商人の男と貴族の女~婚約破棄から始まる成り上がり~

葉月奈津・男

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【ロチェス編】

第2話 辺境伯のお仕事 ②

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『内政』。

『行速』道路が、ついに完工した。
 元帝国領の『リューイン州』まで延伸したうえで、だ。

 同時に、レッドルア、モンモラシー、ミヌミエーラの『領道』建設が始まっている。
 各領地の町同士を繋ぐものだ。

 これは当然、グリトリアン子爵領も含まれる。
 対帝国戦略拠点であることを求められる辺境伯傘下の領地であるからには、必要なことだ。
 一朝事あるときは兵や物資を遅滞なく前線へ運べなくてはならないのだから。

 他の領地についても、順次広げていくことになる。
『行速』道路建設に参加した者たちをまた集めればいいので、人手は十分確保できると思えた。

 問題になるのは資金だろうか?
 資金――予算——の捻出がカギとなる。

       ◇

『資金』。
 それは潤沢だった。
 いくつかの理由で、資金回収が捗っているのだ。

 疲弊していたリューイン州が回復を果たしている。
 被害は甚大だったがオオキビによって食糧難を防ぎ、これが発展の起爆剤となったのだ。

 リューイン州は穀倉地帯だ。
 帝国南部はおろか、北部にまで小麦を供給していたほどの。
 大陸北部に位置する帝国は寒冷地が多いため、帝国全土の食糧難対策で侵略した経緯を持つ地だったりする。

 そんなわけで、帝国では小麦不足が深刻化しようとしていた。
 これを好機と捉えない者が商人を名乗れるはずがない。

 なので、カロスタークは王家の許可を得て、小麦を帝国へと売っている。。
 食糧難を理由に、帝国が再度兵を起こす可能性があったからだ。

 オオキビを混ぜて嵩増しした小麦を『純小麦の適性価格』で帝国へと売ることで、食糧難を阻止。
 ガンガン売りつけることで帝国政府の資金も引っ張る。
 これにより、再侵攻を阻止しようというわけだ。

 このおかげで、リューイン州は経済的に潤っている。
 オオキビを混ぜて嵩増ししているものを、純粋な小麦として売っているのだ。

 値段は通常値。
 国境を越えているにしては良心的な価格だが、5割がオオキビなので大儲けである。

 帝国政府が一括で買い上げた後、領内へ分配する方式だ。
 嵩増ししたモノであることは帝国へは伝えていない。
 粉にしてから送り出しているので、気付かれることはないだろう。

 このためのベースとなる小麦についてだが——。
 宰相がグリトリアン子爵に供出させた金が役に立った。
 王国中から小麦を買い取っている。
 当然だが、無理はさせずだから不満は上がっていない。

 これをオオキビで半々に割って売りつけているのだ。
 ハッキリ言ってウハウハだった。
 グリトリアン子爵に供出金を返還して、開拓事業を進めさせても資金が丸々残るほどに。

「クッククク。あはははは! ひっ、ひぃっひひひひひひっ! あばばばばっ、っかは!」
 実際に取引を担っているラヴァル——レッドルア商会会頭夫人――の笑いも止まらなくなろうというものだろう。

 笑い過ぎて、死に掛けたのは笑えない事実である。
 エルザによる回復魔法の患者第二号だ。

 そんなわけで、辺境伯になったばかりではあるが、レッドルア家は既に『準侯爵』と目されていた。

         ◇
『軍事』。

 第三軍とシャリィアはリューイン州に残っている。
 帝国への牽制として常駐するらしい。

 ただし、兵数は三万から二万五千に減っている。
 王都に家があり家族がいる者たちは王都へ戻ったからだ。

 その代わり、と言うことはないのだろうが第四軍から三千が第三軍に吸収され二万八千となっている。
 理由はしごく単純で、兵たちの大部分は家無し家族なしの単身者が多いからだ。
 王都に戻っても物価が高くてねぐらと食費で給金が消える。
 それなら、この辺境で暮らす方がいいと考えたのだ。
 そう唆したものがいるとの噂もあるが、それはもちろん噂である。

 王国としては帝国との最前線。
 兵が多いに越したことはないので、リューイン州へ留まるか否かの意向調査を実施した。
 結果、三千名が王都への帰還ではなく、リューイン州駐留を望んだというわけ。

 ここにセザール騎士団と、預かりとなったネルケ率いる元帝国第五皇女ヒルデガルド親衛隊2100余りや、マーガレット率いる帝国兵站部隊と本隊からの離反兵も加わり総数は三万五千ほどとなっている。
 この中には、重傷を負ったことで帝国への帰還の途に就いた際に置き捨てられた女司令官他の兵も含まれていた。

 死んだと思われているので、このままこちら側に就くとの確約を貰っている。
 今更帰っても、トラブルしか起こさないだろうことはわかり切っているのだ。
 帰りたいという気持ちはないらしい。

 ミヌミエーラ男爵率いる各領地の貴族軍は既に、本来の任地へと帰っている。
 この三万五千だが、戦地にいないときはサボる——なんてことは許されなかった。
 本人は領地へ帰ったものの、ミヌミエーラ男爵の熱心な信奉者が残って師範を買って出てくれたからだ。
 毎日訓練漬けの日々が始まっていた。

『外交』。

 帝国軍を退け、逆侵攻までなした。
 勢いのある『準侯爵』。
 多方面からの来客が、カロスタークの下を訪ねるようになっていた。

「『フィオーレ・ノルドアゴロ』様がおいでになられました」
 平静を旨とする執事が、声を震わせて来客を告げてくる。

「北王国の姫君が?!」
 カロスタークは、驚きで声を上ずらせた。

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