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第3話:聖女は微笑み、忠誠を誓う
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「この子を買う。いくらだ?」
俺の言葉に、奴隷商人は一瞬きょとんとした後、これ以上ないというほどの卑しい笑みを浮かべた。
「へっへっへ。旦那、物好きだねぇ。こいつは呪いで長くはもたないぞ? まあいい、金さえ払ってくれりゃ文句はねぇ。有り金全部置いていきな」
ふっかけてきているのは明らかだった。だが、俺は躊躇わなかった。昨日手に入れたばかりのなけなしの全財産を、カウンターに叩きつける。
「これで足りるか?」
金貨の詰まった袋を見て、奴隷商人の目がギラリと光った。
「……へい、毎度あり! さあ、持っていきな!」
商人は乱暴に檻の鍵を開け、エルフの少女の首につながれた鎖を俺に押し付けた。少女は抵抗もせず、ただ虚ろな目で俺を見上げている。
俺はすぐにその冷たい鉄の鎖を外し、彼女に着せていた汚れたボロ布の上から、市場で買ったばかりの清潔なローブを羽織らせた。
「……え?」
少女が、初めて戸惑いの声を漏らす。
「大丈夫。もう何もしないし、させない。とりあえず、宿に行こう」
俺はできるだけ優しい声で語りかけ、彼女の手を引いた。その手は、氷のように冷たかった。
宿屋に戻り、衰弱しきった彼女をベッドに寝かせる。そして、温かいスープをゆっくりと飲ませてやった。少しだけ顔に血の気が戻ったのを見て、俺は自分の計画を話すことにした。
「君は、呪いにかかっているんだね」
俺の言葉に、少女の肩がびくりと震えた。
「俺のスキルは【分解】。物の構造を理解して、バラバラにする力だ。もしかしたら、君の体を蝕む呪いだけを分解できるかもしれない」
「……そんなこと、できるの?」
か細い声だったが、その瞳にはわずかな希望の光が宿っていた。
「保証はできない。でも、やる価値はあると思う。君さえよければ、だけど」
少女――その少女は、じっと俺の目を見つめた後、小さく、しかしはっきりと頷いた。
「……お願いします。私の命、あなたに預けます」
その言葉に、俺は覚悟を決めた。
俺はルナの隣に座り、彼女の体にそっと手を触れる。そして、【分解】の力を最大限に集中させた。
脳内に流れ込んでくる、彼女の体内の魔力回路の設計図。生命維持のために流れる清らかな魔力の奔流に、どす黒い呪いの魔力がヘドロのように絡みついている。それはまるで、精密な機械に砂が入り込んだような状態だった。
「……すごい。なんて複雑な構造なんだ」
少しでも間違えれば、ルナの魔力回路を傷つけ、最悪の場合は命を奪ってしまう。神経がすり減るような、ミリ単位の精密作業だ。
俺は額に汗を滲ませながら、呪いの構造を一つ一つ解き明かし、その結びつきを慎重に、慎重に【分解】していく。まるで、絡まった糸を一本一本解きほぐすように。
一時間、二時間……。どれくらいの時間が経っただろうか。俺の集中力も限界に近づいていた。
そして、ついに最後の呪いの核を【分解】した瞬間――。
「……っ!」
ルナの体から、まばゆいばかりの黄金色の光がほとばしった。部屋中が神々しい光で満たされ、温かく、清らかな力があふれ出す。
光が収まった時、俺の目の前にいたのは、先ほどまでの衰弱した少女ではなかった。
肌は透き通るような白さを取り戻し、銀色の髪は月の光のように輝いている。そして、そのエメラルドの瞳からは、慈愛に満ちた優しい光が放たれていた。まるで、天から舞い降りた女神のようだった。
「あ……ああ……。力が、戻って……」
ルナは自分の両手を見つめ、信じられないといった様子でつぶやく。そして、ゆっくりと俺の方を向くと、その美しい瞳から大粒の涙をぽろぽろとこぼした。
「ありがとうございます……。私の名前はルナ。エルフの国で『聖女』と呼ばれていました。あなた様は、私の命の恩人です」
彼女はベッドから降りると、俺の前に跪き、深く頭を下げた。
「私のこの命、そしてこの力、すべてはあなた様のために。どうか、このルナを、あなたのそばに置いてください」
「え、えっと……顔を上げて、ルナ」
突然のことに戸惑う俺に、ルナは涙で濡れた顔を上げて、最高の笑顔を見せた。それは、どんな宝石よりも美しい笑顔だった。
「はい、ベルク様」
こうして、俺は聖女ルナという、あまりにも強力で、献身的なパートナーを得ることになった。
しかし、聖女の力が戻ったとなれば、彼女を呪った者や、その力を利用しようとする者たちが黙っていないだろう。俺たちは追っ手を避けるため、この街を離れ、誰も俺たちのことを知らない辺境の地で、新しい生活を始めることを決めた。
俺の言葉に、奴隷商人は一瞬きょとんとした後、これ以上ないというほどの卑しい笑みを浮かべた。
「へっへっへ。旦那、物好きだねぇ。こいつは呪いで長くはもたないぞ? まあいい、金さえ払ってくれりゃ文句はねぇ。有り金全部置いていきな」
ふっかけてきているのは明らかだった。だが、俺は躊躇わなかった。昨日手に入れたばかりのなけなしの全財産を、カウンターに叩きつける。
「これで足りるか?」
金貨の詰まった袋を見て、奴隷商人の目がギラリと光った。
「……へい、毎度あり! さあ、持っていきな!」
商人は乱暴に檻の鍵を開け、エルフの少女の首につながれた鎖を俺に押し付けた。少女は抵抗もせず、ただ虚ろな目で俺を見上げている。
俺はすぐにその冷たい鉄の鎖を外し、彼女に着せていた汚れたボロ布の上から、市場で買ったばかりの清潔なローブを羽織らせた。
「……え?」
少女が、初めて戸惑いの声を漏らす。
「大丈夫。もう何もしないし、させない。とりあえず、宿に行こう」
俺はできるだけ優しい声で語りかけ、彼女の手を引いた。その手は、氷のように冷たかった。
宿屋に戻り、衰弱しきった彼女をベッドに寝かせる。そして、温かいスープをゆっくりと飲ませてやった。少しだけ顔に血の気が戻ったのを見て、俺は自分の計画を話すことにした。
「君は、呪いにかかっているんだね」
俺の言葉に、少女の肩がびくりと震えた。
「俺のスキルは【分解】。物の構造を理解して、バラバラにする力だ。もしかしたら、君の体を蝕む呪いだけを分解できるかもしれない」
「……そんなこと、できるの?」
か細い声だったが、その瞳にはわずかな希望の光が宿っていた。
「保証はできない。でも、やる価値はあると思う。君さえよければ、だけど」
少女――その少女は、じっと俺の目を見つめた後、小さく、しかしはっきりと頷いた。
「……お願いします。私の命、あなたに預けます」
その言葉に、俺は覚悟を決めた。
俺はルナの隣に座り、彼女の体にそっと手を触れる。そして、【分解】の力を最大限に集中させた。
脳内に流れ込んでくる、彼女の体内の魔力回路の設計図。生命維持のために流れる清らかな魔力の奔流に、どす黒い呪いの魔力がヘドロのように絡みついている。それはまるで、精密な機械に砂が入り込んだような状態だった。
「……すごい。なんて複雑な構造なんだ」
少しでも間違えれば、ルナの魔力回路を傷つけ、最悪の場合は命を奪ってしまう。神経がすり減るような、ミリ単位の精密作業だ。
俺は額に汗を滲ませながら、呪いの構造を一つ一つ解き明かし、その結びつきを慎重に、慎重に【分解】していく。まるで、絡まった糸を一本一本解きほぐすように。
一時間、二時間……。どれくらいの時間が経っただろうか。俺の集中力も限界に近づいていた。
そして、ついに最後の呪いの核を【分解】した瞬間――。
「……っ!」
ルナの体から、まばゆいばかりの黄金色の光がほとばしった。部屋中が神々しい光で満たされ、温かく、清らかな力があふれ出す。
光が収まった時、俺の目の前にいたのは、先ほどまでの衰弱した少女ではなかった。
肌は透き通るような白さを取り戻し、銀色の髪は月の光のように輝いている。そして、そのエメラルドの瞳からは、慈愛に満ちた優しい光が放たれていた。まるで、天から舞い降りた女神のようだった。
「あ……ああ……。力が、戻って……」
ルナは自分の両手を見つめ、信じられないといった様子でつぶやく。そして、ゆっくりと俺の方を向くと、その美しい瞳から大粒の涙をぽろぽろとこぼした。
「ありがとうございます……。私の名前はルナ。エルフの国で『聖女』と呼ばれていました。あなた様は、私の命の恩人です」
彼女はベッドから降りると、俺の前に跪き、深く頭を下げた。
「私のこの命、そしてこの力、すべてはあなた様のために。どうか、このルナを、あなたのそばに置いてください」
「え、えっと……顔を上げて、ルナ」
突然のことに戸惑う俺に、ルナは涙で濡れた顔を上げて、最高の笑顔を見せた。それは、どんな宝石よりも美しい笑顔だった。
「はい、ベルク様」
こうして、俺は聖女ルナという、あまりにも強力で、献身的なパートナーを得ることになった。
しかし、聖女の力が戻ったとなれば、彼女を呪った者や、その力を利用しようとする者たちが黙っていないだろう。俺たちは追っ手を避けるため、この街を離れ、誰も俺たちのことを知らない辺境の地で、新しい生活を始めることを決めた。
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