20 / 66
第1部 双子の恋愛感情
第18夜 蓮side
しおりを挟むおかしい。さっきから彗の姿が見えないのだ。今は体育の時間。
彗がもっとも好きな授業で、不良と言われていようが体育だけは真面目に受けていた。
そんな彗の姿が、授業が始まってそろそろ後半戦というのに見えない。
どうかしたのだろうか?
俺の不安を見透かしたように秋斗は、苦笑しながら俺の肩を叩いた。
「スイちゃんなら大丈夫だよ。爽くんと大事な話があるって言っていたから予定より時間がかかっているだけかも」
「それにしたって、爽が授業サボるのも珍しいし話しなら家でも出来るだろ」
最近の彗に対する爽の態度も気になる。
彗は気にするなと言っていたが、爽の爆弾発言以来、俺や秋斗との行動時間はめっきり減っていた。
その事についてはまだ良い。兄弟で仲がいいのは好ましいことだ。しかし、それにも限度があるだろう。
(彗が素直に従っているのも気になるしな)
あの爽の事だ。
何か裏があるのではないかと、幼い頃から二人を見ていた俺としては疑ってしまう。
「レンちゃん?」
「わりぃ、秋斗。俺やっぱ気になるから、早めに戻るわ」
授業終了まで残り十分。これくらいならサボっても問題はないだろう。
「まったく、しょうがないな。先生には上手く言っておくよ」
困ったように笑いながらも秋斗は許可を出し、蓮は「サンキュ」とその場を離れた。
急ぎ足で教室に向かい、中を確認せずにそのドアを開ける。
すると、酷く驚いた様子で中に居た人物がこちらを振り返った。
「……なんだ、蓮か」
「彗が体育をサボるなんて珍しいと思って様子を見にきたんだよ。と言うか爽は?」
確か秋斗の話では彗と爽は一緒のはずだ。
俺が首を傾げると、彗はあからさまに顔をしかめ「知らねぇ」と応えた。
(……これは何かあったな)
即座に察知し、制服へと着替える彗の姿を眺める。すると「あれ?」と疑問が湧いてくる。
丁度、彗がその上半身を露わにしており、その肌に目立つアトがあったのだ。先ほど着替える時には無かった。
真っ赤な痕はそこらかしこに散っており、こんなに目立つなら直ぐに気づく。
(……爽とナニかあったのか…?)
考えたくは無かったが、その可能性が一番高い。
「彗。お前、爽とナニしてたんだ?」
俺の何気ない爆弾発言に彗は一瞬、動揺をあらわにした。が、「何言ってんだ」と否定をしてみせる。
あいにく、俺はその手の事には勘がいい。
彗が嘘を吐いているのくらいは直ぐに解ったーーついでに彗の相手が爽だという事も。
「ふーん」
意味ありげに鼻をならせば、彼は居心地悪そうに「何だよ」と叫ぶ。
その可愛くない反応に俺は少し困らせてやろうと悪戯心が芽生えた。
「ねぇ、彗」
「だから何だ」
俺の煮え切らない態度が気に入らないのか、脱いだ体操着を丁寧に畳みながら視線を寄越す。
「ココにあるアトはなーんだ?」
「は?」
「だから、ココだよ」
そう言って制服から覗く首筋を指差した。
ボタンを上まで閉めなければ隠れない、際どい所に例の痕ーーキスマークが一つ。
スマホの鏡機能でソレを確認した彗は面白いほどに顔を赤く染め、一人で恥ずかしがったかと思えば次は怒りを見せた。
「こ、これはアレだ、その…虫刺され!だから気にするなっ」
説得力無いよ、と言いかけたが、さすがに可哀想になって「そっか」と納得したフリをする。
恋愛に奥手な彗。俺がおふざけで首にキスした時も本気で怒っていた。その彗に大量のキスマーク。
今すぐに問い質したい気持ちに駆られたがそこは遠慮する。俺は大人だからな、と自分に言い聞かせて。
「それで、次の授業には出るのか?」
「いや……ダルいからサボるわ」
彗はため息を吐き、腰をさする。
その姿がやけに色っぽく見えて焦った。
(……さっきから俺はナニを考えているんだ?我ながら思考回路がアヤしいだろ)
即座に反省してはその想いを打ち消すように彗に近づき、いつものように気軽に肩を抱く。
「俺も付き合うぜ」
「いや、一人で……ンっ」
瞬間、彗の口から信じられないほど艶っぽい声が漏れた。
慌てて、口を押さえ「びっくりするだろ!いきなり近づくなっ」と俺に当たる。
しかし、それよりも彗の声が気になって仕方が無かった。
(ヤベェ…うっかり勃ちそうだった)
下品な考えをこのピュアな幼なじみに知られる訳にはいかない。理性をフルに活動させる。
「彗ったら、エッチな声出しちゃってレンちゃん恥ずかしい」
わざとらしくおちゃらけてみせれば、少しホッとした様子で眉を吊り上げる。
「うるせぇ。今のは幻聴だ、忘れろ」
「えぇー、可愛いのに」
「殴られたいか?」
絶対零度の視線を向けられれば素直に謝るしかない。
「とりあえず、俺はサボるから。付いて来んじゃねぇぞ」
彗は俺に釘を刺すと教室を出て行ってしまった。残された俺は独り悶々とする。
(今日の俺、確実にオカシイ)
ここにも嵐の予感である。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる