追放された荷物持ち、【分解】と【再構築】で万物創造師になる~今更戻ってこいと言われてももう遅い~

黒崎隼人

文字の大きさ
4 / 18

第2話:再出発と運命の出会い

しおりを挟む
 絶望の迷宮から生還した俺は、文字通りボロボロの状態だった。だが、心は不思議と晴れやかだった。ゴーレムを護衛につけ、ダンジョン内の魔物を素材に変えながら進んだおかげで、道中は驚くほど安全だった。

 ダンジョンを抜けた先には、巨大な城壁に囲まれた城塞都市があった。俺はゴーレムを粒子に戻して見えないように隠し、よろよろと門をくぐる。衛兵に怪訝な顔をされたが、冒険者だと適当に誤魔化してなんとか街に入ることができた。

 まずは金を作らないと、宿も取れないし、まともな食事もできない。

 俺は街の裏路地に入り、そこに転がっていた錆びついた鉄クズの山に目をつけた。衛兵に見つからないよう、素早くそれに触れる。

「【分解】」

 鉄クズは瞬時に光の粒子となり、鉄、炭素、そして不純物といった構成情報が頭に流れ込む。俺はその中から不純物を取り除き、鉄と炭素の比率を調整して、より強度の高い「鋼」のイメージを固めた。

「【再構築】」

 手のひらの上に、光が集まって一つの塊になる。現れたのは、ずっしりと重い、一点の曇りもない見事な鋼のインゴットだった。

 俺はそれを近くの鍛冶屋に持ち込んだ。頑固そうな親方は、最初はいぶかしげな顔をしていたが、インゴットを見るなり目を見開いた。

「なっ……なんだこの純度は!? こんな上質な鋼、ドワーフの名工でもなけりゃ作れねぇぞ!?」

 親方は大興奮で、相場の何倍もの値段でインゴットを買い取ってくれた。おかげで、俺は当面の生活費と、新しい服や装備を整えるための資金を手にすることができた。

 身なりを整え、安宿に一室を借りる。温かい食事とふかふかのベッドが、こんなにも幸せなものだとは思わなかった。

 翌日、街の情報を集めるために酒場へ向かうと、冒険者たちの噂話が耳に入ってきた。

「おい、聞いたか? 勇者ガイ様のパーティーが王都に凱旋したらしいぜ」

「ああ、なんでも絶望の迷宮を攻略したとか。さすがは勇者様だ!」

「なんでも、パーティーにいた荷物持ちがボス戦で勇敢に戦って死んだらしい。そのおかげで勝てたんだとよ」

 俺は、それを聞いて静かに拳を握りしめた。死んだ? 勇敢に? ふざけるな。あいつらは俺を捨てて逃げたくせに、俺の存在まで利用して名声を得ているのか。

 込み上げてくる怒りを、ぐっと堪える。今はまだ、あいつらと関わるべきじゃない。俺には、これからやるべきことがある。今は力を蓄え、自分の地盤を固めるのが先決だ。

 そう決めて酒場を出た俺は、街の中心にある広場で、人だかりができているのを見つけた。野次馬根性で覗き込んでみると、そこは奴隷市場だった。

 檻に入れられた獣人や亜人たちが、商品として並べられている。気分が悪くなる光景だったが、その中の一つの檻に、俺は釘付けになった。

 そこにいたのは、一人のエルフの少女だった。陽の光を吸い込んで輝くような銀色の髪は汚れ、美しいはずの顔は衰弱しきって青白い。着ているものもボロ布同然だった。

 だが、そんな絶望的な状況の中でも、彼女の瞳だけは死んでいなかった。エメラルドのような緑色の瞳に宿る、決して諦めないという強い光。

 その光に、俺はダンジョンに置き去りにされた時の自分を重ねていた。

「へい、旦那。お目が高い! こいつは極上のエルフだ。ただ、ちょっと訳ありでね」

 奴隷商人が、下卑た笑いを浮かべて話しかけてくる。

「訳あり?」

「ああ。どうやら強力な呪いにかかってるらしくてな。日に日に弱ってる。まあ、長くはもたないだろうが、死ぬまでの数日くらいは楽しめるぜ? だから格安にしとくよ」

 呪い、か。俺は無意識にスキルを集中させた。対象の構造を理解する【分解】の力を、彼女に向けたのだ。

 すると、俺の脳内に、彼女の体を取り巻く魔力の流れが見えた。正常な生命力の流れに、どす黒く、禍々しい蛇のような魔力が複雑に絡みついている。それが彼女の生命力を蝕んでいる原因だ。

 普通の治癒魔法や解呪では、正常な魔力回路ごと傷つけてしまうだろう。だが、俺にはわかる。その呪いは、極めて緻密に編み上げられた、ただの「魔力の塊」だ。

 ――これなら、【分解】できるかもしれない。

 俺は、決意した。この子を、このまま見殺しにはできない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

追放された公爵令息、神竜と共に辺境スローライフを満喫する〜無敵領主のまったり改革記〜

たまごころ
ファンタジー
無実の罪で辺境に追放された公爵令息アレン。 だが、その地では神竜アルディネアが眠っていた。 契約によって最強の力を得た彼は、戦いよりも「穏やかな暮らし」を選ぶ。 農地改革、温泉開発、魔導具づくり──次々と繁栄する辺境領。 そして、かつて彼を貶めた貴族たちが、その繁栄にひれ伏す時が来る。 戦わずとも勝つ、まったりざまぁ無双ファンタジー!

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

婚約破棄された「無能」聖女、拾った子犬が伝説の神獣だったので、辺境で極上もふもふライフを満喫します。~捨てた国が滅びそう?知りません~

ソラ
ファンタジー
「エリアナ、貴様との婚約を破棄し、この国から追放する!」 聖女としての魔力を使い果たし、無能と蔑まれた公爵令嬢エリアナ。 妹に婚約者を奪われ、身一つで北の最果て、凍てつく「死の森」へと捨てられる。 寒さに震え死を覚悟した彼女が出会ったのは、雪に埋もれていた一匹の小さなしっぽ。 「……ひとりぼっちなの? 大丈夫、私が温めてあげるわ」 最後の手向けに、残されたわずかな浄化の力を注いだエリアナ。 だが、その子犬の正体は――数千年の眠りから目覚めた、世界を滅ぼす伝説の神獣『フェンリル』だった! ヒロインの淹れるお茶に癒やされ、ヒロインのブラッシングにうっとり。 最強の神獣は、彼女を守るためだけに辺境を「極上の聖域」へと作り替えていく。 一方、本物の聖女(結界維持役)を失った王国では、災厄が次々と降り注ぎ、崩壊の危機を迎えていた。 今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくる王子たち。 けれど、エリアナの膝の上には、甘えん坊の神獣様(執着心MAX)が陣取っていて――。 「聖女の仕事? いえ、今は神獣様とのお昼寝の方が忙しいので」 無自覚チートな聖女と、彼女にだけはデレデレな神獣様による、逆転溺愛スローライフが幕を開ける!

異世界ショコラティエの甘い革命~チョコレートが存在しない世界でカカオを育ててバレンタインを流行らせます~

黒崎隼人
ファンタジー
【2月14日はバレンタイデー!】 現代日本でパティシエを目指していた記憶を持つ少年ルカは、貧しい農村の三男坊として異世界に転生した。しかし、そこは「チョコレート」が存在しない世界だった! 砂糖はある、ミルクもある。けれど、あの芳醇で甘美な黒い宝石だけがない。 「ないのなら、作るしかない」 ルカは森の奥で嫌われ者の「オニノミ」がカカオの原種であることを見抜き、独自に栽培を開始する。発酵、乾燥、焙煎――前世の知識と魔法を駆使して、ついに完成した「ショコラ」。その味は、粗悪な菓子しか知らなかった異世界の人々に衝撃を与え、やがて頑固な父、商魂たくましい商人、そして厳格な領主や宗教家までも巻き込んでいく。 これは、甘いお菓子で世界を変える、少年のサクセスストーリー。

私の妹は確かに聖女ですけど、私は女神本人ですわよ?

みおな
ファンタジー
 私の妹は、聖女と呼ばれている。  妖精たちから魔法を授けられた者たちと違い、女神から魔法を授けられた者、それが聖女だ。  聖女は一世代にひとりしか現れない。  だから、私の婚約者である第二王子は声高らかに宣言する。 「ここに、ユースティティアとの婚約を破棄し、聖女フロラリアとの婚約を宣言する!」  あらあら。私はかまいませんけど、私が何者かご存知なのかしら? それに妹フロラリアはシスコンですわよ?  この国、滅びないとよろしいわね?  

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

処理中です...