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【フィオーレ編】
第3話 亡国の姫2 ③
しおりを挟む「あなたはいったい何をしているのか!」
開口一番。
騎士団長の娘アウラに、フィオーレは罵声を叩きつけられた。
「なっ——」
機先を制されたのだ。
フィオーレは失態に青褪め、次には怒りで赤くなった。
過激派のコントロールができていないことに苦言を刺そうとしていたのに、先手を打たれてたじろいでいる。
アウラとは幼い頃からの知り合いだ。
当時、彼女には優秀な兄たちがいて、末の妹は重要視されていなかった。
片田舎に追いやられていたフィオーレたちと似た境遇だったのだ。
王家の正当には兄たちが、フィオーレのところにはアウラが付くのは自然なことだった。
そうでなければ、早々に余所へ養女に出されていただろう。
いらない子として。
おかげで命からがら逃げおおせたのは、皮肉な話だ。
「色仕掛けでも何でもして、辺境伯をこちら側に付けるべき!」
「王族の誇りを捨てろというの?!」
「誇りが何だ! 誇りで祖国を取り戻せる? 兵たちは命を懸けて戦うの! 体を好きにさせるぐらいどうということもないでしょうが!!」
「・・・・・・」
それはそうかもしれないと、フィオーレは思った。
もとより王族の結婚——それも姫の結婚なんて、政略以外の何物でもないのはわかり切ったこと。
「いまさら怖気てんじゃないよ!」
それもその通りだ。
友好国とのつながりを強める、敵国との融和を進める、家臣との結びつきを強める。
何かしらの理由があって嫁ぎ先が決まることは規定だ。
物心ついたときから受け入れている。
その意味で言えば、帝国への最先鋒と目される将軍の下へ嫁いで、士気を上げる事はおかしくない。
「しかも、そうとなれば彼はあなたの代理人。兵たちを統率する大義名分を得られる。北王国兵を糾合して王国兵ともども指揮を執ることが可能だわ」
指揮系統の一本化。
所属の異なる軍隊を並行して動かす場合に必ず問題となることだ。
その心配がいらなくなる。
協力体制の構築が容易だ。
帝国を打ち負かした英雄が、姫の代理人となり、王国と北王国の連合軍を指揮する。
「完璧な態勢をとれるの。なにが不満なの?!」
アウラの言い分はもっともだ。
その体制であれば過激派の抑えも利く。
祖国奪還への道が、広がる。
亡国の姫に望める最善がそこにある。
姫が嫁入りしてよいのかとの懸念も、弟が王位継承権一位で健在なのだから問題ない。
「だ、だけど・・・」
公人としての自分が『合理的だ』と考え始める中、私人としてのフィオーレが二の足を踏む。
政略結婚なのだ。
女の子として思うところがないわけではない。
「そ、そうだわ。王国側が何と言うか・・・」
北王国に対して肩入れすることを意味するものになる。
無条件に祝福するとはならないだろう。
国内随一とも言える有能な家臣を、北王国の影響下へ置くことになるのだから。
「そこはあなたしだいでしょ? レッドルア辺境伯になんとしても欲しいと思わせなさい。全力で誘惑するの!」
姫の方から話を持ち掛ければ抵抗されるかもしれない。
しかし、辺境伯側からの提案なら、無下にはできないだろう。
こうして、フィオーレがカロスタークの下を再び訪れることが確定した。
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