9 / 18
第7話:過去への訣別、未来への誓い
しおりを挟む
俺たちの目の前に現れたのは、紛れもなくベルクだった。だが、その雰囲気は俺たちが知る気弱な荷物持ちとはまるで違う。背筋は伸び、その瞳には静かな自信が満ちている。隣には、まるで女神のように美しい銀髪のエルフが、親密そうに寄り添っていた。
「……ベルク、なのか?」
ガイが、絞り出すような声で尋ねる。
ベルクは俺たちを一瞥すると、少しだけ驚いたような顔をしたが、すぐに落ち着き払った表情に戻った。
「……ああ、勇者様御一行。お久しぶりです。そんなところで、何かご用ですか?」
その落ち着き払った態度が、俺たちの神経を逆なでした。
「な、なぜお前がこんな所に! こんな豪邸に住んで……!」
リナが金切り声を上げる。
ガイは、はっと我に返ると、慌ててその場に駆け寄った。そして、信じられないことに、プライドの高いこの俺が、地面に膝をついたのだ。
「ベ、ベルク! すまなかった! あの時は、俺たちが間違っていたんだ!」
土下座。人生で初めての経験だった。だが、今はそんなプライドなどどうでもよかった。こいつの力さえあれば、俺たちは返り咲ける。
「お前の力が必要なんだ! 頼む、俺たちのパーティーに戻ってきてくれ! これまでのことは水に流す! 待遇も最高のものを用意する!」
ゴードンもリナも、慌てて俺の隣で頭を下げる。
「そうよ! 私、あなたのこと、見直したわ! 戻ってきてちょうだい!」
「頼む、ベルク! 俺たちを助けてくれ!」
必死の懇願。みっともないとわかっていた。だが、これしか道はなかった。
しかし、ベルクの反応は、俺たちの期待とはまったく違うものだった。
彼は、隣に立つ銀髪のエルフ――ルナの手を、優しく握りしめた。そして、俺たちを静かな、しかし氷のように冷たい目で見下ろして言った。
「断る」
たった三文字。だが、そこには一切の揺らぎも、迷いもなかった。
「俺にはもう、守るべき大切な人がいる。この町での穏やかな暮らしがある。君たちと関わるつもりは、もうないんだ」
ベルクは、かつて俺たちが彼に向けたのと同じ、見下すような視線を俺たちに向けた。
「それに……」
彼は、一拍置いて、決定的な言葉を告げた。
「もう遅いんだよ」
その言葉が、俺たちの最後の望みを打ち砕いた。
「なっ……ふざけないでよ! 誰のおかげでここまで来れたと思ってるの!? この恩知らず!」
逆上したリナが、ベルクに向けて炎の魔法を放った。
しかし、その魔法がベルクに届くことはなかった。彼を守るように前に立ったルナが、軽く手をかざす。すると、神々しい光の壁が現れ、リナの炎をいともたやすく弾き返したのだ。
「ベルク様を、傷つけることは許しません」
聖女の威厳に満ちた声に、俺たちは気圧される。
さらに、ベルクの屋敷の門から、ゴツゴツとした岩石のゴーレムが二体現れ、俺たちを取り囲んだ。その圧倒的な威圧感に、俺たちは腰を抜かしてしまった。
「悪いが、もう帰ってくれ。二度と、俺たちの前に現れないでほしい」
ベルクは冷たく言い放つと、ルナと共に屋敷の中へ消えていった。残された俺たちは、ゴーレムに文字通り叩きのめされ、町から追い出された。
地面に転がり、遠ざかっていくアークライトの町並みを眺めながら、俺は呆然とつぶやくことしかできなかった。
「……なぜだ。なぜ、こうなった……」
過去を完全に清算したベルク。しかし、彼が手に入れた力と名声は、平穏な生活だけでは終わらない、新たな脅威を引き寄せようとしていた。
「……ベルク、なのか?」
ガイが、絞り出すような声で尋ねる。
ベルクは俺たちを一瞥すると、少しだけ驚いたような顔をしたが、すぐに落ち着き払った表情に戻った。
「……ああ、勇者様御一行。お久しぶりです。そんなところで、何かご用ですか?」
その落ち着き払った態度が、俺たちの神経を逆なでした。
「な、なぜお前がこんな所に! こんな豪邸に住んで……!」
リナが金切り声を上げる。
ガイは、はっと我に返ると、慌ててその場に駆け寄った。そして、信じられないことに、プライドの高いこの俺が、地面に膝をついたのだ。
「ベ、ベルク! すまなかった! あの時は、俺たちが間違っていたんだ!」
土下座。人生で初めての経験だった。だが、今はそんなプライドなどどうでもよかった。こいつの力さえあれば、俺たちは返り咲ける。
「お前の力が必要なんだ! 頼む、俺たちのパーティーに戻ってきてくれ! これまでのことは水に流す! 待遇も最高のものを用意する!」
ゴードンもリナも、慌てて俺の隣で頭を下げる。
「そうよ! 私、あなたのこと、見直したわ! 戻ってきてちょうだい!」
「頼む、ベルク! 俺たちを助けてくれ!」
必死の懇願。みっともないとわかっていた。だが、これしか道はなかった。
しかし、ベルクの反応は、俺たちの期待とはまったく違うものだった。
彼は、隣に立つ銀髪のエルフ――ルナの手を、優しく握りしめた。そして、俺たちを静かな、しかし氷のように冷たい目で見下ろして言った。
「断る」
たった三文字。だが、そこには一切の揺らぎも、迷いもなかった。
「俺にはもう、守るべき大切な人がいる。この町での穏やかな暮らしがある。君たちと関わるつもりは、もうないんだ」
ベルクは、かつて俺たちが彼に向けたのと同じ、見下すような視線を俺たちに向けた。
「それに……」
彼は、一拍置いて、決定的な言葉を告げた。
「もう遅いんだよ」
その言葉が、俺たちの最後の望みを打ち砕いた。
「なっ……ふざけないでよ! 誰のおかげでここまで来れたと思ってるの!? この恩知らず!」
逆上したリナが、ベルクに向けて炎の魔法を放った。
しかし、その魔法がベルクに届くことはなかった。彼を守るように前に立ったルナが、軽く手をかざす。すると、神々しい光の壁が現れ、リナの炎をいともたやすく弾き返したのだ。
「ベルク様を、傷つけることは許しません」
聖女の威厳に満ちた声に、俺たちは気圧される。
さらに、ベルクの屋敷の門から、ゴツゴツとした岩石のゴーレムが二体現れ、俺たちを取り囲んだ。その圧倒的な威圧感に、俺たちは腰を抜かしてしまった。
「悪いが、もう帰ってくれ。二度と、俺たちの前に現れないでほしい」
ベルクは冷たく言い放つと、ルナと共に屋敷の中へ消えていった。残された俺たちは、ゴーレムに文字通り叩きのめされ、町から追い出された。
地面に転がり、遠ざかっていくアークライトの町並みを眺めながら、俺は呆然とつぶやくことしかできなかった。
「……なぜだ。なぜ、こうなった……」
過去を完全に清算したベルク。しかし、彼が手に入れた力と名声は、平穏な生活だけでは終わらない、新たな脅威を引き寄せようとしていた。
45
あなたにおすすめの小説
追放された公爵令息、神竜と共に辺境スローライフを満喫する〜無敵領主のまったり改革記〜
たまごころ
ファンタジー
無実の罪で辺境に追放された公爵令息アレン。
だが、その地では神竜アルディネアが眠っていた。
契約によって最強の力を得た彼は、戦いよりも「穏やかな暮らし」を選ぶ。
農地改革、温泉開発、魔導具づくり──次々と繁栄する辺境領。
そして、かつて彼を貶めた貴族たちが、その繁栄にひれ伏す時が来る。
戦わずとも勝つ、まったりざまぁ無双ファンタジー!
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。
突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。
銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。
聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。
大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
婚約破棄された「無能」聖女、拾った子犬が伝説の神獣だったので、辺境で極上もふもふライフを満喫します。~捨てた国が滅びそう?知りません~
ソラ
ファンタジー
「エリアナ、貴様との婚約を破棄し、この国から追放する!」
聖女としての魔力を使い果たし、無能と蔑まれた公爵令嬢エリアナ。
妹に婚約者を奪われ、身一つで北の最果て、凍てつく「死の森」へと捨てられる。
寒さに震え死を覚悟した彼女が出会ったのは、雪に埋もれていた一匹の小さなしっぽ。
「……ひとりぼっちなの? 大丈夫、私が温めてあげるわ」
最後の手向けに、残されたわずかな浄化の力を注いだエリアナ。
だが、その子犬の正体は――数千年の眠りから目覚めた、世界を滅ぼす伝説の神獣『フェンリル』だった!
ヒロインの淹れるお茶に癒やされ、ヒロインのブラッシングにうっとり。
最強の神獣は、彼女を守るためだけに辺境を「極上の聖域」へと作り替えていく。
一方、本物の聖女(結界維持役)を失った王国では、災厄が次々と降り注ぎ、崩壊の危機を迎えていた。
今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくる王子たち。
けれど、エリアナの膝の上には、甘えん坊の神獣様(執着心MAX)が陣取っていて――。
「聖女の仕事? いえ、今は神獣様とのお昼寝の方が忙しいので」
無自覚チートな聖女と、彼女にだけはデレデレな神獣様による、逆転溺愛スローライフが幕を開ける!
異世界ショコラティエの甘い革命~チョコレートが存在しない世界でカカオを育ててバレンタインを流行らせます~
黒崎隼人
ファンタジー
【2月14日はバレンタイデー!】
現代日本でパティシエを目指していた記憶を持つ少年ルカは、貧しい農村の三男坊として異世界に転生した。しかし、そこは「チョコレート」が存在しない世界だった!
砂糖はある、ミルクもある。けれど、あの芳醇で甘美な黒い宝石だけがない。
「ないのなら、作るしかない」
ルカは森の奥で嫌われ者の「オニノミ」がカカオの原種であることを見抜き、独自に栽培を開始する。発酵、乾燥、焙煎――前世の知識と魔法を駆使して、ついに完成した「ショコラ」。その味は、粗悪な菓子しか知らなかった異世界の人々に衝撃を与え、やがて頑固な父、商魂たくましい商人、そして厳格な領主や宗教家までも巻き込んでいく。
これは、甘いお菓子で世界を変える、少年のサクセスストーリー。
私の妹は確かに聖女ですけど、私は女神本人ですわよ?
みおな
ファンタジー
私の妹は、聖女と呼ばれている。
妖精たちから魔法を授けられた者たちと違い、女神から魔法を授けられた者、それが聖女だ。
聖女は一世代にひとりしか現れない。
だから、私の婚約者である第二王子は声高らかに宣言する。
「ここに、ユースティティアとの婚約を破棄し、聖女フロラリアとの婚約を宣言する!」
あらあら。私はかまいませんけど、私が何者かご存知なのかしら?
それに妹フロラリアはシスコンですわよ?
この国、滅びないとよろしいわね?
本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?
今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。
バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。
追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。
シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる