、整然とした家々が立ち並ぶ。畑はどこまでも緑に輝き、川には多くの船が行き交っている。領民たちは、この地で暮らすことに誇りを持ち、その顔は自信と幸福に満ちていた。
 人々は、私のことを時に『ヴァイスの聖女』と呼び、またある時は『鉄の女君』と呼んで、敬愛してくれた。
 そして、私の傍らには、いつも彼がいた。
「シャーロット、そろそろ休憩にしないか。また根を詰めすぎだ」
 執務室で書類の山と格闘している私に、呆れたような、しかし愛情のこもった声をかけるのは、アラン・シュヴァルツ。彼は今や、私の公私にわたる、かけがえのないパートナーとなっていた。
「あら、これは隣国との交易に関する重要な書類ですのよ。あなたが邪魔をするから、ちっとも進まないじゃない」
 私がそう言って睨むと、彼は悪戯っぽく笑って、私の手から羽根ペンを取り上げた。
「その続きは、俺がやっておく。君は、少し風に当たってきたらどうだ?城のバルコニーから見る今日の夕日は、きっと格別だぞ」
 彼の有無を言わさぬ優しさに、私は小さくため息をついて、席を立つ。結局、私はいつも彼に敵わないのだ。
 城の最も高い場所にあるバルコニーに出ると、心地よい風が頬を撫でた。眼下には、黄金色の夕日に染まる、私の愛する領地が広がっている。遠くには、子供たちのはしゃぐ声や、市場の喧騒が聞こえてきた。
 この平和。この安らぎ。これこそが、私が二度の人生をかけて、手に入れたかったものだ。
 ふと、昔のことを思う。
 燃え盛る城の中で、権力と男たちに翻弄され、愛する息子と共に自害した、哀れな女。淀殿。
 王子に裏切られ、社交界で笑い者にされた、哀れな令嬢。悪役令嬢シャーロット。
 どちらも、確かに私だった過去の一部だ。
 だが、今の私は、もうそのどちらでもない。
 私は、過去の全てを受け入れた上で、今を生きている。
(私の名は、シャーロット・フォン・クレスメント)
 私は、このヴァイスの地の領主。ただ、それだけだ。
 背後から、アランがそっと私を抱きしめる。彼の温かい胸に体を預けながら、私は眼下に広がる私の城を見下ろし、穏やかに微笑んだ。
 もう、落城を恐れる必要はない。私の築いたこの城は、決して炎に飲み込まれることなどないのだから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたのでファンシーショップ始めました。 ― 元婚約者が、お人形さんを側室にしようとして大恥をかきました ―

鷹 綾
恋愛
隣国の王子から「政略的にも個人的にも魅力を感じない」と婚約破棄された、ファンタジア王国第三女王タナー。 泣きも怒りもせず、彼女が考えたのは――「いつか王宮の庇護がなくなっても困らない生き方」だった。 まだ八歳。 それでも先を見据え、タナーは王都の片隅で小さなファンシーショップを開くことを決意する。 並ぶのは、かわいい雑貨。 そして、かわいい魔法の雑貨。 お茶を淹れてくれるクマのぬいぐるみ店員《テイデイ・バトラー》、 冷めないティーカップ、 時間になると小鳥が飛び出すアンティーク時計――。 静かに広がる評判の裏で、 かつての元婚約者は「お人形さんを側室にしようとして」赤っ恥をかくことに。 ざまぁは控えめ、日常はやさしく。 かわいいものに囲まれながら、女王は今日も穏やかにお店を開けています。 --- この文面は ✔ アルファポリス向け文字数 ✔ 女子読者に刺さるワード配置 ✔ ネタバレしすぎない ✔ ほのぼの感キープ を全部満たしています。 次は 👉 タグ案 👉 ランキング用超短縮あらすじ(100字) どちらにしますか?

婚約破棄をしておけば

あんど もあ
ファンタジー
王太子アントワーヌの婚約者のレアリゼは、アントワーヌに嫌われていた。男を立てぬ女らしくないレアリゼが悪い、と皆に思われて孤立無援なレアリゼ。彼女は報われぬままひたすら国のために働いた……と思われていたが実は……。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』

放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」 王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。 しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!? 「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!) 怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。

身分は高いが立場は脆い

ファンタジー
公爵令嬢ローゼリア・アルフィーネに呼び出された、男爵令嬢ミーナ・ブラウン。 ローゼリアは、マリア・ウィロウ男爵令嬢が婚約者であるルドルフ・エーヴァルトと親しくしている、どうかマリア嬢に控えるように進言しては貰えないだろうか、と頼んできた。 それにミーナが答えたことは……。 ※複数のサイトに投稿しています。

私は……何も知らなかった……それだけなのに……

#Daki-Makura
ファンタジー
第2王子が獣人の婚約者へ婚約破棄を叩きつけた。 しかし、彼女の婚約者は、4歳年下の弟だった。 そう。第2王子は……何も知らなかった……知ろうとしなかっただけだった…… ※ゆるい設定です。ゆるく読んでください。 ※AI校正を使わせてもらっています。

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

王太子に愛されないので、隣国王子に拾われました

鍛高譚
恋愛
「王太子妃として、私はただの飾り――それなら、いっそ逃げるわ」 オデット・ド・ブランシュフォール侯爵令嬢は、王太子アルベールの婚約者として育てられた。誰もが羨む立場のはずだったが、彼の心は愛人ミレイユに奪われ、オデットはただの“形式だけの妻”として冷遇される。 「君との結婚はただの義務だ。愛するのはミレイユだけ」 そう嘲笑う王太子と、勝ち誇る愛人。耐え忍ぶことを強いられた日々に、オデットの心は次第に冷え切っていった。だが、ある日――隣国アルヴェールの王子・レオポルドから届いた一通の書簡が、彼女の運命を大きく変える。 「もし君が望むなら、私は君を迎え入れよう」 このまま王太子妃として屈辱に耐え続けるのか。それとも、自らの人生を取り戻すのか。 オデットは決断する。――もう、アルベールの傀儡にはならない。 愛人に嘲笑われた王妃の座などまっぴらごめん! 王宮を飛び出し、隣国で新たな人生を掴み取ったオデットを待っていたのは、誠実な王子の深い愛。 冷遇された令嬢が、理不尽な白い結婚を捨てて“本当の幸せ”を手にする

処理中です...