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第1部 双子の恋愛感情
第35夜
しおりを挟む「……ウソだろ」
目が覚めるとすでに日は傾きかけており、昨日に引き続き無駄に寝て過ごしたことになる。
この二日で実に丸一日分もの時間を眠っている計算だ。
(逆に身体はダルいし、頭も痛いしで最悪だな)
けれど幸いと言ってもいいのか、今回は爽にイタズラをされた形跡はない。ただ眠らされただけのようだった。
何がしたかったんだと疑問に思いつつ、放り出していたスマホを手に取った。
すると秋斗と蓮からメッセージが届いていた。胸騒ぎはするが仕方なく蓮のものから開いてみる。
『ご愁傷様www』
(……何が!?)
急いで秋斗のものも開く。
『ーーだから昨日教えたのに!もう僕は知らないからね。今回はスイちゃんの自業自得だよ。とにかく一緒に頑張ろう』
前半は安定の小言。
後半はまぁ何となく俺に不利な事になったと伝わる文で締められていた。
が、結局なにがあったのかというのは記されていなく、爽を捕まえるしかなさそうだ。
「ただいま」
そんな事を考えていると悪の根源が帰ってきた。
「爽!」
玄関まで走っていくと、彼は嬉しそうに「お出迎え?」と笑った。
「お前、学校で何をした!?」
単刀直入に問うと、分かっているとばかりに俺を静止させた。
「ちゃんと教えるから慌てないで」
諭すような爽の口調にイラっとくるものの、何とか気持ちを落ち着かせて「で?」と促す。
「話は向こうでしようか」
爽はリビングに向かうとソファに腰を下ろし、それから鞄からとある紙を取り出してそれを彗へと渡す。
黙って受け取りそれに目を通すと、そこには「2-1文化祭の出し物について」と書かれていた。
「これがどうした?」
「もう、ちゃんと読んでよ」
仕方なくザッと全てに目を通す。
「……ドキッ、男だらけの執事喫茶メイドもいるよ!in2-1って何だこりゃ」
読むのも恥ずかしい内容に思わず顔をしかめてしまう。そもそも男子校なのだから「男だらけ」なんて当たり前だ。
(けどメイドってことは女装する奴もいるって事か?)
やべぇ。
今ちょっと最悪の未来を想像してしまった。
(ま、まさかな……)
それを振り払い、役割分担の項目を確認する。執事八人、メイド四人、会計四人などと細かく記されていたが、俺には関係なかった。
その次に書かれていた「メイドーー秋斗・ 悠司・玲・彗」の文字に全ての思考を奪われたからだ。
「……はっ?」
いやいや、落ち着け!
これは何かの間違いだ!!
一旦プリントから視線を外し、再び穴があくほどそれを睨みつける。
けれど残念ながら書いてある内容に変化はなかった。
「っ…お前の仕業か!」
こんな嫌がらせじみた事をするとしたら、爽か蓮くらいのものだろう。
こんなデカイ男に女装させても誰の特にもならいし、そもそもこんな事を提案する命知らずもいないはずだ。
(女装ならぜってぇそのの方が似合うだろって違う!問題はそこじゃねぇ!!)
あまりの衝撃にテンパってしまう。
けれど、元凶である爽は涼しい顔で「そうだよ」と答えるだけだった。
「………っ」
怒りと困惑で上手く言葉を紡げない。
「彗、分かっていると思うけど君に選択権はないよ。逃げるのは絶対許さないから」
「どうしてここまで…っ」
「決まってるでしょ。彗の可愛い姿が見たいからだよ。その為なら僕は何でもする」
後半はボソリと呟かれたのだが、目がマジ過ぎて俺は言葉を失った。
しかしどんな事があろうとも人前で女装することは、間違いなく俺の中で黒歴史になるだろう。
(そんな恥をさらすくらいならいっそ)
「逃げよう、とか考えてないよね?」
まさに心中を当てられ、冷や汗が流れた。
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