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Ⅱ.未編集
第48夜
しおりを挟む最終的に、爽が提案した手軽に作れるゼリーに、秋斗が提案したバリエーションが豊富なクッキー、旭と隼人が提案した数量限定のシフォンケーキと、彗が軽食として提案したサンドイッチに決まった。
「さっそく色々と作って試してみたいよね!ゼリーとかクッキーは入れるものによって味が変わるし…」
秋斗の声にみんな同意する。
「だったら、うちで試作しない?親もいないし、気兼ねなくキッチンも使えるよ」
「え?爽くんの家で?ぜひ!!」
爽が提案すると、食い入りぎみに旭とその他のメンバーは乗った。
「何気にスイちゃんのお家に行くの初めてだね」
秋斗も心なしか嬉しそうで、俺の意思とは関係なしに話は進んで行くのだった。
ちなみに、料理班の話しを側で聞いていたクラスメイトたち、特に爽のファンクラブに属している面々の絶叫は見ものであった。
「じゃあ、帰りに近くのお店に寄って材料を揃えてから僕たちの家に行こうか」
ーーと、意気込んで放課後、総勢8人で買い物に赴いたのだが…一言で言うと大変だった。
この中でお菓子作りをした事がある者は彗と秋斗と隼人だけで、他は全くの素人。
好き勝手に商品を選び、プロテインやら関係のないお菓子やら、爽に至っては何に使うつもりなのか鯖の缶詰などを手にしていた。
必要な材料を集めるのすら難航している様を見て、彗はため息を吐く。
(こんなんでちゃんとした料理が作れるのか?)
秋斗と隼人は律儀にツッコミを入れながら、あれが足りないこれが足りないと指示していた。
「彗!これとか入れてみたらどうかな?」
爽がお菓子を買って欲しい子供の様な顔でこちらに差し出したのは…
「お前、タラコを何に入れる気だよ!?」
「え?サンドイッチな挟んだら美味しそうじゃない??それにタバスコとツナとレタスを入れれば完璧!」
「んな訳あるかっ!!また死人が出るわ。もう、お前は黙って俺が言う物を取ってこい」
秋斗たちは双子の遣り取りに面をくらい、けれど次の瞬間には笑いに包まれたのだった。
ようやく家にたどり着き、すぐさま試作に取り掛かる。
二手に分け、俺と爽、旭に隼人で今回はクッキーを担当することになった。
「まずは何をするの?」
「とりあえず量ってから、ボールにバターを入れて泡立て器で練り混ぜるのが先だな。爽、お前は材料に触れるな」
「ええ!?それじゃあ何にも手伝えないよ??」
不満顔で見つめてくるが俺の意見は変わらない。
「お前の場合は手伝わない事が最大の手伝いだ」
「酷いな。じゃあ、僕は後でドリンクを用意するね」
苦笑しながらも、己の腕前は理解している爽は素直に引き下がった。
その間も彗は手際よく材料を混ぜ合わせていく。
「彗くんて本当に料理が得意なんだね!」
「俺より小慣れているっぽいな」
旭と隼人は感心して、改めて彗を見直した。
「こいつが甘いもの好きだから、たまに作るだけだ。大した腕じゃない」
爽を指差してぶっきらぼうに応えるが、「それでも凄い」と返される。
ここ数時間で彗の素っ気ない態度にも慣れた様で、特に怖がる素振りも見せなくなった。
「あ、卵とか取ってくるね」
「頼む」
彗たちは食卓台の上で作業しており、キッチンでは秋斗たちがゼリー作りに勤しんでいる。
そこへ旭が必要な物を取りに行くと、ちょうどお湯を持ったままふざけた蓮とぶつかってしまった。
「あつっ……っ」
「すまん!大丈夫か!?」
「…どうした?」
オロオロする蓮に声をかけると、運悪くその湯が旭の手にかかってしまったようだ。
「蓮は溢れた物を拭いて、それからもう料理中にふざけるなよ?旭、手を見せてみろ」
「う、うん」
状況を理解した俺は蓮に釘を刺し、それから旭の左手をすぐに冷やした。
幸い火傷までは至ってないようで、しばらく冷やせば大丈夫そうだ。
「痛むか?」
「少し…。彗くん、ありがとう」
彼の手当てを終えると、はにかみながらお礼を言われた。
「大事なくてよかった」
ほっと息を吐けば、周りに集まっていた皆んなから不思議な声が漏れたのだが…俺は首をかしげるだけで意味は分からなかった。
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