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第4話 殴りたい♡
しおりを挟む「ああ、あの地味記者じゃねーか。本当に来るとか…どんだけ仕事が欲しいんだよ」
呆然と佇んでいれば私に気づいた一宮悠月が人を馬鹿にした顔で吐き捨てた。
「いやだ、ホントに地味な人。場違いなの分かってないの?」
「ふふふっ」
それに同意する周りの女性たち。
いや、馬鹿にされるのは大変結構なんだけど、地味なのは事実だし…それよりこの状況は何!?
「…何があったの?」
悠月を無視し、玖音は眼鏡くんに問いかけた。
私の態度にあからさまにイラつき、悠月の視線が鋭くなったのに気づいてはいたがそんなのには構っていられない。
「貴女は?」
「私はフルール社の九条玖音です。一宮くんに独占インタビューの交渉をしに来たんですけど…」
そう言えば全て理解したらしい。
あぁ、と納得した後、憐れむような瞳で大変ですねと言われた。
「僕は霧島 春人。悠月の幼馴染でストッパー役ってところです。この子はーー落ち着くまでそっとしておいた方がいいと思います」
未だ泣き止まぬ少女はとりあえず霧島くんに任せるとして、私は本来の目的である一宮悠月へと視線を向ける。
「それで、家に来たら考えてくれるって話だった筈ですけど?」
「馬鹿じゃねーか?俺がそんな面倒臭いことする訳ないだろ」
この口と態度の悪さはまぁ良しとしよう。
人間誰しも裏表があるものだ。
テレビ業界の者なら尚更使い分けているだろう。
むしろテレビに映っている通りの人間なんてほとんどいないし、多面性があるのは理解している。
それでもこれは豹変しすぎではないだろうか?
悠久の王子様なんて大層なあだ名を持つ男も蓋を開ければ、生意気な女の敵と成り下がるとか…独占インタビューよりむしろこの事実の方が余程記事になるのではないか。
そう思えてならなかった。
「…どう足掻いてもお話を受ける気はないってことですね?」
正直、一刻も早く立ち去りたい気持ちで一杯だ。
このままここにいたら確実に彼を殴り飛ばしたくなる、いや殴り飛ばす未来が見えた。
(こんなにイラつくのは久しぶりかもしれない…)
大人気俳優だろうが大物の息子だろうが関係なく、人を見下す人間が私は嫌いだった。
本音を言えばいくら仕事でも関わりたくないタイプだ。
「そうだな…俺様にインタビューを答えて欲しければ這いつくばってみろよ。そしたら考えてやらなくもない」
「いやだ悠月ったら寛大」
ふふん、と偉そうな態度にそれを肯定する周りの女。
「悠月、九条さんに失礼だろ!何度その態度を改めろって言ったら分かる」
唯一の良心でありまともな思考の持ち主は霧島くんである。
彼がいるだけでだいぶ救われた。
主に精神面で。
(ヤバイ…猛烈に張っ倒したい!そんなことをしたら終わりだって分かってるけど…)
私が己の理性と葛藤しているとはいざ知らず、悠月は冷たく言い放つ。
「そこの女みたいに身の程を弁えていない奴はこれだから困る。むしろこの俺の家に入れたことだけでも有難いと思え」
そこの女、という単語に座り込んでいた少女がビクリと反応する。
(さっきから聞いていれば何なのこいつ?これが本当にあの一宮悠月なの?)
だんだんと怒りのボルテージが上がっていく。
「…この子がどうしたの?」
「その女が俺のファンだって言うからこうして招待してやったんだ。そして特別に素顔を見せてやったらこの有り様だ。大して可愛くもないくせに、高望みしなければ夢を見ていられたのにな?」
高笑いをする下衆に、私はとうとう限界に達した。
咎めようとする霧島くんを遮り、ゆっくりと彼らに近づく。
そしてテーブルに置いてあったグラスを掴み遠慮なくその中身を彼にぶちまけた。
「お黙りなさい。あんたなんかに彼女のようなファンは勿体無いわ。せいぜい自分を持ち上げてくれる性格ブスな女と戯れることね」
内心やっちまったと思いながらももう止めることは出来なかった。
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