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第2話 顔合わせ
しおりを挟む上司から無理難題の仕事を押し付けられた翌日。
私は一宮悠月のマネージャーに会うため都内のカフェテリアを訪れていた。
「…あ、もしかして九条さんですか?」
「はい」
「初めまして。悠月のマネージャーの武内 海と申します」
そう声をかけてきたのは体躯の良い朗らかな男性だった。
「初めまして、九条玖音です。この度はお時間を頂きありがとうございます」
「いえいえ、悠月には多少強引にでもインタビューを受けさせたいと常々思っているんですが…最近はどこも諦めちゃいまして」
むしろ有り難いです、とはにかむ姿に緊張がほぐれる。
「やはりインタビュー嫌いというのは…」
「本当の事です。この先のことを考えるとインタビューの一つや二つくらい軽くこなして欲しいんですけどね」
「マネージャーさんも大変ですね」
「あはは。他力本願なのが悲しいですが、俺が何を言っても聞かないのは百も承知しています。九条さん、貴女だけが頼りです」
そう力説する武内さんに、悠久の王子様はよほどの意地っ張りだとみた。
「私なんかが役に立つかはわかりませんが…」
(でも、自分の首もかかっているし)
「精一杯やらせて頂きます」
「ありがとうございます!」
武内さんは朗らか笑みを浮かべ、そして腕時計を確認する。
「そろそろ来ると思うんですけど…」
「マネージャー」
そう言うと同時に背後から柔らかな声がかかった。
都内でも有名な私立高校の制服、マスクで顔を隠しているものの一目で一宮悠月だと理解した。
「悠月!ここに来るまで大丈夫だったか?」
「はい」
「そうか。あぁ、こちらはフルール出版の九条玖音さんだ」
武内さんが悠月を隣に座らせて紹介してくれる。
「初めまして…」
「出版社?」
私の挨拶は彼の鋭い視線で途切れてしまった。
予想以上の冷たい瞳に困惑してしまう。
(そ、そんなに取材が嫌なのかな?それとも記者が嫌、とか?)
内心どうしよう、と焦りながらも表面上はなるべく笑みを絶やさないように努力する。
「地味なお姉さんは記者なんだ。でも、俺絶対にインタビューは受けないって言ってるよね」
「おい悠月!」
そのまま二人でああだこうだと言い合いを始めてしまった。
そんな二人を見守ることしか出来ない私はというと、一宮悠月の「地味」という台詞に地味に傷ついていた。
(いや、まぁその言葉通りだから仕方ないんだけど…むしろわざとだけど…)
それでもやはり少しヘコむ。
玖音はいわゆる童顔で、それをカモフラージュするために長い黒髪を三つ編みおさげにし、さらに伊達眼鏡をかけていた。
ちなみに服も黒のスーツとおとなしく、オシャレさの欠片もない。
そうすれば側からは地味な人、という認識で済むと分かったからだ。
165センチと女性にしては少し高めの身長のお陰で、素顔の時は「高校生?」と間違えられるのだが…もし低ければ中学生や下手をすれば小学生と間違われただろう。
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